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つかの間の晴れ間
「しまった、今日リュックじゃなかった……折り畳み傘ないわ」
ちょっと古びた商店街を散策していたときだった。陽の光が射しているのに似つかわしくない雨が降り出した。いわゆる天気雨だ。
千景さんが、リュックではなくトートバッグを軽く揺らしながら頭を抱える。僕も傘を持っていない。仕方なく、シャッターが閉まった店の軒下に避難し、雨が上がるのを待つことにした。
「てかそもそも、晴れ間が広がってるって天気予報で言ってたのに、今日雲ばっかりじゃなかった?」
「晴れ間が広がるって、もともと雲と雲の隙間が大きくなるって意味らしいから、感覚的には曇りに近いかもね」
「え、そうなの!? たしかに、晴れの『間』って書くしなぁ……なんかだまされた気分」
「世間でも、元の意味と誤解した意味で覚えてる人が半々らしいよ」
「間違った意味が正しい意味になるってことか……」
千景さんが軽く笑った。その表情は、雨でどんよりした空気を少しだけ軽くしてくれるようだった。
雨音が、いつの間にか穏やかになる。雲の切れ間はすぐそこに迫っている。じきに晴れるだろう。ただ、もう少しこのまま、ここにいたい――なんて、そんなことを思うのは僕らしくないのかもしれない。
でも、今はこのつかの間のひとときを、心の片隅にそっとしまっておこう。
「しまった、今日リュックじゃなかった……折り畳み傘ないわ」
ちょっと古びた商店街を散策していたときだった。陽の光が射しているのに似つかわしくない雨が降り出した。いわゆる天気雨だ。
千景さんが、リュックではなくトートバッグを軽く揺らしながら頭を抱える。僕も傘を持っていない。仕方なく、シャッターが閉まった店の軒下に避難し、雨が上がるのを待つことにした。
「てかそもそも、晴れ間が広がってるって天気予報で言ってたのに、今日雲ばっかりじゃなかった?」
「晴れ間が広がるって、もともと雲と雲の隙間が大きくなるって意味らしいから、感覚的には曇りに近いかもね」
「え、そうなの!? たしかに、晴れの『間』って書くしなぁ……なんかだまされた気分」
「世間でも、元の意味と誤解した意味で覚えてる人が半々らしいよ」
「間違った意味が正しい意味になるってことか……」
千景さんが軽く笑った。その表情は、雨でどんよりした空気を少しだけ軽くしてくれるようだった。
雨音が、いつの間にか穏やかになる。雲の切れ間はすぐそこに迫っている。じきに晴れるだろう。ただ、もう少しこのまま、ここにいたい――なんて、そんなことを思うのは僕らしくないのかもしれない。
でも、今はこのつかの間のひとときを、心の片隅にそっとしまっておこう。