1st.月の光のオルゴオル
彼がバス停にたどり着くと、そこには思いがけない人物が立っていた。
「どうして君がここに?」
心底驚く彼に、
「工房の人から聞いて、あなたの後を追いかけてきたの」
彼女は俯きながらこたえた。
そして彼が何か言おうとすると、顔を上げて、遮るように言葉を紡いだ。
「昨日あなたは何も言ってくれなかった、引き止めてもくれなかった。だからもう私のこと好きじゃないんだって、あきらめようと思ったの。けれど、やっぱり私はあなたが好き。両親に何と言われようと、あなたに何と思われようと、私、あなたと別れたくない。あなたにずっとついていくわ」
頬を染め、涙ぐみながらそう告げる彼女に、彼はますます驚き、じっと彼女を見つめた。彼女も黙って彼を見つめている。
それから、彼は小さなため息を一つ吐き出すと、まっすぐに彼女の目を見て言った。
「君と別れるなんて、僕は考えたことすらない」
「本当に?」
涙で濡れた瞳が揺れている。
もうこれ以上、彼女を不安にさせるのは嫌だった。
「僕も君が好きだよ。……結婚しよう」
きっぱり告げると、彼女は彼の肩に顔を埋めて、泣きながら、
「はい」
力強く頷いた。
しばらくしてM市行きのバスがやってくると、二人はしっかりと手をつなぎ、ほほえみ合いながらバスに乗り込んだ。
「さて、と」
恋人たちを乗せたバスが走り去る頃、老紳士はカウンターから立ち上がり、扉のほうをゆっくりと振り向いた。
「残念だが」
そうつぶやく彼は、すっかりその姿を変えていた。
白い肌と太陽のように輝く金色の髪、青い花のような瞳の青年。その背中には、大きくて真っ白な翼が生えていた。
「私もそろそろ行かねばならない」
天使の言葉に、カイトはさっと顔を曇らせる。
「お願い、もう少しだけ待ってよ」
天使は困ったようにカイトを見つめる。
「ほんの少しでいい。せめて一目だけでも、彼と父親を会わせてあげてくれないかな」
カイトの訴えに、しかし天使は首を横に振る。
「カイト、これは決まりなんだ。死に行く人々の魂を天上へ導くのが、告死天使である私の役目なんだよ」
天使の容赦ない言葉に、カイトは悲しそうに俯いた。
「どうして君がここに?」
心底驚く彼に、
「工房の人から聞いて、あなたの後を追いかけてきたの」
彼女は俯きながらこたえた。
そして彼が何か言おうとすると、顔を上げて、遮るように言葉を紡いだ。
「昨日あなたは何も言ってくれなかった、引き止めてもくれなかった。だからもう私のこと好きじゃないんだって、あきらめようと思ったの。けれど、やっぱり私はあなたが好き。両親に何と言われようと、あなたに何と思われようと、私、あなたと別れたくない。あなたにずっとついていくわ」
頬を染め、涙ぐみながらそう告げる彼女に、彼はますます驚き、じっと彼女を見つめた。彼女も黙って彼を見つめている。
それから、彼は小さなため息を一つ吐き出すと、まっすぐに彼女の目を見て言った。
「君と別れるなんて、僕は考えたことすらない」
「本当に?」
涙で濡れた瞳が揺れている。
もうこれ以上、彼女を不安にさせるのは嫌だった。
「僕も君が好きだよ。……結婚しよう」
きっぱり告げると、彼女は彼の肩に顔を埋めて、泣きながら、
「はい」
力強く頷いた。
しばらくしてM市行きのバスがやってくると、二人はしっかりと手をつなぎ、ほほえみ合いながらバスに乗り込んだ。
「さて、と」
恋人たちを乗せたバスが走り去る頃、老紳士はカウンターから立ち上がり、扉のほうをゆっくりと振り向いた。
「残念だが」
そうつぶやく彼は、すっかりその姿を変えていた。
白い肌と太陽のように輝く金色の髪、青い花のような瞳の青年。その背中には、大きくて真っ白な翼が生えていた。
「私もそろそろ行かねばならない」
天使の言葉に、カイトはさっと顔を曇らせる。
「お願い、もう少しだけ待ってよ」
天使は困ったようにカイトを見つめる。
「ほんの少しでいい。せめて一目だけでも、彼と父親を会わせてあげてくれないかな」
カイトの訴えに、しかし天使は首を横に振る。
「カイト、これは決まりなんだ。死に行く人々の魂を天上へ導くのが、告死天使である私の役目なんだよ」
天使の容赦ない言葉に、カイトは悲しそうに俯いた。
