8th. 翼あるもの

 「良かった」
 アラエルはそんな小鳥の様子を見て、心の底から嬉しそうに笑った。
 「お前が元気になって、本当に良かった。お前が喜んでくれて、僕も本当に嬉しいよ」
 それは紛れもないアラエルの本心からの言葉だった。
 その瞬間。
 アラエルの背中が金色に輝いた。そして、大きな純白の翼があらわれた。
 以前のものよりもっとずっと大きくて立派な二枚の翼。それは真珠色の輝きさえ帯びて、アラエルを優しく包んでいる。
 「――?!」
 驚き立ち尽くすアラエルに、ラエルが笑いながらゆっくりと近づいた。
 「良かったな、アラエル」
 「うん。……でも、どうして?」
 呆然と聞き返すアラエルに、ラエルは花のように笑ってみせる。
 「天使の翼は決してなくなったりしない。ただ、以前の君にはそれが見えなかったのだよ。天使の翼というのは、優しさと慈しみの心で出来ているから」
 「優しさと慈しみの心……」
 アラエルはしみじみとその言葉を呟いた。
 それから、頭上で高らかに歌う小鳥を見つめると、
 「ありがとう。君のおかげで、僕はそれを見つけることが出来たんだね」
 アラエルはそう言って、まっすぐに左手を伸ばした。
 小鳥はゆっくりと旋回しながらアラエルの腕に止まり、ひときわ美しい声でさえずった。
 『生きることは楽しい』
 小鳥はそう歌っているようだった。
 そして、今ならアラエルにもそれが分かるような気がした。
 きっともう二度とアラエルの翼が消えることはないだろう。


 ――生きることは楽しい。
 ――生きることは苦しい。
 ――生きることは・・・・・





《おしまい
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