1.Over the Rainbow
ライラと初めて会ったのは、香奈がまだ小学生の頃だった。
自宅の近くに出来た大型のホームセンター。そのペット売り場の一角に仔犬や仔猫を集めたガラスケースが並んだ広いスペースがあり、ライラはそこでほかの仔犬たちと一緒に売られていた。
トイプードルやマメシバなど小さくて可愛らしい犬種の中で、妙に目立つ白黒のブチ模様の仔犬。ほかの子たちが大人しくしているのに、一匹だけ元気に動き回っていたお転婆娘。それがライラだった。
「ボーダーコリーって、もともと牧羊犬でしょ。いっぱい運動させなくちゃならないのに、誰が面倒を見るの?」
母親の言葉に、香奈は頑なに首を振った。
「嫌だ。絶対にこの子が良い。名前ももう決めたの。『ライラ』って、この子にぴったりだと思わない?」
香奈が同意を求めても、母親も簡単には譲らない。
「駄目よ。お父さんもお母さんも毎日忙しいのに、犬のお散歩までしていられないもの。もっと飼いやすい種類の犬にしましょうよ」
「お散歩だったら、私がちゃんと連れて行くから。ねえ、お母さん、お願い」
香奈は真剣に訴えたが、こういう時の子供の言葉は大概信用されないのだ。
母親はうんざりしたように溜め息を吐き、頭を左右に大きく振った。
「そう言って、どうせお母さんに面倒を全部押し付けるんだから。犬を飼うのは良いけど、小さな室内犬にしましょう」
それでも香奈は諦めなかった。
結局、二週間ほど粘って、母親の方が根負けする形になった。姉と妹が香奈の味方になってくれたのも大きかった。
「ちゃんとみんなで面倒見なさいよ」
「分かってるよ。約束は守るから」
こうしてライラは香奈たちの家族になったのだった。
香奈と姉と妹は母親との約束をちゃんと守り、三人で順番にライラのお散歩を担当した。尤 も香奈は順番など関係なく、時間さえあればライラと一緒に近所のドッグランに出かけて行ったけれど。
「行くよ、ライラ」
香奈が声を掛けると、
「ワンッ!」
ライラは元気良く返事をして、香奈が投げたフリスビーを追いかけて行く。
フリスビーは綺麗な軌道を描いて驚くほど遠くまで飛んで行ったが、ライラは素早く追いつくと、空中で見事にキャッチしてみせる。そういう時のライラはとても格好良くて、さすが牧羊犬だと感心させられた。
自宅の近くに出来た大型のホームセンター。そのペット売り場の一角に仔犬や仔猫を集めたガラスケースが並んだ広いスペースがあり、ライラはそこでほかの仔犬たちと一緒に売られていた。
トイプードルやマメシバなど小さくて可愛らしい犬種の中で、妙に目立つ白黒のブチ模様の仔犬。ほかの子たちが大人しくしているのに、一匹だけ元気に動き回っていたお転婆娘。それがライラだった。
「ボーダーコリーって、もともと牧羊犬でしょ。いっぱい運動させなくちゃならないのに、誰が面倒を見るの?」
母親の言葉に、香奈は頑なに首を振った。
「嫌だ。絶対にこの子が良い。名前ももう決めたの。『ライラ』って、この子にぴったりだと思わない?」
香奈が同意を求めても、母親も簡単には譲らない。
「駄目よ。お父さんもお母さんも毎日忙しいのに、犬のお散歩までしていられないもの。もっと飼いやすい種類の犬にしましょうよ」
「お散歩だったら、私がちゃんと連れて行くから。ねえ、お母さん、お願い」
香奈は真剣に訴えたが、こういう時の子供の言葉は大概信用されないのだ。
母親はうんざりしたように溜め息を吐き、頭を左右に大きく振った。
「そう言って、どうせお母さんに面倒を全部押し付けるんだから。犬を飼うのは良いけど、小さな室内犬にしましょう」
それでも香奈は諦めなかった。
結局、二週間ほど粘って、母親の方が根負けする形になった。姉と妹が香奈の味方になってくれたのも大きかった。
「ちゃんとみんなで面倒見なさいよ」
「分かってるよ。約束は守るから」
こうしてライラは香奈たちの家族になったのだった。
香奈と姉と妹は母親との約束をちゃんと守り、三人で順番にライラのお散歩を担当した。
「行くよ、ライラ」
香奈が声を掛けると、
「ワンッ!」
ライラは元気良く返事をして、香奈が投げたフリスビーを追いかけて行く。
フリスビーは綺麗な軌道を描いて驚くほど遠くまで飛んで行ったが、ライラは素早く追いつくと、空中で見事にキャッチしてみせる。そういう時のライラはとても格好良くて、さすが牧羊犬だと感心させられた。
