ヘッダー小説ログ(ジャンルごった煮)

 うう。くやしい。悔しすぎる!
 庭に面した縁側に座って、審神者は隣の膝丸を見つめて歯軋り。負けず嫌いもここまで来れば立派なものだと自分でも思うのであった。
 きっかけは些細なこと。
 膝丸を照れさせようとして(ほんのちょっぴり優位に立ちたかっただけなのだ!)耳元で「愛してる」と囁こうと試みた。だから膝丸に「かがんで!」と言ったのだけれど……。
「君の考えなどお見通しだ」
 そう言われて、審神者は何度も何度も顔中にキスをされてしまった。抵抗も虚しくキスの嵐にあい、審神者はへとへと。膝丸は上機嫌でお茶を飲む。そんな具合だ。
 ――なんでわたしは膝丸に勝てないのかな?
 ――いつも余裕で膝丸はずるい!
 ――たまにはわたしも膝丸を照れさせたい!
 じっと膝丸を見つめて考え込む審神者。すると膝丸がちらりと審神者を見た。そして、しばし両者の視線が絡まる。……この金色の瞳に見つめられるの、弱いんだけどな。そんなことを考えていると。
「……あまり見つめてくれるな。さすがに照れてしまうだろう?」
 柔らかでやさしい、春の日々にも似つかわしい、膝丸の微笑み。その美しさに呆けていると、膝丸は審神者のあごを指で持ち上げ、そして唇にちゅっとキスを落とした。
 膝丸はまた何度も唇で審神者を愛でた。薄い唇が触れる度、審神者の胸が甘く高鳴って、身体が熱くなってしまうことを彼は知っているのだろうか?
 唇が離れると、膝丸はいつも通り冷静さをたたえた表情になって、審神者の頭をぽんっと優しく撫でてきた。熱い頬を隠すこともできずに審神者が膝丸を見ていると、彼は密やかに言葉を紡いだ。
「まったく。君は俺を狂わせる天才だよ」
「そ、それはこっちの台詞ー!」
 がなっても騒いでも、膝丸はちっとも負けてくれないどころか、むしろ自ら負けたよという視線を向けて、審神者をじりじりさせてくる。
 ああ、二度と彼には挑むべきではないのでしょうか!
 どこかにいる意地悪な恋の神様にそんなことをたずねては、審神者は愛しい男の腕に絡みつくのだった。
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