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プラリネ
ノリのいいアラーム音と同時に、タイピング音がピタリと止む。僕はいそいそとスマホを取り出し、ボタンをスライドした。
「休憩!」
チカちゃんは勢いよく両手を上げ、解放されたように手足を伸ばす。僕も長時間同じ姿勢をしてて凝り固まった身体を伸ばした。僕もチカちゃんも試験科目がほとんどない代わりに図書館のラウンジにて期末レポートに追われていた。
「あっそうだ、お土産もってきたよ」
チカちゃんはリュックを漁り、正方形の箱を取り出した。パソコンと同じくらいの大きさである。金と銀の外包がいかにも贈り物ですという雰囲気を醸していた。
「親戚の人がもたせてくれたんだけど、一人で食べるには多くて」
チカちゃんが箱を開けると、同じデザインは一つとしてないプラリネチョコレートが、6×6のマスに勢ぞろいしていた。既に3、4個欠けていて、これはチカちゃんが食べたんだろう。
「好きなだけ食べてね」
もう何時間勉強しただろうか。頭が糖分を欲していたのか、チョコを見た瞬間唾液がじわ、と湧き出る。僕はありがたく一粒、また一粒と口に運ぶ。ほどよい甘さが口に広がった。
「おいしい」
「ならよかった~」
チカちゃんは朗らかに笑う。が、すぐに何か思い出したように瞳孔が開いた。
「……もうすぐバレンタインだね」
「そう、だね」
そういえばもう1週間もない。天達先生と喜和さんと3人で、ちょっと高そうなチョコを食べたのが何回かあったくらいだろうか。僕みたいな人間にチョコをあげてくれる人なんて皆無だから、無縁なイベントとしてスルーしていた。
「サークルの人用に義理チョコ用意しないと……」
自分から話題を切り出したにもかかわらず、チカちゃんは悩ましげに顔をしかめた。
「僕それ常々疑問に思ってて」
「お、きたきた常々シリーズ」
とっさに口を出してしまったけど、チカちゃんは変わらず興味津津に目を輝かせてくれる。僕は続きを話した。
「どうして日本だと女性があげなくちゃいけないみたいな風潮なんだろうって。もともと海外だと、男女関係なく、大切な人にプレゼントを送り合う日だったのに」
「大切な、人?」
チカちゃんはしばらく口に手を当てて考えるそぶりを見せてから、どこか吹っ切れた顔になった。
「ちょっと早いけど、これ、バレンタインってことにしていい?」
「へっ!? ど、どゆこと!?」
チカちゃんはテーブルの真ん中にまだ残ってるプラリネを指した。
「さすがに今日じゃ食べ切れないから、明日も明後日も一緒に食べよ」
「えっ……」
「一緒に食べたい人と食べるチョコが、一番おいしい」
僕は……一緒に食べたい人に入ってるってこと?
僕はこの日、初めてバレンタインでときめいた。
ノリのいいアラーム音と同時に、タイピング音がピタリと止む。僕はいそいそとスマホを取り出し、ボタンをスライドした。
「休憩!」
チカちゃんは勢いよく両手を上げ、解放されたように手足を伸ばす。僕も長時間同じ姿勢をしてて凝り固まった身体を伸ばした。僕もチカちゃんも試験科目がほとんどない代わりに図書館のラウンジにて期末レポートに追われていた。
「あっそうだ、お土産もってきたよ」
チカちゃんはリュックを漁り、正方形の箱を取り出した。パソコンと同じくらいの大きさである。金と銀の外包がいかにも贈り物ですという雰囲気を醸していた。
「親戚の人がもたせてくれたんだけど、一人で食べるには多くて」
チカちゃんが箱を開けると、同じデザインは一つとしてないプラリネチョコレートが、6×6のマスに勢ぞろいしていた。既に3、4個欠けていて、これはチカちゃんが食べたんだろう。
「好きなだけ食べてね」
もう何時間勉強しただろうか。頭が糖分を欲していたのか、チョコを見た瞬間唾液がじわ、と湧き出る。僕はありがたく一粒、また一粒と口に運ぶ。ほどよい甘さが口に広がった。
「おいしい」
「ならよかった~」
チカちゃんは朗らかに笑う。が、すぐに何か思い出したように瞳孔が開いた。
「……もうすぐバレンタインだね」
「そう、だね」
そういえばもう1週間もない。天達先生と喜和さんと3人で、ちょっと高そうなチョコを食べたのが何回かあったくらいだろうか。僕みたいな人間にチョコをあげてくれる人なんて皆無だから、無縁なイベントとしてスルーしていた。
「サークルの人用に義理チョコ用意しないと……」
自分から話題を切り出したにもかかわらず、チカちゃんは悩ましげに顔をしかめた。
「僕それ常々疑問に思ってて」
「お、きたきた常々シリーズ」
とっさに口を出してしまったけど、チカちゃんは変わらず興味津津に目を輝かせてくれる。僕は続きを話した。
「どうして日本だと女性があげなくちゃいけないみたいな風潮なんだろうって。もともと海外だと、男女関係なく、大切な人にプレゼントを送り合う日だったのに」
「大切な、人?」
チカちゃんはしばらく口に手を当てて考えるそぶりを見せてから、どこか吹っ切れた顔になった。
「ちょっと早いけど、これ、バレンタインってことにしていい?」
「へっ!? ど、どゆこと!?」
チカちゃんはテーブルの真ん中にまだ残ってるプラリネを指した。
「さすがに今日じゃ食べ切れないから、明日も明後日も一緒に食べよ」
「えっ……」
「一緒に食べたい人と食べるチョコが、一番おいしい」
僕は……一緒に食べたい人に入ってるってこと?
僕はこの日、初めてバレンタインでときめいた。