微睡の淵の銀鎖
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昼下がりの陽だまり。
オンボロ寮の庭にある大きな木の下で、シルバーはいつものように穏やかな眠りについていた。
木漏れ日が白銀の髪をやさしく照らし、枝葉を揺らす風が静かな時間を運んでくる。
その隣では、■■■が一冊の本を開きながら、時折ページをめくる手を止めてシルバーの寝顔を眺めていた。
「……ふふ」
自然と笑みがこぼれる。
物見の塔で互いの想いを伝え合ってから、二人は少しずつ恋人としての時間を重ねてきた。
シルバーは相変わらず、どこでも眠ってしまう。
けれど■■■は、そのたびに困るより先に「また眠ってる」と笑えるようになっていた。
眠ることも、目覚めることも。
二人にとっては、もう日常の一部だった。
「今日は、ずいぶん気持ちよさそうですね」
そう小さく呟くと、シルバーの睫毛がかすかに揺れ、ゆっくりと瞼が開く。
最初に映ったのは、木漏れ日の中で微笑む■■■だった。
その瞬間、彼の表情が自然と和らぐ。
「……■■■」
「おはようございます、先輩」
「ああ、おはよう」
穏やかな挨拶を交わすだけで、胸が温かくなる。
「また眠ってしまったな」
「今日は静かな寝息だったので、安心して本を読めました」
「そうか」
シルバーは小さく笑った。
「目を覚ました時、お前が隣にいるだけで、今日も良い日だと思える」
「そんなこと真面目に言われると……照れます」
「本当のことだからな」
彼らしい、飾らない答えだった。
シルバーはそっと視線を落とす。
■■■の首元では、あの日贈った銀色の剣のチャームが静かに揺れている。
「……まだ身につけてくれているんだな」
「もちろんです」
■■■は嬉しそうにネックレスを指先で撫でた。
「これを見ると、思い出せますから」
二人の視線が重なる。
言葉は少ない。
それでも、お互いの気持ちは十分に伝わっていた。
しばらくしてシルバーは少しだけ照れたように笑う。
「……ひとつ、聞いてもいいだろうか」
「なんですか?」
「手を繋いでもいいか?」
■■■は少しだけ頬を染め、微笑みながら自分から手を差し出した。
「もちろんですよ」
シルバーはその手を大切そうに包み込む。
温もりが重なる静かな午後。
鳥のさえずりだけが二人を包んでいた。
「■■■」
「俺は、お前と過ごす毎日が好きだ」
「わたしも、先輩がいてくれる毎日が好きです」
その言葉に、シルバーは嬉しそうに目を細め、少しだけ距離を縮める。
「……もし、お前が嫌でなければ……」
「先輩?」
「……キスをしてもいいだろうか」
突然の問いに■■■は驚いたように目を丸くした。
けれど次の瞬間には、柔らかな笑みを浮かべる。
「……はい」
その返事を聞いてから、シルバーはそっと彼女へ近づいた。
額が触れそうな距離。
一度だけ目を合わせ、互いに小さく笑う。
そして優しく、短く、祝福のような口づけを交わした。
木漏れ日が揺れ、風が二人の髪を優しく撫でていく。
唇が離れると、どちらからともなく照れ笑いがこぼれた。
「……俺は幸せ者だ」
シルバーが小さく呟く。
■■■は頷き、もう一度彼の手を握った。
「わたしもです」
◇
心地よい風が吹き抜ける。
シルバーはベンチにもたれ、目を閉じた。
「……」
規則正しい寝息。
「……先輩?」
返事はない。
「また寝ちゃいましたね」
■■■は思わず笑ってしまう。
彼女はそっとシルバーに肩を寄せた。
そしてシルバーは眠ったまま、無意識に彼女の手を軽く握り返す。
「おやすみなさい」
二人の物語は、これからも静かに続いていく。
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