TRIANGLE
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放課後のオンボロ寮裏。
ななしは、手入れが届かず伸び放題になった草むらをグリムと一緒に探索していた。
「……はぁ。私、魔法薬学の実習で使ったハーブ、どこかに落としちゃったみたい。予備がないと明日の課題が出せなくて、周りから冷たい視線を浴びながら教室の隅で苔として生きていく未来しか見えない……」
「オメー、探しものしてる時まで後ろ向きなんだゾ! オレ様が見つけてやるから安心するんだゾ!」
二人が大きな樫の木の影に差し掛かった時だった。
「――おい。足音がうるせぇぞ、草食動物」
上から降ってきた聞き慣れた声に、ななしは短い悲鳴を上げた。見上げると、太い枝の上にレオナが片膝を立てて座っていた。レオナの瞳が眩しそうにこちらを射抜いている。
「レオナさん!? すみません、お昼寝の邪魔をするつもりじゃなかったんです……」
「相変わらず大げさな奴。……おい、そんなとこで何してんだ。トカゲ野郎はどうした」
レオナがひょいと軽い身のこなしで木から飛び降りる。着地と同時にななしのすぐ目の前に立ち、その距離感にななしは一歩後ずさった。
「ツノ太郎……マレウス先輩なら、今日はリリア先輩に呼ばれてどこかへ行ったみたいです。私は落としたハーブを探してて……」
「……フン。あいつはいねぇのか」
レオナが、わずかに口角を上げたのをななしは見逃さなかった。
彼は迷うことなくななしの隣にどっかりと座り込み、その肩を引き寄せて自分の胸元に固定する。
「あ、あの! レオナさん!? ハーブを探さないと……!」
「そんなもん、後で俺がサバナクローの連中に探させりゃ済む話だ。……今日はあいつがいねぇんだ。おとなしく俺の添い寝に付き合え」
「添い寝!? 私、寝相が悪いからレオナさんの顔を蹴っ飛ばして、サバナクロー寮生全員から賞金首として追われることになっちゃう……!」
「いいから黙ってろ。……今日は、邪魔が入らねぇからな」
レオナは鼻で笑い、そのままななしの頭の上に自分の顎を乗せた。
大きな体温とがななしを包み込む。いつもならマレウスが現れて「ヒトの子に何を強いている」と火花を散らすところだが、今日は驚くほど静かだ。
「……ふなっ。レオナ、オレ様を無視してななしを独り占めするなんてずるいんだゾ!」
グリムが二人の間に割り込もうとするが、レオナは長い脚でグリムを軽くあしらい、自分の膝の上に乗せて黙らせた。
「お前も寝てろ、毛玉。……静かだな。あいつの魔力の匂いがしねぇだけで、これほど風が美味いとは」
「……レオナさん、ツノ太郎のこと嫌いなんですか?」
「嫌いっていうか……鼻につくんだよ。圧倒的な力を持って生まれて、周りが勝手にかしずく。……まぁ、今日はそんなことどうでもいい。……おいななし、動くなよ。……寝るぞ」
レオナは本当に眠り始めたのか、規則正しい寝息が聞こえ始めた。ななしは緊張でガチガチになりながらも、背中から伝わる確かな熱に次第に力が抜けていく。レオナの腕の中は怖いくらいに心地よく、ななしの瞼も次第に重くなっていった。
「……ふなぁ……オレ様も、眠くなってきたんだゾ……」
グリムもいつの間にか夢の中だ。
木漏れ日の中、レオナは薄く目を開け腕の中で船を漕ぎ始めたななしの横顔をじっと見つめた。誰にも邪魔されない、束の間の独占。
「……ったく。あいつがいねぇと、調子狂うじゃねぇか」
誰に聞かせるでもない呟きを残し、レオナはななしを抱く腕にほんの少しだけ力を込めた。
ななしは、手入れが届かず伸び放題になった草むらをグリムと一緒に探索していた。
「……はぁ。私、魔法薬学の実習で使ったハーブ、どこかに落としちゃったみたい。予備がないと明日の課題が出せなくて、周りから冷たい視線を浴びながら教室の隅で苔として生きていく未来しか見えない……」
「オメー、探しものしてる時まで後ろ向きなんだゾ! オレ様が見つけてやるから安心するんだゾ!」
二人が大きな樫の木の影に差し掛かった時だった。
「――おい。足音がうるせぇぞ、草食動物」
上から降ってきた聞き慣れた声に、ななしは短い悲鳴を上げた。見上げると、太い枝の上にレオナが片膝を立てて座っていた。レオナの瞳が眩しそうにこちらを射抜いている。
「レオナさん!? すみません、お昼寝の邪魔をするつもりじゃなかったんです……」
「相変わらず大げさな奴。……おい、そんなとこで何してんだ。トカゲ野郎はどうした」
レオナがひょいと軽い身のこなしで木から飛び降りる。着地と同時にななしのすぐ目の前に立ち、その距離感にななしは一歩後ずさった。
「ツノ太郎……マレウス先輩なら、今日はリリア先輩に呼ばれてどこかへ行ったみたいです。私は落としたハーブを探してて……」
「……フン。あいつはいねぇのか」
レオナが、わずかに口角を上げたのをななしは見逃さなかった。
彼は迷うことなくななしの隣にどっかりと座り込み、その肩を引き寄せて自分の胸元に固定する。
「あ、あの! レオナさん!? ハーブを探さないと……!」
「そんなもん、後で俺がサバナクローの連中に探させりゃ済む話だ。……今日はあいつがいねぇんだ。おとなしく俺の添い寝に付き合え」
「添い寝!? 私、寝相が悪いからレオナさんの顔を蹴っ飛ばして、サバナクロー寮生全員から賞金首として追われることになっちゃう……!」
「いいから黙ってろ。……今日は、邪魔が入らねぇからな」
レオナは鼻で笑い、そのままななしの頭の上に自分の顎を乗せた。
大きな体温とがななしを包み込む。いつもならマレウスが現れて「ヒトの子に何を強いている」と火花を散らすところだが、今日は驚くほど静かだ。
「……ふなっ。レオナ、オレ様を無視してななしを独り占めするなんてずるいんだゾ!」
グリムが二人の間に割り込もうとするが、レオナは長い脚でグリムを軽くあしらい、自分の膝の上に乗せて黙らせた。
「お前も寝てろ、毛玉。……静かだな。あいつの魔力の匂いがしねぇだけで、これほど風が美味いとは」
「……レオナさん、ツノ太郎のこと嫌いなんですか?」
「嫌いっていうか……鼻につくんだよ。圧倒的な力を持って生まれて、周りが勝手にかしずく。……まぁ、今日はそんなことどうでもいい。……おいななし、動くなよ。……寝るぞ」
レオナは本当に眠り始めたのか、規則正しい寝息が聞こえ始めた。ななしは緊張でガチガチになりながらも、背中から伝わる確かな熱に次第に力が抜けていく。レオナの腕の中は怖いくらいに心地よく、ななしの瞼も次第に重くなっていった。
「……ふなぁ……オレ様も、眠くなってきたんだゾ……」
グリムもいつの間にか夢の中だ。
木漏れ日の中、レオナは薄く目を開け腕の中で船を漕ぎ始めたななしの横顔をじっと見つめた。誰にも邪魔されない、束の間の独占。
「……ったく。あいつがいねぇと、調子狂うじゃねぇか」
誰に聞かせるでもない呟きを残し、レオナはななしを抱く腕にほんの少しだけ力を込めた。
