1.Over the Rainbow
もし。
もしも今、あの時に戻れるのなら、香奈は暢気に笑ってなどいなかっただろう。
誕生日もプレゼントも、そんなのどうでもいい。ただライラの事だけを考えて、最善策を取れたかもしれない。
いや、そうでなければならなかった。
あの時、本当は何よりも一番にライラの事を考えてあげなければいけなかったのだ。
それから半月もしないうちに、ライラの体に明らかな異変が起きた。
散歩の際、たまに右足を引き摺る様になったのだ。
心配した香奈が足を触ろうとすると身を捩って嫌がる。
それでも最初のうちは、遊んでいる時に怪我でもしたのかな、と軽く考えていた。だが、そうしているうちに、だんだんライラの食欲がなくなり、散歩をしてもすぐに家に帰りたがるようになった。
大好きだったフリスビーにも見向きもしなくなり、香奈の顔を見上げて切なそうな声で鳴く。右足を見ると、心なしか関節が腫れているようなので、急いで動物病院へ連れて行った。
獣医師の診断は『骨のがん』とも呼ばれる骨肉腫だった。そのうえ足を切断することを勧められて、香奈は目の前が真っ暗になった。
(噓でしょ?!)
ライラの足を切るなんて想像も出来ない。でも、このまま何もせずにいて、ライラに何かあったらどうしたらいいんだろう。
「足を切れば、ライラは助かるんですか?」
藁にも縋る思いで獣医師に尋ねると、帰って来たのはとても残酷な返事だった。
「大変お気の毒ですが、ライラちゃんの場合、すでに手遅れの状態になっています。足を切断しても、一年生きられるかどうかというところです」
「そんな――!」
香奈は言葉を失った。
ついこの間まで元気に走り回っていたライラ。
飛んで行くフリスビーを追いかけて、風のように走って行くライラの姿が思い浮かぶ。
食いしん坊で、走る事と遊ぶ事が大好きで、家族全員を笑顔にしてくれるお転婆な四女。それがライラだ。
それなのにライラの足を切る?しかも、それでも助からない?
何で?どうして?
何で?何で?何で?!
頭の中はぐるぐると混乱しているのに、
「じゃあ、手術したって仕方ないじゃありませんか」
自分でも驚くほど低くて落ち着いた声が、香奈の口から零れ出た。
「足を切っても助からないなら、手術したって意味ないじゃないですか。そんなのライラが可哀想です」
淡々と呟く。
もしも今、あの時に戻れるのなら、香奈は暢気に笑ってなどいなかっただろう。
誕生日もプレゼントも、そんなのどうでもいい。ただライラの事だけを考えて、最善策を取れたかもしれない。
いや、そうでなければならなかった。
あの時、本当は何よりも一番にライラの事を考えてあげなければいけなかったのだ。
それから半月もしないうちに、ライラの体に明らかな異変が起きた。
散歩の際、たまに右足を引き摺る様になったのだ。
心配した香奈が足を触ろうとすると身を捩って嫌がる。
それでも最初のうちは、遊んでいる時に怪我でもしたのかな、と軽く考えていた。だが、そうしているうちに、だんだんライラの食欲がなくなり、散歩をしてもすぐに家に帰りたがるようになった。
大好きだったフリスビーにも見向きもしなくなり、香奈の顔を見上げて切なそうな声で鳴く。右足を見ると、心なしか関節が腫れているようなので、急いで動物病院へ連れて行った。
獣医師の診断は『骨のがん』とも呼ばれる骨肉腫だった。そのうえ足を切断することを勧められて、香奈は目の前が真っ暗になった。
(噓でしょ?!)
ライラの足を切るなんて想像も出来ない。でも、このまま何もせずにいて、ライラに何かあったらどうしたらいいんだろう。
「足を切れば、ライラは助かるんですか?」
藁にも縋る思いで獣医師に尋ねると、帰って来たのはとても残酷な返事だった。
「大変お気の毒ですが、ライラちゃんの場合、すでに手遅れの状態になっています。足を切断しても、一年生きられるかどうかというところです」
「そんな――!」
香奈は言葉を失った。
ついこの間まで元気に走り回っていたライラ。
飛んで行くフリスビーを追いかけて、風のように走って行くライラの姿が思い浮かぶ。
食いしん坊で、走る事と遊ぶ事が大好きで、家族全員を笑顔にしてくれるお転婆な四女。それがライラだ。
それなのにライラの足を切る?しかも、それでも助からない?
何で?どうして?
何で?何で?何で?!
頭の中はぐるぐると混乱しているのに、
「じゃあ、手術したって仕方ないじゃありませんか」
自分でも驚くほど低くて落ち着いた声が、香奈の口から零れ出た。
「足を切っても助からないなら、手術したって意味ないじゃないですか。そんなのライラが可哀想です」
淡々と呟く。
