あなたの生き方が好き
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
もう4月だが、まだ肌寒いのでまだまだこたつが恋しい。
「わああああああああホームランだああああああ!」
木製バットのはずなのに金属バットで打ったような異次元の快音。反射的にこたつから手を出してバンザイした。進級したての休日。トトくんとこたつを共有してメジャーリーグの開幕シリーズを見ていた。野球は通常1試合3時間超え。毎日見るのは難しいけど休日くらいはちゃんと見たい。
「え……なんだーエンタイトルツーベースかー」
ホームランかと思われたボールが、審判のビデオ判定により取り消される。外気でちょっと冷えた両手をそっとこたつに潜らせた。
ついこないだ帰省したときに、親から某二刀流選手を布教され、「打ったらベース一つ進める」くらいしか野球のルールを知らなかったはずなのに、今では野球解説者の用語が一通りわかるようになっていた。
落ち着いた頃に、今部屋に自分の声しか響いてなかったことに気づいて身体がこわばった。これ、盛りあがってるの私だけ……? チラ、と目だけ横に向けると、トトくんも幻のホームランに軽いため息をついていた。
意外にも、トトくんがメジャーリーグを見ていたことが判明して私は即効で「明日一緒に見ない!?」と迫っちゃったのだ。言った瞬間我ながら何してんだと後悔したけど、トトくんは数秒の沈黙ののち「いいよ」と言ってくれたのだ。
「あれ? 移籍した人、今日いないな」
昨日球団のSNSで電撃移籍した人が紹介されていたのを思い出し、今日から出るのかとワクワクしていたのだが、その姿が見当たらない。
「役所に引越届出しに行ってるから欠場だって」
「それで試合休めるの!? 平和だなMLB!」
「子どもの出産立ち会いで休むこともできるよ」
「育休も充実してる!?」
言われてみれば某日本人投手が、3人目の子どもの出産に立ち会うために登板日をずらしてまで休んでいたような……そんなに大事にされているのか、選手のプライベート。
「練習時間も半日だけ、午後は家族と過ごしたり遊んだりする選手が多い」
「超ホワイトじゃん」
「他のスポーツあんま見ないからわからないけど……地域差にもよるかな」
「地域差? 日本だとどうなるの?」
「たとえば、奥さんの出産立ち会いで選手が休みますってなったときに、メジャーの実況は『おめでたいですね』と言うのに、日本だと『ああ、奥さんが怖いんでしょうね』ってなるの」
「父親が自ら行ってるという選択肢はないのか」
「アメリカの父親は子どもの成長に立ち会うことを権利だと思い、日本では義務だと思ってる」
まさか野球観戦一つで文化の違いまでわかってしまうとは。やっぱり、トトくんは見ているところが違う。
「……ねえ、面白いから毎週ここで見ない?」
「え、え!?」
「だってトトくんの話もっと聞きたいよ!」
「僕喋ることないよ!?」
「いいよいいよ、トトくん無意識で喋ってるから」
「はぁ〜? ……まあ、都合がつけば」
「やったー」
少なくともメジャーのシーズン中、私の休日は色づくことが確定した。
「わああああああああホームランだああああああ!」
木製バットのはずなのに金属バットで打ったような異次元の快音。反射的にこたつから手を出してバンザイした。進級したての休日。トトくんとこたつを共有してメジャーリーグの開幕シリーズを見ていた。野球は通常1試合3時間超え。毎日見るのは難しいけど休日くらいはちゃんと見たい。
「え……なんだーエンタイトルツーベースかー」
ホームランかと思われたボールが、審判のビデオ判定により取り消される。外気でちょっと冷えた両手をそっとこたつに潜らせた。
ついこないだ帰省したときに、親から某二刀流選手を布教され、「打ったらベース一つ進める」くらいしか野球のルールを知らなかったはずなのに、今では野球解説者の用語が一通りわかるようになっていた。
落ち着いた頃に、今部屋に自分の声しか響いてなかったことに気づいて身体がこわばった。これ、盛りあがってるの私だけ……? チラ、と目だけ横に向けると、トトくんも幻のホームランに軽いため息をついていた。
意外にも、トトくんがメジャーリーグを見ていたことが判明して私は即効で「明日一緒に見ない!?」と迫っちゃったのだ。言った瞬間我ながら何してんだと後悔したけど、トトくんは数秒の沈黙ののち「いいよ」と言ってくれたのだ。
「あれ? 移籍した人、今日いないな」
昨日球団のSNSで電撃移籍した人が紹介されていたのを思い出し、今日から出るのかとワクワクしていたのだが、その姿が見当たらない。
「役所に引越届出しに行ってるから欠場だって」
「それで試合休めるの!? 平和だなMLB!」
「子どもの出産立ち会いで休むこともできるよ」
「育休も充実してる!?」
言われてみれば某日本人投手が、3人目の子どもの出産に立ち会うために登板日をずらしてまで休んでいたような……そんなに大事にされているのか、選手のプライベート。
「練習時間も半日だけ、午後は家族と過ごしたり遊んだりする選手が多い」
「超ホワイトじゃん」
「他のスポーツあんま見ないからわからないけど……地域差にもよるかな」
「地域差? 日本だとどうなるの?」
「たとえば、奥さんの出産立ち会いで選手が休みますってなったときに、メジャーの実況は『おめでたいですね』と言うのに、日本だと『ああ、奥さんが怖いんでしょうね』ってなるの」
「父親が自ら行ってるという選択肢はないのか」
「アメリカの父親は子どもの成長に立ち会うことを権利だと思い、日本では義務だと思ってる」
まさか野球観戦一つで文化の違いまでわかってしまうとは。やっぱり、トトくんは見ているところが違う。
「……ねえ、面白いから毎週ここで見ない?」
「え、え!?」
「だってトトくんの話もっと聞きたいよ!」
「僕喋ることないよ!?」
「いいよいいよ、トトくん無意識で喋ってるから」
「はぁ〜? ……まあ、都合がつけば」
「やったー」
少なくともメジャーのシーズン中、私の休日は色づくことが確定した。