心配性なノボリさん

  • ちょうど昼休憩時、
    ノボリのライブキャスターが鳴った。
    キョウヘイからの通話だ。

  • ノボリ

    はい
    ノボリでございます

  • キョウヘイ

    ノボリさん!
    きのみいりませんか?
    めっちゃ実ってる
    穴場エリア見つけた
    んだ!

  • ノボリ

    きのみですか!
    ありがとうございます!
    ヤチェの実をよく
    使いますので
    もしありましたら
    分けていただけますか

  • キョウヘイ

    了解です
    探してみますね

    おーいメイー!
    ヤチェの実ってあるー?

  • ノボリ

    ……!
    メイ様もそちらに?

  • キョウヘイ

    あ、うん
    一緒にいるぜ

  • キョウヘイはライブキャスターをメイがいる方に向けた。
    相棒ジャローダに乗り、高い木に実るきのみを収穫しようとしているところだった。

  • キョウヘイ
  • ノボリ

    !?

  • キョウヘイ視点の、ローアングルで見上げている視点で映り、キュロットパンツの中が見えそうだ。
    ……というより、タイツを穿いていなければ確実に見えていただろう。

  • ノボリ

    ええと、キョウヘイ様
    もっと離れていただけ
    ると……
    その位置は少々その、
    危険です……

  • キョウヘイ

    えっ、そうかな
    きのみは落ちて来ない
    安全な場所にちゃんと
    いるよ

  • ノボリ

    その危険ではなく…
    いえ、身の安全も
    大事なことですが……

  • キョウヘイ

    なんで顔逸らして
    るんですか?

  • ノボリ

    な、何でもございません
    どうかお気になさらず

  • キョウヘイ

    ???

  • メイ

    キョウヘイ?
    誰と話して…
    あっ、ノボリさん!!

  • メイはジャローダから下りた。

  • キョウヘイ

    もう穫れたの?

  • メイ

    うん!
    ほら、ヤチェの実も
    たくさん!
    いっぱい収穫できて
    楽しかった~!

  • メイは自分の服の裾を受け皿のようにして、きのみを入れていた。
    ノボリ視点のモニターからは見えないが、あの服の使い方ではお腹が丸見えだ。

  • ノボリ

    …メイ様
    腹部が出ておりま
    せんか?
    お身体を冷やして
    しまいますよ

  • メイ

    大丈夫ですよ
    天気がよくて暖かい
    ですし

  • ノボリ

    そういう問題では…

  • ノボリ

    (無防備過ぎやしませ
    んか!?
    まさか日頃から
    ああなのでしょうか
    もしそうなのだとしたら
    心配で気が気では
    ありません!)

  • キョウヘイ

    さっきからノボリさん
    百面相してて
    変なんだけど
    どうしたんだろう

  • メイ

    そうかな?
    いつもそんな感じ
    じゃない?

  • キョウヘイ

    うーん、そうかなぁ

  • キョウヘイ

    (というかメイの前でだけ
    変なんだよな…
    メイにとっては
    そんなノボリさんが
    デフォルトになってて
    気づかないんだろうけど)

  • キョウヘイは再びライブキャスターをメイへと向ける。
    ノボリの表情が明らかに緩んだ。
    …かと思えばハッと我に返り、ピシリとしたいつもの凛々しさに戻る。

  • キョウヘイ

    (これ、本人は頑張って
    隠してるようだけど
    ノボリさんってさ
    もしかしてメイのこと…)

  • ノボリ

    キョウヘイ様

  • キョウヘイ

    は、はい

  • ノボリ

    メイ様を頼みますね
    道中お気をつけて

  • キョウヘイ

    そんなに心配しなくても
    メイは充分強いし
    ぼくよりもしっかり
    してるよ

  • ノボリ

    それは承知して
    おりますが
    それでも心配なものは
    心配なのです

  • メイ

    なんですか?
    なんの話してるん
    ですか?

  • きのみをバッグに詰め終わったメイが割り込んできた。

  • ノボリ

    いえ
    こちらの話です

  • メイ

    ふーん?
    ねえねえノボリさん
    今日会いに行っても
    いいですか?
    きのみも届けたいですし

  • ノボリ

    ええ、是非とも
    遊びに来てくださいませ
    美味しい紅茶があるので
    用意しておきましょう

  • メイ

    わぁ嬉しい!
    じゃあまた後で!
    いろいろお話ししたい
    ことがあるので
    楽しみにしてますね!

  • ノボリ

    はい、わたくしも
    お待ちしておりますね

  • ノボリのことを見つめるメイの表情はいつも以上に朗らかで、仄かに彩る頬は花が咲いたようだった。
    キョウヘイは、メイとノボリを交互に見て、合点がいき頷いた。

  • ライブキャスターが通話を終える。

  • キョウヘイ

    ああ~そっか
    なるほどね!

  • メイ

    えっ、何?
    キョウヘイ
    何かわかったの?

  • キョウヘイ

    (メイとノボリさんの)
    気持ちだよ
    多分おんなじだ

  • メイ

    おんなじ…?

  • メイは首を傾げる。
    キョウヘイはにんまりしたまま答えない。

  • メイ

    なになに?
    教えてほしいな

  • キョウヘイ

    内緒~
    だってこういうことは
    自分で気づいてこそ
    じゃん

  • メイ

    え~
    意地悪だぁ

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