7th. Melissa
私はこっそりと苦笑をかみ殺しながら、今度は彼女の名前を尋ねた。
彼女はそこに生えていたレモンバームを指さして、
「あれと同じ」
そう笑った。
「メリッサ、さん?」
「そうよ」
「可愛いお名前ですね」
私はにっこりと極上の笑顔を彼女に向けた。
するとメリッサは少しだけ頬を赤らめながら、いきなり勢いよく立ち上がった。
「どうしたんですか?」
私が心配そうに尋ねると、メリッサは両手で頬を押さえて、アーとかウーとか唸っていた。かと思うと、いきなり目を閉じて胸の前で十字を切り出した。
「父なる神よ、お許しください。今、私は思わず罪を犯してしまいました」
いったい彼女はなぜ懺悔などしているのだろう。
私は不思議に思い、そのまま彼女に質問した。すると、
「あなたがあんまり綺麗な顔で笑うものだから、ついドキッとしてしまったのよ」
真っ赤になってそんなことを言う。
(いくらでも簡単に嘘がつけるだろうに)
誤魔化すことを思いつきもしない、そんな彼女のまっすぐな素直さに、私はますます彼女に興味をひかれた。
(どうせ暇なんだし、もう少しここに居てみようか。あちらも、私がいなくても別に問題はないだろう)
私はそう思い、しばらくこの村に住むことにした。
仮にメリッサが死ぬまでここに留まったとしても、人間の寿命などたかだか百年弱。気の遠くなるような時間を所有する私にとっては、そんなものまばたきの一瞬にしかならない。
おもしろそうな暇つぶし。
私は、メリッサのことをそんな風に考えていた。
人間としての暮らしは、私にとって新鮮な驚きの連続だった。
村の連中はみな気のいい人たちばかりで、いきなり村に住みついた私にも親切にしてくれた。もっとも私は、自分のことを「都会から静養に来た貴族」と名乗っていたから、そのことも大きな原因の一つだと思うけれどね。
とにかく、私は村に住み着き、メリッサのいる修道院にも足しげく通った。
メリッサもはじめはとても驚いたり呆れたりしていたけれど、時間が経つにつれ、私の存在など気にならなくなったようだ。いや。私の勘違いでなければ、むしろメリッサは、私が村にいることを喜んでいるように見えた。
彼女はそこに生えていたレモンバームを指さして、
「あれと同じ」
そう笑った。
「メリッサ、さん?」
「そうよ」
「可愛いお名前ですね」
私はにっこりと極上の笑顔を彼女に向けた。
するとメリッサは少しだけ頬を赤らめながら、いきなり勢いよく立ち上がった。
「どうしたんですか?」
私が心配そうに尋ねると、メリッサは両手で頬を押さえて、アーとかウーとか唸っていた。かと思うと、いきなり目を閉じて胸の前で十字を切り出した。
「父なる神よ、お許しください。今、私は思わず罪を犯してしまいました」
いったい彼女はなぜ懺悔などしているのだろう。
私は不思議に思い、そのまま彼女に質問した。すると、
「あなたがあんまり綺麗な顔で笑うものだから、ついドキッとしてしまったのよ」
真っ赤になってそんなことを言う。
(いくらでも簡単に嘘がつけるだろうに)
誤魔化すことを思いつきもしない、そんな彼女のまっすぐな素直さに、私はますます彼女に興味をひかれた。
(どうせ暇なんだし、もう少しここに居てみようか。あちらも、私がいなくても別に問題はないだろう)
私はそう思い、しばらくこの村に住むことにした。
仮にメリッサが死ぬまでここに留まったとしても、人間の寿命などたかだか百年弱。気の遠くなるような時間を所有する私にとっては、そんなものまばたきの一瞬にしかならない。
おもしろそうな暇つぶし。
私は、メリッサのことをそんな風に考えていた。
人間としての暮らしは、私にとって新鮮な驚きの連続だった。
村の連中はみな気のいい人たちばかりで、いきなり村に住みついた私にも親切にしてくれた。もっとも私は、自分のことを「都会から静養に来た貴族」と名乗っていたから、そのことも大きな原因の一つだと思うけれどね。
とにかく、私は村に住み着き、メリッサのいる修道院にも足しげく通った。
メリッサもはじめはとても驚いたり呆れたりしていたけれど、時間が経つにつれ、私の存在など気にならなくなったようだ。いや。私の勘違いでなければ、むしろメリッサは、私が村にいることを喜んでいるように見えた。
