8th. 翼あるもの

 あれからひと月。
 アラエルはなくした翼を必死に探しまわった。日が昇ってから沈むまでずっと暗い森の中を歩き回り、体中くたくたになり手足はすり傷だらけになった。
 「痛い」
 そう言葉にした途端、生々しい痛みがアラエルを襲った。
 初めての感覚に、アラエルはうろたえた。まるで得体のしれない恐怖がざわざわと足元から這い上がってくるようだった。
 「痛い、痛い……」
 そう繰り返しながらアラエルは泣いた。手足についた傷よりも、胸の奥が苦しくて痛くてどうしようもなかった。
 こんなことは今までに一度だって経験したことがない。
 辛い。苦しい。悲しい。悔しい。やるせない。心細い。
 ありとあらゆる負の感情がアラエルを襲った。それらに、アラエルは今すぐにも押しつぶされそうだった。
 「何でだよ?」
 アラエルは呟いた。
 「何で僕がこんな目に遭わなくちゃならないんだよ?!」
 アラエルはとうとう癇癪を起こして、その場にしゃがみ込んだ。
 いよいよ大声を上げて泣き喚こうとしたその時、
 「ピィ……」
 小さな小さな声が、嗚咽するアラエルの耳元に届いた。
 「何?」
 アラエルは慌てて顔を上げると、辺りをキョロキョロと見回した。
 すると、また小さな声が聞こえた。
 「ピイ……」
 「君は誰?いったいどこにいるの?」
 「ピイピイーッ」
 アラエルの問いに答えるように声が大きくなった。
 アラエルは声のする方向を確かめると、四つん這いになってゆっくりと進んだ。腫れぼったくなった目蓋をこすりながら、注意深く視線を走らせる。
 「ピィピピーッ」
 また声がした。
 アラエルが顔を向けると、大きな木の根元――こんもりと積もった落ち葉の中に、黄色いくちばしの先端が見え隠れしているのが見えた。
 「見つけた!」
 アラエルはやっと声の主を探し出し、その小さな体を両手でこわごわと掬い上げた。
 
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