【ホワイトデー】

  • エリック

    あ、アラン。
    ちょっといいか。

  • アラン

    あ、はい……

  • グレル

    聞いてアラァーン!
    ウィルったら、ウィルったらあ!

  • ウィリアム

    騒がしいですね。

  • グレル

    ウィルったらアタシを振ったの!

  • ロナルド

    あっ居た居た。
    ウィリアム先輩、今日のデートですけど……

  • ウィリアム

    ふたりともお黙りなさい。
    始末書の書き直しについてですね……

  • アラン

    行っちゃった。
    嵐みたいだったな。

  • アラン

    えーと、エリック先輩なんですか?

  • エリック

    あ、いや、その。

  • アラン

    言いにくいことですか?

  • エリック

    いや。
    今日飲みに行かねぇか、アラン。

  • アラン

    いいですけど。
    いつものパブで?

  • エリック

    いや。
    店は選んでおいた。
    ビッグベンに18時半待ち合わせで。

  • アラン

    はい、分かりました。

  • アラン

    (待ち合わせか……珍しいな)

  • エリック

    「アラン」

  • アラン

    「エリックさん、お待たせしました」

  • アラン

    後ろになにかを隠した君と合流する。

  • エリック

    「その……これ」

  • アラン

    背中から、不意に真っ赤な薔薇の花束が現れた。

  • アラン

    「えっ?」

  • アラン

    戸惑う俺に君が笑う。

  • エリック

    「やっぱり気が付いてなかったか。今日はなんの日だ?」

  • アラン

    「え、えーっと」

  • エリック

    「3月14日。ホワイトデーだ。付き合ってくれ、アラン」

  • アラン

    君はズルい。
    そう言って、見たこともないビッグスマイルで俺を見下ろす。

  • アラン

    俺は見とれてしまって言葉を失った。

  • エリック

    「はい、は?」

  • アラン

    「は、はい」

  • エリック

    「よっしゃ」

  • アラン

    「あっ! いや、今のは」

  • エリック

    「なしか?」

  • アラン

    「いえ、あの、その」

  • アラン

    俺に花束を握らせて、君は上機嫌で先に立って歩き出した。

  • アラン

    君はズルい。
    そんなことされたら、後を追うしかないじゃないか。

  • アラン

    微かに、君の鼻歌が聞こえる。

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