7th. Melissa
やんわりとカイトの言葉を遮って、アストは白い小さな花をつけたライムグリーンの葉にそっと顔を近づけた。かすかにレモンの香りがする。
「これはレモンバーム。別名を『メリッサ』というのだよね」
「へえ、『メリッサ』か。なんだか女の子の名前みたいだね」
「そうだね。昔、私の知り合いに、この花と同じ名前を持つ女性がいたよ」
無邪気に言うカイトに、アストは何とも表現しがたい笑顔を見せた。
そんなアストを見て、カイトは不思議に思い、傍らのラエルを振り返った。しかしラエルは何も言わない。ただアストとよく似たほほ笑みを浮かべただけだった。
カイトは花瓶からタッジーマッジーを引き抜くと、それをアストへ差し出した。
「これ、アストにあげるよ」
「え?」
「お茶にもお料理にも使えるスグレモノだしさ。良かったらもらってよ、アスト」
アストは驚いてカイトの琥珀色の瞳を見つめていたが、やがて、
「ありがとう、カイト」
タッジーマッジーを両手で大切そうに受け取った。
ラエルが淹れてくれたスペシャルブレンドのコーヒーを飲みながら、アストはカイトからもらったタッジーマッジーを眺めていた。
朝一番に詰まれたハーブたちはどれも活き活きとして、爽やかな芳香を漂わせている。
(そう言えば、あの子もよくこんなものを作っていたな)
様々なハーブの香りと共に思い出される明るい笑顔。
今はもう遠いその笑顔を思い出して、くすりと声を立てて笑った。
「どうかしたの?」
不思議そうに尋ねてくるカイトに、アストはゆっくりと視線をうつすと、静かな口調で話し出した。
「この花束を見て、さっき言った女性のことを思い出していたのだよ」
「ああ、昔知り合いだったっていうメリッサさん?」
「そう」
アストはもう一度タッジーマッジーを手に取ると、やわらかな緑の葉に顔を押し当てた。
そして目を閉じると、その香りを思い切り吸い込んだ。
(メリッサ……)
アストはずいぶん昔に、これと同じような花束を自分にくれた女性を思い出していた。
思い出の中の彼女は、いつも出会った頃の少女の姿をしている。黒一色のシンプルな服を身にまとい、それなのに内から湧き出る魅力で七色のプリズムのように輝いていた女の子。
「これはレモンバーム。別名を『メリッサ』というのだよね」
「へえ、『メリッサ』か。なんだか女の子の名前みたいだね」
「そうだね。昔、私の知り合いに、この花と同じ名前を持つ女性がいたよ」
無邪気に言うカイトに、アストは何とも表現しがたい笑顔を見せた。
そんなアストを見て、カイトは不思議に思い、傍らのラエルを振り返った。しかしラエルは何も言わない。ただアストとよく似たほほ笑みを浮かべただけだった。
カイトは花瓶からタッジーマッジーを引き抜くと、それをアストへ差し出した。
「これ、アストにあげるよ」
「え?」
「お茶にもお料理にも使えるスグレモノだしさ。良かったらもらってよ、アスト」
アストは驚いてカイトの琥珀色の瞳を見つめていたが、やがて、
「ありがとう、カイト」
タッジーマッジーを両手で大切そうに受け取った。
ラエルが淹れてくれたスペシャルブレンドのコーヒーを飲みながら、アストはカイトからもらったタッジーマッジーを眺めていた。
朝一番に詰まれたハーブたちはどれも活き活きとして、爽やかな芳香を漂わせている。
(そう言えば、あの子もよくこんなものを作っていたな)
様々なハーブの香りと共に思い出される明るい笑顔。
今はもう遠いその笑顔を思い出して、くすりと声を立てて笑った。
「どうかしたの?」
不思議そうに尋ねてくるカイトに、アストはゆっくりと視線をうつすと、静かな口調で話し出した。
「この花束を見て、さっき言った女性のことを思い出していたのだよ」
「ああ、昔知り合いだったっていうメリッサさん?」
「そう」
アストはもう一度タッジーマッジーを手に取ると、やわらかな緑の葉に顔を押し当てた。
そして目を閉じると、その香りを思い切り吸い込んだ。
(メリッサ……)
アストはずいぶん昔に、これと同じような花束を自分にくれた女性を思い出していた。
思い出の中の彼女は、いつも出会った頃の少女の姿をしている。黒一色のシンプルな服を身にまとい、それなのに内から湧き出る魅力で七色のプリズムのように輝いていた女の子。
