800文字100話チャレンジ

 一日も終わる頃だが、今日は散々な目にあった。ゴーストは疲れ切った身体を引きずりながら報告を終え、愛しの補佐官が待つ自室へと帰る。
 昼食のパスタは伸びてしまうし、上官には戦場においていかれる。その上面白い話もスベった。最悪すぎる。これは補佐官に甘えなければやってられない。ゴーストは呪ったると呟きながら部屋へと急ぐ。
 ゴーストが自室に帰ると、そこにはいつも通り補佐官の姿があった。彼女はゴーストを見つけると、笑顔を顔いっぱいに咲かせて「おかえりなさい、ゴーストさん!」と言って抱きしめてくれた。それだけでもうゴーストは胸がいっぱいになる。
「ただいま、補佐ちゃん……はあ、今日はホンマ最悪やったわぁ……」
 補佐官の肩に顔を埋めてぐりぐりと額を押し付けて甘える。彼女は嫌そうな素振りひとつ見せず「どうしたんですか? お話し聞きますよ」と言ってくれた。
 着替えもそこそこに。ゴーストはベッドの上で補佐官に膝枕をしてもらいながら、今日の愚痴を思い切りぶちまけた。
 嫌だったこと、悲しかったこと、怒ったこと。マイナス感情ばかりなのに、補佐官はただ「嫌だったんですね」「戦場においてかれたら怒るのは無理ないです」と肯定して共感してくれた。
 ひとしきり不満を述べると、補佐官はゴーストの頭を撫でて「落ち着きました?」と問うてきた。頷けば、彼女はにっこり笑って「じゃあお夕飯食べましょうか。簡単なものしか用意していませんが」と言って、ゴーストを起き上がらせた。
「今日のメニューは何なん?」
「今日は暑かったから、イカとアボカドの冷製スパゲティです。今から茹でてソースと和えるから、伸びてない美味しいやつですよ。あと冷たいパンプキンスープです」
 その言葉を聞いた瞬間、ゴーストの顔に笑みが宿る。
「わあ……ええなぁ。補佐ちゃん祝ったる……!」
「ありがとうございます。わたしもゴーストさんをいっぱい祝いますね」
 そして、補佐官はベッドに座るゴーストの額にキスひとつ。デザートはカスタードプリンですからね、と、にっこり笑うと簡易キッチンに向かった。
 ああ、嫌なことがあっても彼女の笑顔と手料理で元気になってしまう。なんて自分は現金なやつなんだ。でも幸せだから、まあいいか。
 そんなことを考えながら、ゴーストはスパゲティを茹でる補佐官の後姿をにまにましながら眺めるのであった。
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