7th. Melissa
旅はとても順調だったよ。
私も長い経験ですっかり人間らしく振る舞えるようになっていたからね。私の正体を見破られるようなことはなかった。
そうやって久しぶりの旅を楽しんで、そろそろそれも終わりに近づこうかという頃、私はあの子と出会ったのだ。
「ねえ、あなた、人間じゃないでしょう?」
道ですれ違った瞬間、いきなりそう尋ねてきた少女がいた。
「いったい何を言っているのです、お嬢さん?」
私は余裕たっぷりの笑顔で、その小さな少女を見下ろした。
すると少女は、気丈な態度で私を睨みつけて、さらに言った。
「そんな笑顔で騙されるもんですか。私にはちゃんとわかるのよ。あなた、悪魔でしょう」
どうだまいったか、と言わんばかりに胸を張る少女に、私はついつい悪戯心を抑えられなかった。
「おやおや。悪魔だなんて恐ろしい」
「とぼけないで」
「とぼけてなどいませんよ。いったい私のどこが、そんな恐ろしいものに見えるというのですか?」
「匂いよ」
少女の返答に、私は虚をつかれた。
「え?」
「匂い。あなた、人間じゃない匂いがするの」
私はポカンとした表情で少女を見つめた。
すると、突然その少女が笑い出した。
「ちょっと、やだ。何、その間の抜けた顔」
「えっ?」
「やだ。あなたって、きっとすごく下っ端の悪魔なのね。正体を見破られたくらいで、そんなに驚いちゃって」
「は?」
「でも、大丈夫、安心して。いくら悪魔だからって、問答無用でいきなり退治したりはしないから」
驚かせてごめんね。
そう言って、けらけらと声を上げて笑う少女を、私は心底呆れて眺めていた。
それがメリッサだった。
「あなた、名前は何ていうの?」
少女にそう尋ねられて、
「私はアス――」
私は自分の名前を言いかけて、咄嗟に口をつぐんだ。私のことを下級悪魔だと思い込んでいる彼女に、本名をそのまま伝えるわけにはいかないと思ったのだ。
「何?」
「私の名前はアス……ト。そう、アストと言うんです」
「ふうん、やっぱり聞いた事のない名前ね。あと二文字違ったら、あの悪名高き大悪魔と同じ名前なのに。残念ね」
そんなことを言って屈託なく笑う。
私も長い経験ですっかり人間らしく振る舞えるようになっていたからね。私の正体を見破られるようなことはなかった。
そうやって久しぶりの旅を楽しんで、そろそろそれも終わりに近づこうかという頃、私はあの子と出会ったのだ。
「ねえ、あなた、人間じゃないでしょう?」
道ですれ違った瞬間、いきなりそう尋ねてきた少女がいた。
「いったい何を言っているのです、お嬢さん?」
私は余裕たっぷりの笑顔で、その小さな少女を見下ろした。
すると少女は、気丈な態度で私を睨みつけて、さらに言った。
「そんな笑顔で騙されるもんですか。私にはちゃんとわかるのよ。あなた、悪魔でしょう」
どうだまいったか、と言わんばかりに胸を張る少女に、私はついつい悪戯心を抑えられなかった。
「おやおや。悪魔だなんて恐ろしい」
「とぼけないで」
「とぼけてなどいませんよ。いったい私のどこが、そんな恐ろしいものに見えるというのですか?」
「匂いよ」
少女の返答に、私は虚をつかれた。
「え?」
「匂い。あなた、人間じゃない匂いがするの」
私はポカンとした表情で少女を見つめた。
すると、突然その少女が笑い出した。
「ちょっと、やだ。何、その間の抜けた顔」
「えっ?」
「やだ。あなたって、きっとすごく下っ端の悪魔なのね。正体を見破られたくらいで、そんなに驚いちゃって」
「は?」
「でも、大丈夫、安心して。いくら悪魔だからって、問答無用でいきなり退治したりはしないから」
驚かせてごめんね。
そう言って、けらけらと声を上げて笑う少女を、私は心底呆れて眺めていた。
それがメリッサだった。
「あなた、名前は何ていうの?」
少女にそう尋ねられて、
「私はアス――」
私は自分の名前を言いかけて、咄嗟に口をつぐんだ。私のことを下級悪魔だと思い込んでいる彼女に、本名をそのまま伝えるわけにはいかないと思ったのだ。
「何?」
「私の名前はアス……ト。そう、アストと言うんです」
「ふうん、やっぱり聞いた事のない名前ね。あと二文字違ったら、あの悪名高き大悪魔と同じ名前なのに。残念ね」
そんなことを言って屈託なく笑う。
