3.The end of the world
その日から、愛音はその仔猫の事が気になって仕方がなかった。
朝起きてすぐと会社の昼休み、家に帰宅してからと就寝前に、一日に何回も動物病院のホームページをチェックした。ほかの仔猫たちがどんどん里親が決まっていくのに、その仔猫だけは相変わらず何の変化もなかった。
そうやってひと月が過ぎようとした時、愛音は不思議な夢を見た。
夢の中に沙羅が現れたのだ。
あんなに毎日、夢でもいいから逢いたいと願っても出て来てくれなかった沙羅に、やっと会う事が出来た。愛音は嬉しくて、夢中で沙羅の名前を呼んだ。
「沙羅。沙羅」
愛音が呼ぶと、沙羅は顔を上げて愛音を見つめてきた。
「沙羅!」
もう一度、想いを込めて名前を呼ぶ。
沙羅はゆったり目を細めると、俄 かに後ろを振り返った。
「ンキャ」
沙羅の背後から、蚊の鳴くような小さくてか細い声がした。
声とともに沙羅の背後からひょっこり姿を現したのは、錆柄の小さな仔猫だった。瘦せこけた体をプルプル震わせながら、大きく目を見開いて愛音を見上げている。
真ん丸な金色の目が満月のようだと思いながら、愛音は思わず仔猫を見つめ返した。
仔猫と愛音の視線がぶつかる。
「あ――」
愛音が声を出した途端、夢から醒めた。
慌てて飛び起きる。
真夜中のはずなのに妙に明るい。
窓の方へ顔を向けると、ほんの少し開いたカーテンの隙間から満月が見えた。
「沙羅……」
呟きと一緒に大粒の涙が零れ落ちた。
やっと逢えた。そう思ったのに、あまりにも短い逢瀬だった。
それに、沙羅の傍にいた仔猫の事が気になる。
「あの子、例のサビちゃんだよね」
毎日のように気に掛けていたから、あの仔猫まで一緒に夢に出てきたのだろうか。
何だか眠れなくなってしまい、仕方なく寝室を抜け出した。
台所に行って水でも飲もうかと思っていたが、母親の寝室から明かりが漏れている事に気が付く。大きな音を立てないように気を付けながら、そっとドアを叩いた。
「お母さん、眠れないの?」
声を掛けると返事がしたのでドアを開けて中に入る。
母親はぼんやりした顔で、ベッドの上に座っていた。
「どうしたの?」
心配になって、隣に腰掛ける。
朝起きてすぐと会社の昼休み、家に帰宅してからと就寝前に、一日に何回も動物病院のホームページをチェックした。ほかの仔猫たちがどんどん里親が決まっていくのに、その仔猫だけは相変わらず何の変化もなかった。
そうやってひと月が過ぎようとした時、愛音は不思議な夢を見た。
夢の中に沙羅が現れたのだ。
あんなに毎日、夢でもいいから逢いたいと願っても出て来てくれなかった沙羅に、やっと会う事が出来た。愛音は嬉しくて、夢中で沙羅の名前を呼んだ。
「沙羅。沙羅」
愛音が呼ぶと、沙羅は顔を上げて愛音を見つめてきた。
「沙羅!」
もう一度、想いを込めて名前を呼ぶ。
沙羅はゆったり目を細めると、
「ンキャ」
沙羅の背後から、蚊の鳴くような小さくてか細い声がした。
声とともに沙羅の背後からひょっこり姿を現したのは、錆柄の小さな仔猫だった。瘦せこけた体をプルプル震わせながら、大きく目を見開いて愛音を見上げている。
真ん丸な金色の目が満月のようだと思いながら、愛音は思わず仔猫を見つめ返した。
仔猫と愛音の視線がぶつかる。
「あ――」
愛音が声を出した途端、夢から醒めた。
慌てて飛び起きる。
真夜中のはずなのに妙に明るい。
窓の方へ顔を向けると、ほんの少し開いたカーテンの隙間から満月が見えた。
「沙羅……」
呟きと一緒に大粒の涙が零れ落ちた。
やっと逢えた。そう思ったのに、あまりにも短い逢瀬だった。
それに、沙羅の傍にいた仔猫の事が気になる。
「あの子、例のサビちゃんだよね」
毎日のように気に掛けていたから、あの仔猫まで一緒に夢に出てきたのだろうか。
何だか眠れなくなってしまい、仕方なく寝室を抜け出した。
台所に行って水でも飲もうかと思っていたが、母親の寝室から明かりが漏れている事に気が付く。大きな音を立てないように気を付けながら、そっとドアを叩いた。
「お母さん、眠れないの?」
声を掛けると返事がしたのでドアを開けて中に入る。
母親はぼんやりした顔で、ベッドの上に座っていた。
「どうしたの?」
心配になって、隣に腰掛ける。
