TRIANGLE
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オンボロ寮のキッチンから微かに焦げ臭い匂いが漂ってくる。
ななしは使い古されたフライパンを手に、少し困ったような笑みを浮かべていた。
「やってしまった」
「おい、草食動物。貸せ、見てられねぇ」
レオナがカウンター越しにななしの手からフライ返しを奪い取った。手際よくフライパンを操り、肉汁を閉じ込めるようにハンバーグの焦げた表面を削ぎ落とし形を完璧に整えていく。
「レオナさんすごい! マスターシェフの成果ですね!」
「褒めてんのかそれ。ったく、じっとしてろ」
レオナがななしを背後から包み込むような形になりコンロの火力を調節する。背中から熱が伝わってきて、ななしは首をすくめた。
「いい匂いなんだゾ〜」
談話室から走ってきたグリムが期待に目を輝かせてカウンターに身を乗り出す。
「よし、こんなもんだろ」
「レオナさん、ありがとうございます! 私、一生ついていきます! って言いたいけど、私なんかがついていったらレオナさんに迷惑かけまくりそうなのでやめときます」
「んなくだらねぇこと言ってねぇで、さっさと口に運べ。ほら」
「えっ、あ、自分で食べられま…」
レオナがフォークを差し出したその瞬間、キッチンの空気がピリリと帯電した。
「ヒトの子の料理を楽しみにしていたが、キングスカラー。まさかお前が横から手を出すとはな。随分と出しゃばった真似をする」
いつの間にかマレウスが冷ややかな微笑を浮かべて立っている。その手には、重厚な彫刻が施された銀のバスケットが握られていた。
「お前は何しに来たんだ、トカゲ野郎」
「ふん、僕がただ食を待つだけの男だと思ったか? ヒトの子の料理は楽しみだが、彼女が不慣れな手つきで苦労している姿を見て、黙ってはいられなくてな。僕が用意した特製のアミューズを持ってきた。これを添えれば、お前の質素な肉料理も少しは見られるものになるだろう」
マレウスがバスケットを開けると、中には宝石のように輝く冷製オードブルや金箔の散らされたスイーツが並んでいた。
「わ、わああ! ツノ太郎ありがとう! でもこれ、付け合わせにするには豪華すぎて、メインのハンバーグが恐縮して縮みそう!私の心臓も縮みそう」
「案ずることはない、これは単なる彩りに過ぎない」
「チッ、余計なもん持ってきやがって」
レオナはマレウスを睨みつけるが、ななしが目を輝かせているのを見て、それ以上は追求しなかった。
「じゃあ、せっかくなので全部一緒にいただきます!」
「ほら、いいから食え。肉が冷める」
「まずは僕の持ってきたスープで口を潤すといい、さあ」
左右から迫り来る二人の強烈なプレッシャー。ななしは冷や汗を流しながらも二人の好意に応えようと必死にフォークを動かした。
結局その日の晩餐はレオナが仕上げたワイルドなハンバーグと、マレウスが差し出した超高級品を交互にななしの口へ運ぶという、奇妙な儀式と化した。
「美味しい。すごく美味しいけど、緊張で味が半分くらい消えてる気がする」
「欲張りな奴だな。ほら、次はこれだ」
「ヒトの子、あまり急いで飲み込むな。喉を詰まらせたら大変だ」
レオナはマレウスが皿を出すたびに不機嫌そうに鼻を鳴らし、マレウスはレオナが肉を運ぶたびに涼しい顔で嫌味を放つ。
ななしは右から来るフォークと左から来るスプーンを必死に受け止めながら心の中で叫んでいた。
「ふなー!子分ばっかりずるいんだゾ! オレ様にもよこすんだゾ!」
グリムが二人の隙間からハンバーグを掠め取っていく。
騒がしく、けれどどこか賑やかなオンボロ寮の夜。
ななしは、最後にマレウスが持ってきた極上のスイーツを一口食べ、頬を緩めた。
「あ、でも。こんなに美味しいものが食べられるなら、明日ちょっとくらい悪いことが起きても耐えられるかも」
