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「何調べてるの?」
いつも僕が言われる言葉を、今日はチカちゃんに放った。いつも柔らかく笑っている彼女が、真剣な顔をしてスマホとにらめっこしていたから、聞かずにはいられなかった。
「男がAEDを女性に使って訴えられた事件について」
「なんで」
「昨日車校で応急救護やったの。そこで、女性は男性よりもAEDでの救命率が低いって聞いて」
それ、僕調べたことある。女性の服を脱がせるのに抵抗があるとか、助けたあとに痴漢で訴えられるんじゃないかとか。男の人が女の人を助けようとするときの一瞬の躊躇で、生存率が一気に減ってしまう。実際訴えられた事例があるって聞いたような。
「あれ?」
チカちゃんは首をかしげ、スクロールする指が速くなった。何かに気づいたらしい。こういう腑に落ちかける瞬間は僕にもわかるから、邪魔はしないでおこう。しばらく喫茶店の程よい雑音とコーヒーの香りを堪能する。
「実際の事例は、特になし……?」
えっ、うそ。
「どうゆうこと?」
「ほらこれ」
チカちゃんが画面をこっちに向ける。記事によると、SNSである女性が、「AEDで服脱がされるのやだなぁ」って呟いただけで、現実に訴訟になった事例はないらしい。
「トトくんも知らなかったとは……あ、ソース確認しなきゃだね」
ちょっと勝ち誇ったような顔のチカちゃん。うう、天達先生に何度も言われてるやつ、改めて口にされると心にくる。
「まあ真偽はさておき。これ、痴漢のやつと一緒じゃない?」
「痴漢?」
「この前フルーツサンド食べに行ったときトトくん言ってたじゃん。冤罪が増えると、本当に被害に遭ってる人が声出せなくなるってやつ」
痴漢の冤罪話で表情がくもった女の人がいて、心当たりがあったら女性刑事の風呂光さんを頼ってくださいって紹介したら泣き出されたんだった。「あなた何したの!?」ってその人の女友達に詰め寄られたけど、一緒にいたチカちゃんがなんとか誤解をといてくれたんだった。
「で、トトくんは私にAED使う?」
「まず近くの女の人を呼び止めるかな」
「いなかったら?」
「僕が行くしかないよね」
「それが、他の男の人でも当たり前になるといいね」
「すごい普通に言ってるけど、チカちゃんは気にしないの?」
「まあタオルで身体を隠すとか、そういう配慮があるに越したことはないけど……」
チカちゃんは手元のコーヒーに視線を落として、「助けた人を糾弾したら、この先救われる人減っちゃうでしょ」とこぼした。
男女平等に助けられるのが、当たり前になったらいい。窓の外の雑踏を眺めながら、僕は僕で気になることに思いをはせた。
いつも僕が言われる言葉を、今日はチカちゃんに放った。いつも柔らかく笑っている彼女が、真剣な顔をしてスマホとにらめっこしていたから、聞かずにはいられなかった。
「男がAEDを女性に使って訴えられた事件について」
「なんで」
「昨日車校で応急救護やったの。そこで、女性は男性よりもAEDでの救命率が低いって聞いて」
それ、僕調べたことある。女性の服を脱がせるのに抵抗があるとか、助けたあとに痴漢で訴えられるんじゃないかとか。男の人が女の人を助けようとするときの一瞬の躊躇で、生存率が一気に減ってしまう。実際訴えられた事例があるって聞いたような。
「あれ?」
チカちゃんは首をかしげ、スクロールする指が速くなった。何かに気づいたらしい。こういう腑に落ちかける瞬間は僕にもわかるから、邪魔はしないでおこう。しばらく喫茶店の程よい雑音とコーヒーの香りを堪能する。
「実際の事例は、特になし……?」
えっ、うそ。
「どうゆうこと?」
「ほらこれ」
チカちゃんが画面をこっちに向ける。記事によると、SNSである女性が、「AEDで服脱がされるのやだなぁ」って呟いただけで、現実に訴訟になった事例はないらしい。
「トトくんも知らなかったとは……あ、ソース確認しなきゃだね」
ちょっと勝ち誇ったような顔のチカちゃん。うう、天達先生に何度も言われてるやつ、改めて口にされると心にくる。
「まあ真偽はさておき。これ、痴漢のやつと一緒じゃない?」
「痴漢?」
「この前フルーツサンド食べに行ったときトトくん言ってたじゃん。冤罪が増えると、本当に被害に遭ってる人が声出せなくなるってやつ」
痴漢の冤罪話で表情がくもった女の人がいて、心当たりがあったら女性刑事の風呂光さんを頼ってくださいって紹介したら泣き出されたんだった。「あなた何したの!?」ってその人の女友達に詰め寄られたけど、一緒にいたチカちゃんがなんとか誤解をといてくれたんだった。
「で、トトくんは私にAED使う?」
「まず近くの女の人を呼び止めるかな」
「いなかったら?」
「僕が行くしかないよね」
「それが、他の男の人でも当たり前になるといいね」
「すごい普通に言ってるけど、チカちゃんは気にしないの?」
「まあタオルで身体を隠すとか、そういう配慮があるに越したことはないけど……」
チカちゃんは手元のコーヒーに視線を落として、「助けた人を糾弾したら、この先救われる人減っちゃうでしょ」とこぼした。
男女平等に助けられるのが、当たり前になったらいい。窓の外の雑踏を眺めながら、僕は僕で気になることに思いをはせた。