虚像ダイヤモンド
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昨夜の熱がまだ肌に残る、静かな朝の光の中。
ケイト先輩は私の背中に回した腕に力を込め、耳元で「オレ一人で抱えることにする」と、決意を口にした。
けれど、私は彼の胸に顔を埋めたまま、小さく首を振った。
「……ケイト先輩。分身、消さなくていいですよ」
「……え?」
先輩の腕の力が、戸惑ったように緩む。
彼は少し体を離すと、驚いたように私の顔を覗き込んだ。
「……いいの? オレ、てっきり『全部消して自分だけを見て!』って言われるかと思ってた。……ななしちゃんって、意外とドライ?」
「ドライじゃないです。……ただ、魔法も先輩の力だし、外の世界で上手くやるための先輩を、否定したいわけじゃないんです」
彼のシャツの裾をぎゅっと握りしめ、真っ直ぐにその瞳を見つめた。
「先輩が、輝き続けるために必要な魔法なら、使い続けてください」
「……」
ケイト先輩は、一瞬だけ言葉を失った。
これまでの彼は、分身を完璧なエスコート役として私に宛がってきた。それが彼なりの、相手を不快にさせないための、そして自分が傷つかないための「防衛」であり「優しさ」だったからだ。
彼はしばらく呆然としていたが、やがて、これまでに見たことがないほど優しく、穏やかに目を細めた。
「……了解。線引き、しっかりしなきゃね。……でもやっぱり、ななしちゃんの前では、魔法もフィルターも使わない……ただの、可愛くないけーくんでいようかな」
「……ふふ、フィルターがなくても、けーくんがちゃんと可愛いの知ってますよ」
そう呼ぶと、彼は耳まで真っ赤にして、照れ臭そうに視線を逸らした。分身なら、こんなに無防備で余裕のない反応は見せないだろう。
◇
翌日から、私たちの関係は少しだけ形を変えた。
学園の廊下で会う時は、彼は相変わらず明るく笑い、マジカメ用の写真を撮る。周りから見れば、これまで通りのカップルだ。けれど、カメラを向けられていない時、机の下で繋がれた彼の指先が、微かに私の指を絡めてくる。そこにあるのは、魔法で作った幻影ではない、確かな熱だった。
放課後、人目のない空き教室。
「……はぁ、マジで疲れた……」
扉を閉めた瞬間、ケイト先輩は溜まっていた毒を吐き出すように私に体重を預けてきた。
「今のマジカメの投稿、見た? フォロワーから『甘いもの食べてるケイトくん最高!』とか言われちゃってさ。……あーあ、口の中が砂糖でベタベタして気持ち悪い。……ななしちゃん、口直しさせて?」
そう言うなり、彼は私の唇を奪った。
優しいキスではなく、縋るような、深い、深い口付け。
お互いの唾液が混ざり合う音だけが、静かな教室に響く。
「……ふぅ。……わかってるよね、ななしちゃん。オレ今、全然映えてないよ? 髪もボサボサだし、機嫌も最悪」
「……はい。とっても最悪で、素敵ですよ」
「あはは、何それ! ……でも、そう言ってもらえると、なんか……救われるな」
彼は私の腰を引き寄せ、今度は耳元で熱い吐息を漏らした。
外でどれだけ分身を使って自分を切り売りしても、戻る場所がある。
彼はようやく、自分の中の本音と建前のバランスを、私という天秤の上で見つけようとしていた。
「……ねえ、ななしちゃん。4年になって学外研修が始まって、これまでみたいに頻繁に会うことも難しくなると思うけど……それでもこうやって、オレのこと甘やかしてくれる?」
「もちろんです!」
ダイヤモンドの輝きを保つために必要な、唯一の休息場所。彼は、私の首筋に深く顔を埋め、愛おしそうに息を吸い込んだ。
ケイト先輩は私の背中に回した腕に力を込め、耳元で「オレ一人で抱えることにする」と、決意を口にした。
けれど、私は彼の胸に顔を埋めたまま、小さく首を振った。
「……ケイト先輩。分身、消さなくていいですよ」
「……え?」
先輩の腕の力が、戸惑ったように緩む。
彼は少し体を離すと、驚いたように私の顔を覗き込んだ。
「……いいの? オレ、てっきり『全部消して自分だけを見て!』って言われるかと思ってた。……ななしちゃんって、意外とドライ?」
「ドライじゃないです。……ただ、魔法も先輩の力だし、外の世界で上手くやるための先輩を、否定したいわけじゃないんです」
彼のシャツの裾をぎゅっと握りしめ、真っ直ぐにその瞳を見つめた。
「先輩が、輝き続けるために必要な魔法なら、使い続けてください」
「……」
ケイト先輩は、一瞬だけ言葉を失った。
これまでの彼は、分身を完璧なエスコート役として私に宛がってきた。それが彼なりの、相手を不快にさせないための、そして自分が傷つかないための「防衛」であり「優しさ」だったからだ。
彼はしばらく呆然としていたが、やがて、これまでに見たことがないほど優しく、穏やかに目を細めた。
「……了解。線引き、しっかりしなきゃね。……でもやっぱり、ななしちゃんの前では、魔法もフィルターも使わない……ただの、可愛くないけーくんでいようかな」
「……ふふ、フィルターがなくても、けーくんがちゃんと可愛いの知ってますよ」
そう呼ぶと、彼は耳まで真っ赤にして、照れ臭そうに視線を逸らした。分身なら、こんなに無防備で余裕のない反応は見せないだろう。
◇
翌日から、私たちの関係は少しだけ形を変えた。
学園の廊下で会う時は、彼は相変わらず明るく笑い、マジカメ用の写真を撮る。周りから見れば、これまで通りのカップルだ。けれど、カメラを向けられていない時、机の下で繋がれた彼の指先が、微かに私の指を絡めてくる。そこにあるのは、魔法で作った幻影ではない、確かな熱だった。
放課後、人目のない空き教室。
「……はぁ、マジで疲れた……」
扉を閉めた瞬間、ケイト先輩は溜まっていた毒を吐き出すように私に体重を預けてきた。
「今のマジカメの投稿、見た? フォロワーから『甘いもの食べてるケイトくん最高!』とか言われちゃってさ。……あーあ、口の中が砂糖でベタベタして気持ち悪い。……ななしちゃん、口直しさせて?」
そう言うなり、彼は私の唇を奪った。
優しいキスではなく、縋るような、深い、深い口付け。
お互いの唾液が混ざり合う音だけが、静かな教室に響く。
「……ふぅ。……わかってるよね、ななしちゃん。オレ今、全然映えてないよ? 髪もボサボサだし、機嫌も最悪」
「……はい。とっても最悪で、素敵ですよ」
「あはは、何それ! ……でも、そう言ってもらえると、なんか……救われるな」
彼は私の腰を引き寄せ、今度は耳元で熱い吐息を漏らした。
外でどれだけ分身を使って自分を切り売りしても、戻る場所がある。
彼はようやく、自分の中の本音と建前のバランスを、私という天秤の上で見つけようとしていた。
「……ねえ、ななしちゃん。4年になって学外研修が始まって、これまでみたいに頻繁に会うことも難しくなると思うけど……それでもこうやって、オレのこと甘やかしてくれる?」
「もちろんです!」
ダイヤモンドの輝きを保つために必要な、唯一の休息場所。彼は、私の首筋に深く顔を埋め、愛おしそうに息を吸い込んだ。
