DISGUISE
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夕暮れ時のオンボロ寮のキッチンには香ばしい油の匂いが立ち込めている。
ななしは油が弾ける音を聞きながらメンチカツをひっくり返す。隣ではグリムが身を乗り出して皿を並べている。
「ふなー! 良い匂いなんだゾ! 食堂のメンチカツサンドよりオレ様たちのメンチカツの方が絶対に美味いんだゾ!」
「はいはい、危ないから下がってて。もうできるから」
「待てないんだゾ! 一口、一口だけでいいから――」
グリムがカウンターに手をかけたその時、玄関の重い木製ドアが遠慮なく押し開けられる。廊下を響かせて歩いてくる足音は二足分。
「ちわーす。良い匂いに釣られてやってきたッスよ」
「ったく、わざわざこんなボロ小屋まで足を運ばせやがって」
入ってきたのはサバナクロー寮のラギー・ブッチと、そのすぐ後ろで気怠そうに首を回すレオナ・キングスカラーだった。
「ラギー先輩にレオナ先輩まで。急にどうしたんですか」
ななしは慌てて火を止め、エプロンの上から制服のジャケットの合わせを無意識に正す。
「どうしたも何も、昼の食堂でこいつがメンチカツサンドを買い損ねたんだよ。そしたらラギーが、オンボロ寮で美味いもん作ってるってうるさくてな」
レオナが室内の古びたソファにどさりと腰を下ろす。長い脚を無造作にテーブルへ投げ出し、尖った犬歯を覗かせる。
「ちょっとレオナさん、人聞きが悪いッスね! 昼の食堂でメンチカツサンドの争奪戦に負けたオレに『代わりに美味いもん調達してこい』ってパシリにされたのはオレの方じゃないッスか。だからななしくんのトコに案内したんッスよ。ほら、そこの美味そうなの、オレたちの分もあるッスよね?」
ラギーがシシシと笑いながらキッチンのカウンターへとずいと近寄ってくる。
「あ、はい。ちょうど多めに作っていたので、良ければ食べていってください」
「よっしゃ! さすがななしくん、話がわかるッスね〜」
ラギーが皿を受け取ろうと手を伸ばした瞬間、その動きがピタリと止まり、獣耳が小さく震え、鼻先がヒクツく。
「……?」
「ラギー先輩?」
ななしの背中に冷たい汗が伝う。
ラギーの視線が料理ではなくななしの首元へと向けられている。
「おい、ラギー」
ソファからレオナの低い声が響く。
「何スか、レオナさん」
「お前、いつまでそこでうろちょろしてんだ。油の匂いで鼻がバカになってんなら、その耳を引っ張って外に放り出すぞ」
レオナの鋭い視線がラギーを射抜く。ラギーは一瞬だけきょとんとした後、すぐに肩をすくめて両手を挙げた。
「おっと、そりゃ勘弁ッス。レオナさんの機嫌が悪くなると、後でオレの仕事が増えるだけっスからね。……ななしくん、冷めないうちにその美味そうなの、さっさとテーブルに運んじゃいましょ」
ラギーが気楽な調子で皿を取り、テーブルへと移動する。ななしは喉の奥で詰まっていた息を、ようやく小さく吐き出す。
レオナがゆっくりとソファから立ち上がり、カウンターの前に立つ。大柄な体躯がななしの前に大きな影を落とす。体格差は一目瞭然で、見下ろしてくるその瞳にはすべてを見抜いたような光が宿っていた。
「……お前、色々と危なっかしいな」
レオナがななしの至近距離で低く呟く。
そのプレッシャーに身体がすくむ。
「レオナ先輩……?」
「まぁいい。ラギー、冷める前にさっさとオレの分も持ってこい」
レオナはそれ以上追及することなく再びソファへと戻り、背もたれに深く体重を預けた。
「はいはい、今運ぶッスよ」
ラギーが苦笑いしながら皿を差し出し、レオナがテーブルの上のメンチカツを一つ掴む。
「んー! サクサクで最高ッス! レオナさんのパシリのご褒美に、このメンチカツは最高のごちそうッスよ。これなら毎日でも通いたいッスねぇ」
「ラギーお前、調子に乗ってオレの分まで食うなよ。……おい、ななし。せいぜいボロを出さねぇように気をつけるんだな」
「な、何の話なんだゾ? オレ様にはさっぱりわからないんだゾ!」
グリムが二人のやり取りに首を傾げながら、メンチカツを咥えてもぐもぐと咀嚼している。
「……善処します」
