2.Home, Sweet Home
話し終えたお客は、長い長い息を吐いた。
それから、土色のコーヒーカップを愛しそうに両手で撫でた。
「永遠に続くものなんて、この世にはありません。生き物も建物も、いつか役目を終えて、土に還って行くのです。それが自然の摂理というものです」
落ちついた声で、そんな事を言う。
「だから、悲しいとは思いません。ただ……」
お客は顔を上げて、カイトとハルの顔をじっと見た。
深く不思議な色の瞳は、二人を通していったい何を見ているのだろう。
ハルは思わず食い入るようにその瞳を見つめた。もう少しで、そこにあるはずの答えが見えるような気がしたから。
(悲しい?寂しい?いや、違うな。そうじゃない)
ハルがそう思った途端、お客はふと笑みを漏らすと、あっさり視線を外してしまった。
そのまま視線を動かして、今更ながら店内の様子をしみじみ眺める。
決して広くはないが、木材をふんだんに使った心地好い空間。入り口の扉だけでなく、飾り棚もカウンターも、カウンターの横に置いてあるショウケースも、すべて木製のレトロな雰囲気のものばかりだ。
飾り棚の中に並べられているのは、花や鳥の柄が描いてあるカップや綺麗なカッティングが施されているグラス類。テーブルの上に所々置かれた花びらの形のランプが放つ柔らかな光。入り口付近の床には、扉に嵌め込まれたステンドグラスの色彩が、まるで虹のように映し出されている。
この店に来るのは初めてのはずなのに、どこか懐かしい感じがするのは何故だろう。
置かれている家具や小物の数々、店の中に漂うコーヒーと木の香り。窓から差し込む薄い陽光。建物を取り囲むようにして咲く色とりどりの花々。
目を閉じれば、遠い昔に時間が巻き戻されたような、そんな感覚に陥る。
ひどく懐かしい。同時に、狂おしいくらい切ない気持ちになる。
「一つだけお願いがあります」
視線をショウケースに向けたまま、お客は言った。
大きなソーダガラスが嵌め込まれたショウケースの中にはいくつかの雑貨が並んでいるが、お客はそれらの品ひとつひとつに丁寧に視線を巡らせた。
「何でしょうか?」
カイトが訊くと、お客はやっと二人へ向き直った。
「コーヒーを淹れていただいたカップ、これをあのショウケースに飾っていただけないでしょうか?」
唐突な申し出にハルは驚いたが、カイトは微塵も動じる気配はなく、静かにお客の次の言葉を待った。
それから、土色のコーヒーカップを愛しそうに両手で撫でた。
「永遠に続くものなんて、この世にはありません。生き物も建物も、いつか役目を終えて、土に還って行くのです。それが自然の摂理というものです」
落ちついた声で、そんな事を言う。
「だから、悲しいとは思いません。ただ……」
お客は顔を上げて、カイトとハルの顔をじっと見た。
深く不思議な色の瞳は、二人を通していったい何を見ているのだろう。
ハルは思わず食い入るようにその瞳を見つめた。もう少しで、そこにあるはずの答えが見えるような気がしたから。
(悲しい?寂しい?いや、違うな。そうじゃない)
ハルがそう思った途端、お客はふと笑みを漏らすと、あっさり視線を外してしまった。
そのまま視線を動かして、今更ながら店内の様子をしみじみ眺める。
決して広くはないが、木材をふんだんに使った心地好い空間。入り口の扉だけでなく、飾り棚もカウンターも、カウンターの横に置いてあるショウケースも、すべて木製のレトロな雰囲気のものばかりだ。
飾り棚の中に並べられているのは、花や鳥の柄が描いてあるカップや綺麗なカッティングが施されているグラス類。テーブルの上に所々置かれた花びらの形のランプが放つ柔らかな光。入り口付近の床には、扉に嵌め込まれたステンドグラスの色彩が、まるで虹のように映し出されている。
この店に来るのは初めてのはずなのに、どこか懐かしい感じがするのは何故だろう。
置かれている家具や小物の数々、店の中に漂うコーヒーと木の香り。窓から差し込む薄い陽光。建物を取り囲むようにして咲く色とりどりの花々。
目を閉じれば、遠い昔に時間が巻き戻されたような、そんな感覚に陥る。
ひどく懐かしい。同時に、狂おしいくらい切ない気持ちになる。
「一つだけお願いがあります」
視線をショウケースに向けたまま、お客は言った。
大きなソーダガラスが嵌め込まれたショウケースの中にはいくつかの雑貨が並んでいるが、お客はそれらの品ひとつひとつに丁寧に視線を巡らせた。
「何でしょうか?」
カイトが訊くと、お客はやっと二人へ向き直った。
「コーヒーを淹れていただいたカップ、これをあのショウケースに飾っていただけないでしょうか?」
唐突な申し出にハルは驚いたが、カイトは微塵も動じる気配はなく、静かにお客の次の言葉を待った。
