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「やっと座れた〜」
ベーカリーで私はソフトクリームを、トトくんはアップルパイを買ったのはよかったが、今日はやたら人が多くて座るとこを探すのに苦労した。ベーカリーから建物を2つ挟んだ先でやっとベンチを見つけて、私たちは腰かけた。
ソフトクリームが溶ける前に上からかじりつつ、側面を舐めていく。ある程度食べ進めてもう垂れる心配がなくなったときだ。
パイのカリカリ音が聞こえないなと思ってトトくんのほうを見たら、パイを両手に持ったまま斜め45度下をじっと見つめていた。目線は手元というより、その先のなんの変哲もない地面のほうだ。
トトくんはいつも、みんなが当たり前だと思って気にもとめないようなことに目がいく。今度は何を考えているんだろう。いつもの横顔を眺めていたら、トトくんが視線に気づいたのか、はっ、とこっちを振り返って目を見開いていた。あまりにもびっくりしているみたいだったから、私はとっさに「な、なんでもないわ」と返して背筋を伸ばし、ソフトクリームに向き直った。
「……で、今日は何考えてるの?」
トトくんの顔は曇っていた。ペンキで塗ったような、一面を覆う青い空の色に似つかわしくないほどに。もともと思慮深いとはいえ、いつもはもっと子どもっぽく目をキラキラさせて考えているはずだ。
「また、気持ち悪いって言われちゃった」
察した。おおかたトトくんが何か思うことをストレートに言ってしまったんだろう。余計なこといってしまった、というトトくんの顔が頭に浮かんだ。まあ、私はトトくんの言葉にいつも救われてここまで友達としての付き合いが続いているんだけど。
「いつも言われてたのはスルーしてた。けど、最近気になっちゃうんだ……チカちゃんは、僕のこと気持ち悪いって思わないの?」
ときどき、トトくんは不安になって聞いてくる。染み付いちゃった光景はそう簡単には拭えない。だから、トトくんが不安になったときは何度でも語りかける。
「そう思ったことは一度もない。それがトトくんのいいところで、面白くて、好きなところだよ」
自分と合わない人なんてこっちから願い下げだし。初めて会った人に気づいたら自分から声をかけていたなんて、後にも先にもトトくん一人だけだ。当たり前とされていることもなんでも疑っていて、私の中の意味のない固定観念が少しずつ取り除かれていく。こんなふうに解きほぐしてくれる人、私はほかに知らない。みんな、見る目がないと思う。
トトくんの口角が、私にだけわかるくらい小さく上がった。空の色でだいたい分かるようになったけど、このやりとりがしたくて私はあえて今日も聞く。
「……今日はカレー日和?」
「うん、最高の」
「食べにいっていい?」
「時間かかるけど」
「いつものことでしょ」
トトくんがウッキウキで作ったカレー、私大好きなんだから。
私はコーンの最後の一口を入れた。さて、午後の授業を軽く予習しとこう。
ベーカリーで私はソフトクリームを、トトくんはアップルパイを買ったのはよかったが、今日はやたら人が多くて座るとこを探すのに苦労した。ベーカリーから建物を2つ挟んだ先でやっとベンチを見つけて、私たちは腰かけた。
ソフトクリームが溶ける前に上からかじりつつ、側面を舐めていく。ある程度食べ進めてもう垂れる心配がなくなったときだ。
パイのカリカリ音が聞こえないなと思ってトトくんのほうを見たら、パイを両手に持ったまま斜め45度下をじっと見つめていた。目線は手元というより、その先のなんの変哲もない地面のほうだ。
トトくんはいつも、みんなが当たり前だと思って気にもとめないようなことに目がいく。今度は何を考えているんだろう。いつもの横顔を眺めていたら、トトくんが視線に気づいたのか、はっ、とこっちを振り返って目を見開いていた。あまりにもびっくりしているみたいだったから、私はとっさに「な、なんでもないわ」と返して背筋を伸ばし、ソフトクリームに向き直った。
「……で、今日は何考えてるの?」
トトくんの顔は曇っていた。ペンキで塗ったような、一面を覆う青い空の色に似つかわしくないほどに。もともと思慮深いとはいえ、いつもはもっと子どもっぽく目をキラキラさせて考えているはずだ。
「また、気持ち悪いって言われちゃった」
察した。おおかたトトくんが何か思うことをストレートに言ってしまったんだろう。余計なこといってしまった、というトトくんの顔が頭に浮かんだ。まあ、私はトトくんの言葉にいつも救われてここまで友達としての付き合いが続いているんだけど。
「いつも言われてたのはスルーしてた。けど、最近気になっちゃうんだ……チカちゃんは、僕のこと気持ち悪いって思わないの?」
ときどき、トトくんは不安になって聞いてくる。染み付いちゃった光景はそう簡単には拭えない。だから、トトくんが不安になったときは何度でも語りかける。
「そう思ったことは一度もない。それがトトくんのいいところで、面白くて、好きなところだよ」
自分と合わない人なんてこっちから願い下げだし。初めて会った人に気づいたら自分から声をかけていたなんて、後にも先にもトトくん一人だけだ。当たり前とされていることもなんでも疑っていて、私の中の意味のない固定観念が少しずつ取り除かれていく。こんなふうに解きほぐしてくれる人、私はほかに知らない。みんな、見る目がないと思う。
トトくんの口角が、私にだけわかるくらい小さく上がった。空の色でだいたい分かるようになったけど、このやりとりがしたくて私はあえて今日も聞く。
「……今日はカレー日和?」
「うん、最高の」
「食べにいっていい?」
「時間かかるけど」
「いつものことでしょ」
トトくんがウッキウキで作ったカレー、私大好きなんだから。
私はコーンの最後の一口を入れた。さて、午後の授業を軽く予習しとこう。