ななしは自分の胸元にそっと手を当て、ラギーを遮ってくれたレオナの真意を測りかねながらも、まだ決定的な秘密は守られたのだと自分に言い聞かせた。
ななしは油が弾ける音を聞きながらメンチカツをひっくり返す。隣ではグリムが身を乗り出して皿を並べている。
「ふなー! 良い匂いなんだゾ! 食堂のメンチカツサンドよりオレ様たちのメンチカツの方が絶対に美味いんだゾ!」
「はいはい、危ないから下がってて。もうできるから」
「待てないんだゾ! 一口、一口だけでいいから――」
グリムがカウンターに手をかけたその時、玄関の重い木製ドアが遠慮なく押し開けられる。廊下を響かせて歩いてくる足音は二足分。
「ちわーす。良い匂いに釣られてやってきたッスよ」
「ったく、わざわざこんなボロ小屋まで足を運ばせやがって」
入ってきたのはサバナクロー寮のラギー・ブッチと、そのすぐ後ろで気怠そうに首を回すレオナ・キングスカラーだった。
「ラギー先輩にレオナ先輩まで。急にどうしたんですか」
ななしは慌てて火を止め、エプロンの上から制服のジャケットの合わせを無意識に正す。
「どうしたも何も、昼の食堂でこいつがメンチカツサンドを買い損ねたんだよ。そしたらラギーが、オンボロ寮で美味いもん作ってるってうるさくてな」
レオナが室内の古びたソファにどさりと腰を下ろす。長い脚を無造作にテーブルへ投げ出し、尖った犬歯を覗かせる。
「ちょっとレオナさん、人聞きが悪いッスね! 昼の食堂でメンチカツサンドの争奪戦に負けたオレに『代わりに美味いもん調達してこい』ってパシリにされたのはオレの方じゃないッスか。だからななしくんのトコに案内したんッスよ。ほら、そこの美味そうなの、オレたちの分もあるッスよね?」
ラギーがシシシと笑いながらキッチンのカウンターへとずいと近寄ってくる。
「あ、はい。ちょうど多めに作っていたので、良ければ食べていってください」
「よっしゃ! さすがななしくん、話がわかるッスね〜」
ラギーが皿を受け取ろうと手を伸ばした瞬間、その動きがピタリと止まり、獣耳が小さく震え、鼻先がヒクツく。
「……?」
「ラギー先輩?」
ななしの背中に冷たい汗が伝う。
ラギーの視線が料理ではなくななしの首元へと向けられている。
「おい、ラギー」
ソファからレオナの低い声が響く。
「何スか、レオナさん」
「お前、いつまでそこでうろちょろしてんだ。油の匂いで鼻がバカになってんなら、その耳を引っ張って外に放り出すぞ」
レオナの鋭い視線がラギーを射抜く。ラギーは一瞬だけきょとんとした後、すぐに肩をすくめて両手を挙げた。
「おっと、そりゃ勘弁ッス。レオナさんの機嫌が悪くなると、後でオレの仕事が増えるだけっスからね。……ななしくん、冷めないうちにその美味そうなの、さっさとテーブルに運んじゃいましょ」
ラギーが気楽な調子で皿を取り、テーブルへと移動する。ななしは喉の奥で詰まっていた息を、ようやく小さく吐き出す。
レオナがゆっくりとソファから立ち上がり、カウンターの前に立つ。大柄な体躯がななしの前に大きな影を落とす。体格差は一目瞭然で、見下ろしてくるその瞳にはすべてを見抜いたような光が宿っていた。
「……お前、色々と危なっかしいな」
レオナがななしの至近距離で低く呟く。
そのプレッシャーに身体がすくむ。
「レオナ先輩……?」
「まぁいい。ラギー、冷める前にさっさとオレの分も持ってこい」
レオナはそれ以上追及することなく再びソファへと戻り、背もたれに深く体重を預けた。
「はいはい、今運ぶッスよ」
ラギーが苦笑いしながら皿を差し出し、レオナがテーブルの上のメンチカツを一つ掴む。
「んー! サクサクで最高ッス! レオナさんのパシリのご褒美に、このメンチカツは最高のごちそうッスよ。これなら毎日でも通いたいッスねぇ」
「ラギーお前、調子に乗ってオレの分まで食うなよ。……おい、ななし。せいぜいボロを出さねぇように気をつけるんだな」
「な、何の話なんだゾ? オレ様にはさっぱりわからないんだゾ!」
グリムが二人のやり取りに首を傾げながら、メンチカツを咥えてもぐもぐと咀嚼している。
「……善処します」
ななしは自分の胸元にそっと手を当て、ラギーを遮ってくれたレオナの真意を測りかねながらも、まだ決定的な秘密は守られたのだと自分に言い聞かせた。
