TRIANGLE
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魔法史の小テストを終えた放課後。
ななしは重い足取りで図書室へと向かっていた。
「……はぁ。やっぱりあの記述問題、解答欄を一行間違えて書いちゃった気がする」
「子分はいちいち気にしすぎなんだゾ」
グリムを肩に乗せたななしは静まり返った図書室の奥、自習スペースに席を確保した。ここは人気が少なく落ち着いて予習ができるはずだった。
「……よし、次の授業の予習を……」
「おい」
背後から低くけだるげな声が降ってきた。振り返ると本棚に背を預けたレオナが眠そうな目でこちらを見下ろしている。
「レオナさん……ここ図書室ですよ? お昼寝ならいつもの植物園の方が快適じゃないですか?」
「あ? どこで寝ようが俺の勝手だろ……その隣の席、空けとけ」
レオナはそう言うなりななしのすぐ隣の椅子を引き、長い足を組んで座り込んだ。彼が近くに座るだけで周囲の空気が少し熱くなったような気がしてななしは教科書を持つ手が震える。
「勉強するんだろ。…ったく、見てるだけで眠くなるぜ」
レオナが欠伸をしながらななしの肩に頭を預けようとした、その時。
「図書室は静かに利用するものだ。……特に獣の唸り声は耳に障るな」
コツンと床を叩く音が響き本棚の影からマレウスが姿を現した。
「ツノ太郎……! なんでここに?」
「散歩の途中で、ヒトの子の気配がしたのでな。……ななし、こんな場所で一人、また悲しい顔をして本を眺めているのか」
「一人じゃないんだゾ! オレ様もいるんだゾ!」
グリムの声はマレウスの耳には届いていないようだった。マレウスはレオナを冷ややかに一瞥すると、ななしの反対側の席に音もなく腰を下ろした。
「……おい、トカゲ野郎。散歩の途中ならそのままどっか行けよ。ここは俺たちが先に占領してんだ」
「占領、か。学園の施設を私物化するのは感心しないな、キングスカラー。僕はただ、勉学に励む彼女に効率的な暗記術を教授しようと思っただけだ」
マレウスがななしの教科書を覗き込む。
あまりにも距離が近く、ななしは心臓が止まる思いだった。
「ツノ太郎、近い……! 暗記術なんて私の凡庸な脳みそで試したら脳細胞がパンクして耳から煙が出ちゃうから!」
「謙遜することはない。お前なら僕の言葉を正しく受け止められるはずだ」
「暗記術だぁ? んなもんより、俺が実践的なコツを教えてやるよ。……おい、こっち向け」
レオナがななしの頬を軽くつついて自分の方へ向かせようとする。
右には不敵に微笑むレオナ、左には優雅に見つめてくるマレウス。
「……あ、あの……。二人とも、私はただ静かに予習をして、明日の授業で先生に指名されても『わかりません』って震えないようにしたいだけなんです……」
「僕がいれば、わからないことなど何一つなくなる」
「俺がいれば、指名してくる教師ごと黙らせてやる」
「物騒な解決策はやめてください!」
ななしの悲鳴が図書室の静寂を切り裂いた。
「静かに!」という鋭い視線が飛んできてななしはさらに小さくなる。
「……ほら、私のせいで怒られた。もう私は一生図書室出入り禁止になって、一生知識を得られないまま無知な貝として余生を過ごすんだ」
「いちいち大げさなんだよ、お前は」
「ななし、あまり気を落とすな」
「こいつらほんとうるせーんだゾ。子分、オレ様腹減ってきたんだゾ……」
グリムの声が虚しく響く中、ななしの長い放課後はまだ終わる気配を見せなかった。
ななしは重い足取りで図書室へと向かっていた。
「……はぁ。やっぱりあの記述問題、解答欄を一行間違えて書いちゃった気がする」
「子分はいちいち気にしすぎなんだゾ」
グリムを肩に乗せたななしは静まり返った図書室の奥、自習スペースに席を確保した。ここは人気が少なく落ち着いて予習ができるはずだった。
「……よし、次の授業の予習を……」
「おい」
背後から低くけだるげな声が降ってきた。振り返ると本棚に背を預けたレオナが眠そうな目でこちらを見下ろしている。
「レオナさん……ここ図書室ですよ? お昼寝ならいつもの植物園の方が快適じゃないですか?」
「あ? どこで寝ようが俺の勝手だろ……その隣の席、空けとけ」
レオナはそう言うなりななしのすぐ隣の椅子を引き、長い足を組んで座り込んだ。彼が近くに座るだけで周囲の空気が少し熱くなったような気がしてななしは教科書を持つ手が震える。
「勉強するんだろ。…ったく、見てるだけで眠くなるぜ」
レオナが欠伸をしながらななしの肩に頭を預けようとした、その時。
「図書室は静かに利用するものだ。……特に獣の唸り声は耳に障るな」
コツンと床を叩く音が響き本棚の影からマレウスが姿を現した。
「ツノ太郎……! なんでここに?」
「散歩の途中で、ヒトの子の気配がしたのでな。……ななし、こんな場所で一人、また悲しい顔をして本を眺めているのか」
「一人じゃないんだゾ! オレ様もいるんだゾ!」
グリムの声はマレウスの耳には届いていないようだった。マレウスはレオナを冷ややかに一瞥すると、ななしの反対側の席に音もなく腰を下ろした。
「……おい、トカゲ野郎。散歩の途中ならそのままどっか行けよ。ここは俺たちが先に占領してんだ」
「占領、か。学園の施設を私物化するのは感心しないな、キングスカラー。僕はただ、勉学に励む彼女に効率的な暗記術を教授しようと思っただけだ」
マレウスがななしの教科書を覗き込む。
あまりにも距離が近く、ななしは心臓が止まる思いだった。
「ツノ太郎、近い……! 暗記術なんて私の凡庸な脳みそで試したら脳細胞がパンクして耳から煙が出ちゃうから!」
「謙遜することはない。お前なら僕の言葉を正しく受け止められるはずだ」
「暗記術だぁ? んなもんより、俺が実践的なコツを教えてやるよ。……おい、こっち向け」
レオナがななしの頬を軽くつついて自分の方へ向かせようとする。
右には不敵に微笑むレオナ、左には優雅に見つめてくるマレウス。
「……あ、あの……。二人とも、私はただ静かに予習をして、明日の授業で先生に指名されても『わかりません』って震えないようにしたいだけなんです……」
「僕がいれば、わからないことなど何一つなくなる」
「俺がいれば、指名してくる教師ごと黙らせてやる」
「物騒な解決策はやめてください!」
ななしの悲鳴が図書室の静寂を切り裂いた。
「静かに!」という鋭い視線が飛んできてななしはさらに小さくなる。
「……ほら、私のせいで怒られた。もう私は一生図書室出入り禁止になって、一生知識を得られないまま無知な貝として余生を過ごすんだ」
「いちいち大げさなんだよ、お前は」
「ななし、あまり気を落とすな」
「こいつらほんとうるせーんだゾ。子分、オレ様腹減ってきたんだゾ……」
グリムの声が虚しく響く中、ななしの長い放課後はまだ終わる気配を見せなかった。
