3.The end of the world
バスの座席に腰を下ろし、愛音 は祈るような気持ちで窓の外の景色を見つめていた。
今度こそ『当たり』であってほしい。そう強く願いながら。
実のところ、愛音がこうして行き先の分からないバスに乗るのは、今回が初めてではなかった。
親しい友人、というより愛音にとってただ一人の親友から打ち明けられたとてもとても不思議な話。親友の話を聞いた時から、愛音はどうしてもその店を探さずにはいられなかった。
それは、誰も訪れないような緑深い山の中にある一軒の喫茶店の話だった。
親友によると、駅前で普通にバスに乗ったはずなのに、気が付くといつの間にか見慣れない山道を走っているのだという。疑問に思いつつ乗り続けているうちに、バスが進めば進むほど山はどんどん深くなっていく。一台の対向車ともすれ違わない事に不安を感じ始める頃、やっと終点が近づいてくるらしい。
終点には寂れたバス停と同じくらい古ぼけた木のベンチがあり、辺りには人家の影も気配もない。折り返して戻ろうとしても、乗ってきたバスは回送になるから降りてほしいと運転手に断られてしまう。
こんな山の中でどうしたらいいのか戸惑っていると、運転手から、次のバスの到着時刻まで近くにある喫茶店で時間を潰してはどうかと提案されるのだそうだ。
その勧めに従い、バス停の向かい側にある細い林道に沿ってしばらく歩く。
やがて木々の中に埋もれるように建っている赤いレンガ造りの小さな建物が見えてくる。その建物の入り口には大きな木製の扉があり、上半分にステンドグラスが嵌め込まれている。
ステンドグラスは変わった絵柄で、建物とよく似たレンガ造りの家屋の前に、一匹の黒猫が座っているというものだそうだ。まるで訪れたものを出迎えるように、琥珀色の瞳をまっすぐこちらへ向け、行儀よく両手を揃えて座っている。
黒猫の背後には、可愛らしい人形のオーナメントが飾り付けてあるクリスマスツリーがあり、足元には、向かって右側にオルゴールの木箱、左側には茶色いテディベアが置いてある。それらを囲むように、四つ角にはそれぞれ、黄色いタンポポ、白いライラック、オレンジ色の薔薇、桜色の貝殻と色とりどりのシーグラスの飾り枠が配されている。
木の扉の両脇には、色とりどりの花たちが寄せ植えされた大きな鉢植えが置かれ、更に建物の左右の花壇にもたくさんの花が植えてある。花壇は薔薇やラベンダーを中心に、季節の草花が地面を覆うように咲くように造られている。建物と花壇を囲むようにローズマリーがこんもりとした生け垣になっていて、風が吹くたびに爽やかな香りが辺り一面に漂う。
今度こそ『当たり』であってほしい。そう強く願いながら。
実のところ、愛音がこうして行き先の分からないバスに乗るのは、今回が初めてではなかった。
親しい友人、というより愛音にとってただ一人の親友から打ち明けられたとてもとても不思議な話。親友の話を聞いた時から、愛音はどうしてもその店を探さずにはいられなかった。
それは、誰も訪れないような緑深い山の中にある一軒の喫茶店の話だった。
親友によると、駅前で普通にバスに乗ったはずなのに、気が付くといつの間にか見慣れない山道を走っているのだという。疑問に思いつつ乗り続けているうちに、バスが進めば進むほど山はどんどん深くなっていく。一台の対向車ともすれ違わない事に不安を感じ始める頃、やっと終点が近づいてくるらしい。
終点には寂れたバス停と同じくらい古ぼけた木のベンチがあり、辺りには人家の影も気配もない。折り返して戻ろうとしても、乗ってきたバスは回送になるから降りてほしいと運転手に断られてしまう。
こんな山の中でどうしたらいいのか戸惑っていると、運転手から、次のバスの到着時刻まで近くにある喫茶店で時間を潰してはどうかと提案されるのだそうだ。
その勧めに従い、バス停の向かい側にある細い林道に沿ってしばらく歩く。
やがて木々の中に埋もれるように建っている赤いレンガ造りの小さな建物が見えてくる。その建物の入り口には大きな木製の扉があり、上半分にステンドグラスが嵌め込まれている。
ステンドグラスは変わった絵柄で、建物とよく似たレンガ造りの家屋の前に、一匹の黒猫が座っているというものだそうだ。まるで訪れたものを出迎えるように、琥珀色の瞳をまっすぐこちらへ向け、行儀よく両手を揃えて座っている。
黒猫の背後には、可愛らしい人形のオーナメントが飾り付けてあるクリスマスツリーがあり、足元には、向かって右側にオルゴールの木箱、左側には茶色いテディベアが置いてある。それらを囲むように、四つ角にはそれぞれ、黄色いタンポポ、白いライラック、オレンジ色の薔薇、桜色の貝殻と色とりどりのシーグラスの飾り枠が配されている。
木の扉の両脇には、色とりどりの花たちが寄せ植えされた大きな鉢植えが置かれ、更に建物の左右の花壇にもたくさんの花が植えてある。花壇は薔薇やラベンダーを中心に、季節の草花が地面を覆うように咲くように造られている。建物と花壇を囲むようにローズマリーがこんもりとした生け垣になっていて、風が吹くたびに爽やかな香りが辺り一面に漂う。