二人に挟まれななしの波乱万丈な学園生活は、ますます予測不能な方向へと転がり始めていた。
ななしは使い古されたフライパンを手に、少し困ったような笑みを浮かべていた。
「やってしまった」
「おい、草食動物。貸せ、見てられねぇ」
レオナがカウンター越しにななしの手からフライ返しを奪い取った。手際よくフライパンを操り、肉汁を閉じ込めるようにハンバーグの焦げた表面を削ぎ落とし形を完璧に整えていく。
「レオナさんすごい! マスターシェフの成果ですね!」
「褒めてんのかそれ。ったく、じっとしてろ」
レオナがななしを背後から包み込むような形になりコンロの火力を調節する。背中から熱が伝わってきて、ななしは首をすくめた。
「いい匂いなんだゾ〜」
談話室から走ってきたグリムが期待に目を輝かせてカウンターに身を乗り出す。
「よし、こんなもんだろ」
「レオナさん、ありがとうございます! 私、一生ついていきます! って言いたいけど、私なんかがついていったらレオナさんに迷惑かけまくりそうなのでやめときます」
「んなくだらねぇこと言ってねぇで、さっさと口に運べ。ほら」
「えっ、あ、自分で食べられま…」
レオナがフォークを差し出したその瞬間、キッチンの空気がピリリと帯電した。
「ヒトの子の料理を楽しみにしていたが、キングスカラー。まさかお前が横から手を出すとはな。随分と出しゃばった真似をする」
いつの間にかマレウスが冷ややかな微笑を浮かべて立っている。その手には、重厚な彫刻が施された銀のバスケットが握られていた。
「お前は何しに来たんだ、トカゲ野郎」
「ふん、僕がただ食を待つだけの男だと思ったか? ヒトの子の料理は楽しみだが、彼女が不慣れな手つきで苦労している姿を見て、黙ってはいられなくてな。僕が用意した特製のアミューズを持ってきた。これを添えれば、お前の質素な肉料理も少しは見られるものになるだろう」
マレウスがバスケットを開けると、中には宝石のように輝く冷製オードブルや金箔の散らされたスイーツが並んでいた。
「わ、わああ! ツノ太郎ありがとう! でもこれ、付け合わせにするには豪華すぎて、メインのハンバーグが恐縮して縮みそう!私の心臓も縮みそう」
「案ずることはない、これは単なる彩りに過ぎない」
「チッ、余計なもん持ってきやがって」
レオナはマレウスを睨みつけるが、ななしが目を輝かせているのを見て、それ以上は追求しなかった。
「じゃあ、せっかくなので全部一緒にいただきます!」
「ほら、いいから食え。肉が冷める」
「まずは僕の持ってきたスープで口を潤すといい、さあ」
左右から迫り来る二人の強烈なプレッシャー。ななしは冷や汗を流しながらも二人の好意に応えようと必死にフォークを動かした。
結局その日の晩餐はレオナが仕上げたワイルドなハンバーグと、マレウスが差し出した超高級品を交互にななしの口へ運ぶという、奇妙な儀式と化した。
「美味しい。すごく美味しいけど、緊張で味が半分くらい消えてる気がする」
「欲張りな奴だな。ほら、次はこれだ」
「ヒトの子、あまり急いで飲み込むな。喉を詰まらせたら大変だ」
レオナはマレウスが皿を出すたびに不機嫌そうに鼻を鳴らし、マレウスはレオナが肉を運ぶたびに涼しい顔で嫌味を放つ。
ななしは右から来るフォークと左から来るスプーンを必死に受け止めながら心の中で叫んでいた。
「ふなー!子分ばっかりずるいんだゾ! オレ様にもよこすんだゾ!」
グリムが二人の隙間からハンバーグを掠め取っていく。
騒がしく、けれどどこか賑やかなオンボロ寮の夜。
ななしは、最後にマレウスが持ってきた極上のスイーツを一口食べ、頬を緩めた。
「あ、でも。こんなに美味しいものが食べられるなら、明日ちょっとくらい悪いことが起きても耐えられるかも」
二人に挟まれななしの波乱万丈な学園生活は、ますます予測不能な方向へと転がり始めていた。
