6th. Dear friends

 「……ねえ、私、死ぬの?」
 少女が、誰に言うともなくぼんやりと尋ねると、
 「いいえ。あなたは生きるのよ、絵梨香ちゃん」
 いきなり、見知らぬ少女が目の前に現れた。
 「誰?」
 少女――絵梨香が驚いて尋ねると、もうひとりの少女はにっこりとほほ笑みながら、絵梨香にくまのぬいぐるみを差し出した。
 絵梨香は不思議そうにそのぬいぐるみを受け取ると、その足に入った『М』の字の刺繍を見て、あっと声を上げた。これは、だいぶ前に絵梨香が作ったテディベアに間違いない。贈る相手のイニシャルを足の裏に縫い付けたのも、ほかならぬ絵梨香本人なのだから。
 「あなた、都子ちゃん?小学校のとき同級生だった、あの都子ちゃん?」
 「ええ、そうよ。私のこと、覚えていてくれたのね」
 都子は嬉しそうに笑った。
 「忘れるわけない。私、ずっと都子ちゃんに会いたかったんだもの」
 絵梨香の言葉に、都子は一瞬顔を強ばらせた。
 「そうだよね、絵梨香ちゃん、私のこと怒ってるよね」
 「え?」
 「だって、つまらないことで、グループのみんなと一緒に絵梨香ちゃんのこと無視したもの。本当は嫌だった、大好きな絵梨香ちゃんのこと無視したくなんかなかった。でも、私まで仲間外れにされるのが怖くて、つい一緒になって無視してしまったの」
 「都子ちゃん……」
 「あれからずっと後悔してた。弱くてずるい自分が許せなかった。ずっと絵梨香ちゃんに謝りたくて、私、あれからずっとずっと、絵梨香ちゃんのことを考えてた。絵梨香ちゃんがくれたこのテディベアに、いつかもう一度絵梨香ちゃんに会えるように、って毎日お願いしていたの」
 「……」
 都子の言葉に、絵梨香の瞳から涙がこぼれた。
 大人から見れば取るに足らないことかもしれないが、その出来事は長い間絵梨香を苦しめていた。みんなに無視された事ももちろんだが、親友だと思っていた都子に背を向けられたのが何より辛かった。
 でも、どうしてだろう。
 都子のことをとても恨んでいたはずなのに、今こうして都子を目の前にすると、不思議と怒りは薄れていった。ただ懐かしさと嬉しさだけがあった。
7/9ページ
いいね👍