1.Over the Rainbow
最初に目に飛び込んできたのは、建物のサイズに対してずいぶん大きな木製の扉で、上半分にステンドグラスが嵌め込んである。この建物とそっくりなレンガ造りの家屋の前に、二匹の猫が横向きに座っているという変わった絵柄だ。
向かって左側には、琥珀色の瞳をした全身真っ黒な猫。右側には、シャム猫に似た模様をした毛足の長い猫。
「これって、たぶん『ラグドール』だよね」
猫好きな友達が飼っていたのが『ラグドール』という種類の猫で、右側の猫とよく似ていた。
そのラグドールと黒猫が、赤レンガの建物の前で背中合わせに座っている。描かれているのはたったそれだけで、ほかには飾りも花の一つもない。何とも風変わりなステンドグラスだった。
扉を挟んだ両脇には大きな鉢植えが置かれ、デルフィニウムやネメシア、金魚草など春から夏にかけて咲く花たちが綺麗に寄せ植えされている。白や黄色、淡いピンクなどの優しい色合いで、見ているだけで心が癒されるような気がする。
建物の左右の花壇にもたくさんの花が植えてある。
こちらにはネモフィラが地面を覆うように咲いていた。本来なら疾 うに花の時季を過ぎているはずなのだが、山奥の冷涼な気候のせいか、明るい空色の花弁は生き生きとしてまさに今が盛りだ。
ネモフィラの背後では薔薇やラベンダーが咲き始め、少し開いた蕾から芳香を放ち、まっすぐに背を伸ばしたジギタリスが、釣り鐘型の花を茎の上から下までびっしりと咲かせていた。それらを囲むようにローズマリーが緑の生け垣になっている。
甘やかな花の香りとハーブの爽やかな香りが、風が吹くたびにふわりと漂う。
独特の香りにどこか懐かしさを覚えながら、こんな風に数多くの花を見るのは久しぶりだと思い当たった。家と学校とアルバイト先を行き来するだけの毎日の中で、今の香奈には花など見る余裕はなかった。
「綺麗……」
美しい光景に、思わず吐息が漏れてしまう。
色とりどりの花に包まれたレンガ造りの建物。まるでイギリスの田舎にあるような、或いはおとぎ話にでも出てくるような雰囲気だ。いかにも女の子受けしそうな店構えだった。
(でも、なんでこんな山の中にあるわけ?)
不思議に思いながら扉の上を見ると、素朴な木の看板が掛けてあり、『喫茶・雑貨 猫目堂』と書かれていた。なるほど名前も可愛らしい。
「本当にあったんだ、喫茶店」
運転手の言葉を思い出し、今更ながら驚く。
向かって左側には、琥珀色の瞳をした全身真っ黒な猫。右側には、シャム猫に似た模様をした毛足の長い猫。
「これって、たぶん『ラグドール』だよね」
猫好きな友達が飼っていたのが『ラグドール』という種類の猫で、右側の猫とよく似ていた。
そのラグドールと黒猫が、赤レンガの建物の前で背中合わせに座っている。描かれているのはたったそれだけで、ほかには飾りも花の一つもない。何とも風変わりなステンドグラスだった。
扉を挟んだ両脇には大きな鉢植えが置かれ、デルフィニウムやネメシア、金魚草など春から夏にかけて咲く花たちが綺麗に寄せ植えされている。白や黄色、淡いピンクなどの優しい色合いで、見ているだけで心が癒されるような気がする。
建物の左右の花壇にもたくさんの花が植えてある。
こちらにはネモフィラが地面を覆うように咲いていた。本来なら
ネモフィラの背後では薔薇やラベンダーが咲き始め、少し開いた蕾から芳香を放ち、まっすぐに背を伸ばしたジギタリスが、釣り鐘型の花を茎の上から下までびっしりと咲かせていた。それらを囲むようにローズマリーが緑の生け垣になっている。
甘やかな花の香りとハーブの爽やかな香りが、風が吹くたびにふわりと漂う。
独特の香りにどこか懐かしさを覚えながら、こんな風に数多くの花を見るのは久しぶりだと思い当たった。家と学校とアルバイト先を行き来するだけの毎日の中で、今の香奈には花など見る余裕はなかった。
「綺麗……」
美しい光景に、思わず吐息が漏れてしまう。
色とりどりの花に包まれたレンガ造りの建物。まるでイギリスの田舎にあるような、或いはおとぎ話にでも出てくるような雰囲気だ。いかにも女の子受けしそうな店構えだった。
(でも、なんでこんな山の中にあるわけ?)
不思議に思いながら扉の上を見ると、素朴な木の看板が掛けてあり、『喫茶・雑貨 猫目堂』と書かれていた。なるほど名前も可愛らしい。
「本当にあったんだ、喫茶店」
運転手の言葉を思い出し、今更ながら驚く。
