TRIANGLE
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植物園での引き裂き刑の一歩手前からグリムが放った不意の火吹き攻撃による混乱に乗じて、ななしは必死の思いで現場を脱出した。
息を切らし誰もいない校舎の裏階段に座り込んだななしは、小刻みに震える手で膝を抱えた。
「……あぁ、やってしまった。二人をあの場に放置して逃げるなんて、国家反逆罪どころか宇宙規模の不敬罪……」
「子分の逃げ足だけは一級品なんだゾ……。でも、あんなところにいたらオレ様まで消し炭になっちまう」
グリムが隣でふぅふぅと毛並みを整えているが、ななしの脳内ではすでに公開処刑のシミュレーションが始まっている。すると背後の暗闇から、カツンカツンと規則正しい靴音が響いてきた。
「……ひぇっ! 処刑人が来た! 私を奈落の底へ突き落とすための、死神の足音……!」
「……おい。こんな薄暗ぇところで何してんだ。お前は本当に、ネズミみたいに逃げ回るのが好きだな」
現れたのはレオナだった。
植物園での苛立ちはどこへやら、今はただ獲物を追い詰めた後の猛獣のような余裕のある笑みを浮かべている。
「レ、レオナさん……! すみません、さっきはあまりの恐ろしさに、私の足が勝手に動いてしまって……」
「……ったく、腰が抜けてんじゃねぇか」
レオナは溜息をつくと階段の段差に腰を下ろし、ななしの隣に陣取った。大きな体から発せられる熱が、夜の冷え込み始めた空気の中で際立つ。
「……いいか、ななし。あのおぼっちゃまは、何でも手に入ると思ってやがる。だがな、世の中には力づくでも手に入らねぇもんがあるってことを、俺が教えてやるんだよ。……だから、勝手にどっか行こうなんて思うな」
レオナの低い声が、ななしの耳元で震える。
「……そんな、私みたいな雑草以下の人間を巡って、レオナさんのような偉大な方が貴重な時間を使うなんて……」
「……お前のその思考、どうにかしろ。……おい、こっち見ろ」
レオナがななしの顎をくい、と持ち上げようとしたその瞬間。
階段の踊り場全体がパチパチと緑色の雷光に包まれた。
「……逃げ足が速いのは、僕への畏怖ゆえかと思っていたが。……どうやら、この獣との密会のためだったようだな、ヒトの子」
マレウスが冷徹なまでの美しさを纏って、階段の上に立っていた。
「ツ、ツノ太郎……! 違います、密会だなんて……!」
「ふん、言い訳は不要だ。……キングスカラー。お前が彼女を手に入らないものと定義するのは勝手だが、それは僕が彼女を連れ去った後の話になるだろう」
マレウスは一段、また一段と階段を降りてくる。
周囲の気温が急激に下がり、ななしの吐く息が白くなった。
「二人とも……! 止めてください!」
「……どこまでもついてきやがって、ストーカーかよ」
「お前にだけは言われたくないな、不法侵入者」
ななしはレオナに肩を抱き寄せられ、マレウスに手首を掴み直された。逃げ場のない狭い階段。逃避した先は、さらなる濃厚な地獄の入り口だった。
ななしは絶望のあまり意識を失いそうになりながら、強すぎる二人の視線の火花を全身で浴び続けるのだった。
息を切らし誰もいない校舎の裏階段に座り込んだななしは、小刻みに震える手で膝を抱えた。
「……あぁ、やってしまった。二人をあの場に放置して逃げるなんて、国家反逆罪どころか宇宙規模の不敬罪……」
「子分の逃げ足だけは一級品なんだゾ……。でも、あんなところにいたらオレ様まで消し炭になっちまう」
グリムが隣でふぅふぅと毛並みを整えているが、ななしの脳内ではすでに公開処刑のシミュレーションが始まっている。すると背後の暗闇から、カツンカツンと規則正しい靴音が響いてきた。
「……ひぇっ! 処刑人が来た! 私を奈落の底へ突き落とすための、死神の足音……!」
「……おい。こんな薄暗ぇところで何してんだ。お前は本当に、ネズミみたいに逃げ回るのが好きだな」
現れたのはレオナだった。
植物園での苛立ちはどこへやら、今はただ獲物を追い詰めた後の猛獣のような余裕のある笑みを浮かべている。
「レ、レオナさん……! すみません、さっきはあまりの恐ろしさに、私の足が勝手に動いてしまって……」
「……ったく、腰が抜けてんじゃねぇか」
レオナは溜息をつくと階段の段差に腰を下ろし、ななしの隣に陣取った。大きな体から発せられる熱が、夜の冷え込み始めた空気の中で際立つ。
「……いいか、ななし。あのおぼっちゃまは、何でも手に入ると思ってやがる。だがな、世の中には力づくでも手に入らねぇもんがあるってことを、俺が教えてやるんだよ。……だから、勝手にどっか行こうなんて思うな」
レオナの低い声が、ななしの耳元で震える。
「……そんな、私みたいな雑草以下の人間を巡って、レオナさんのような偉大な方が貴重な時間を使うなんて……」
「……お前のその思考、どうにかしろ。……おい、こっち見ろ」
レオナがななしの顎をくい、と持ち上げようとしたその瞬間。
階段の踊り場全体がパチパチと緑色の雷光に包まれた。
「……逃げ足が速いのは、僕への畏怖ゆえかと思っていたが。……どうやら、この獣との密会のためだったようだな、ヒトの子」
マレウスが冷徹なまでの美しさを纏って、階段の上に立っていた。
「ツ、ツノ太郎……! 違います、密会だなんて……!」
「ふん、言い訳は不要だ。……キングスカラー。お前が彼女を手に入らないものと定義するのは勝手だが、それは僕が彼女を連れ去った後の話になるだろう」
マレウスは一段、また一段と階段を降りてくる。
周囲の気温が急激に下がり、ななしの吐く息が白くなった。
「二人とも……! 止めてください!」
「……どこまでもついてきやがって、ストーカーかよ」
「お前にだけは言われたくないな、不法侵入者」
ななしはレオナに肩を抱き寄せられ、マレウスに手首を掴み直された。逃げ場のない狭い階段。逃避した先は、さらなる濃厚な地獄の入り口だった。
ななしは絶望のあまり意識を失いそうになりながら、強すぎる二人の視線の火花を全身で浴び続けるのだった。
