5.Change the world
二十代半ばくらいの黒髪の店員と、やっと成人を迎えるか迎えないかという年頃のこげ茶色の髪に灰青色の瞳をした少年。察するに、黒髪の方がこの店の主で、こげ茶髪の少年はアルバイトか店主の弟だろう。よく見ると、二人ともどことなく顔立ちというか雰囲気が似ている気がする。
「カウンター席でよろしいでしょうか?」
「ああ、全然構いませんよ」
黒髪の店主に頷いてから、コートと荷物を置いて、カウンター席に腰掛ける。
改めて店内を眺めると、想像とは違い、とても感じの良い店だった。
店内にはコーヒーの香りと清潔な空気が流れていて、カウンター席とボックス席には併せて三人ほどのお客もいる。年配の優しそうな紳士と可愛いらしい顔をした子供がボックス席に座り、カウンター席にはインテリ風の美人が一人で座っていた。
店の造りは小さいが、落ち着きのある上品で瀟洒な印象を受ける。
入り口の扉だけではなく、壁に取り付けられた飾り棚もカウンターも、カウンターの横にあるショウケースもすべて木製で、立ち込めるコーヒーの香りの中に、時々清々しい木の香りが混ざる。
飾り棚の中には花や鳥の柄が描いてあるカップや食器類と綺麗なカッティングが施されているグラスが整然と並べられており、テーブルの上に置かれた花びらの形のランプからは柔らかな光が漏れている。大きなソーダガラスが嵌め込まれたショウケースの中には、売り物らしい雑貨がいくつか並んでいるが、どれもアンティーク調の趣味の良い物だった。
家で待っている妻と娘に、何か小さなお土産を買って帰りたいと考えながら、陽一郎はメニューを見ずにさっさと注文を済ませる。
「ダージリンをください」
陽一郎はコーヒーを好まないため、紅茶を頼む事にした。
コーヒーの香りは好きなのだが、独特の苦みがどうしても口に合わない。その代わり紅茶は好きで、その中でもダージリンは季節毎の茶葉を楽しむほど好んで飲んでいた。
「かしこまりました。この時季ですので、オータムナルはいかがでしょうか」
「へえ、ずいぶん早いな。オータムナルが出回るのは、十二月になってからだと思っていたのに」
陽一郎が言うと、黒髪の店主はにこりと微笑んだ。
琥珀色の瞳が、何とも印象的な青年だ。
「ちょうど今日、入荷したばかりなんです。ですから、今年のオータムナルをお出しする最初のお客様になります」
そう聞いては、紅茶好きとして頼まないわけにはいかないだろう。
「カウンター席でよろしいでしょうか?」
「ああ、全然構いませんよ」
黒髪の店主に頷いてから、コートと荷物を置いて、カウンター席に腰掛ける。
改めて店内を眺めると、想像とは違い、とても感じの良い店だった。
店内にはコーヒーの香りと清潔な空気が流れていて、カウンター席とボックス席には併せて三人ほどのお客もいる。年配の優しそうな紳士と可愛いらしい顔をした子供がボックス席に座り、カウンター席にはインテリ風の美人が一人で座っていた。
店の造りは小さいが、落ち着きのある上品で瀟洒な印象を受ける。
入り口の扉だけではなく、壁に取り付けられた飾り棚もカウンターも、カウンターの横にあるショウケースもすべて木製で、立ち込めるコーヒーの香りの中に、時々清々しい木の香りが混ざる。
飾り棚の中には花や鳥の柄が描いてあるカップや食器類と綺麗なカッティングが施されているグラスが整然と並べられており、テーブルの上に置かれた花びらの形のランプからは柔らかな光が漏れている。大きなソーダガラスが嵌め込まれたショウケースの中には、売り物らしい雑貨がいくつか並んでいるが、どれもアンティーク調の趣味の良い物だった。
家で待っている妻と娘に、何か小さなお土産を買って帰りたいと考えながら、陽一郎はメニューを見ずにさっさと注文を済ませる。
「ダージリンをください」
陽一郎はコーヒーを好まないため、紅茶を頼む事にした。
コーヒーの香りは好きなのだが、独特の苦みがどうしても口に合わない。その代わり紅茶は好きで、その中でもダージリンは季節毎の茶葉を楽しむほど好んで飲んでいた。
「かしこまりました。この時季ですので、オータムナルはいかがでしょうか」
「へえ、ずいぶん早いな。オータムナルが出回るのは、十二月になってからだと思っていたのに」
陽一郎が言うと、黒髪の店主はにこりと微笑んだ。
琥珀色の瞳が、何とも印象的な青年だ。
「ちょうど今日、入荷したばかりなんです。ですから、今年のオータムナルをお出しする最初のお客様になります」
そう聞いては、紅茶好きとして頼まないわけにはいかないだろう。
