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零時に交わる声
深夜零時にもかかわらず、眠れない。刑事の青砥さんにガロくんからの贈り物を届け出たはずなのに、あれを開けたときの光景が未だ胸につっかえて気持ち悪くまとわりついている。バスジャック事件に巻き込まれたときに、同性で初めて僕を友達っていってくれたガロくん。不起訴になったらうちに遊びにきてくれるって聞いて別れた矢先だった。彼は、一線を越えてしまった。どうして僕に犯人の断片を送りつけてきたのか。犯人とはいえ最近目にした人間の切断された腕なんて送りつけられたら、嫌でもグロテスクな光景として頭に残ってしまうものだ。静かすぎる一人暮らしの部屋では、ふとしたときにあの光景が蘇るたびに僕は布団をかぶってダンゴムシになることしかできなかった。ダメなのに。もう子供じゃないんだから。
あの人の声が聞きたくて、僕はとっさにスマホを持ち上げる。連絡先のホーム画面から、連絡先をワンタップで開いた。唯一お気に入りの連絡先に登録していたから、一瞬だった。すぐに受話器のマークを押した。今はただ、一人で無音の空間にいることを避けたかった。
『ん……もしもし』
ドキドキしながら待っていたら、千景さんは4コール目で出てくれた。いつもの鈴のような声に比べるとちょっとかすれた声で、覇気がなかった。なにしてるんだ僕は。こんな深夜に電話をかけるなんて。非常識にもほどがある。怒られるかも。見放されるかも。絶交されるかも。
『整くん?』
「あっ」
いっぱいいっぱいになっていたところに、千景さんが僕の名前を呼んで僕は我に返った。
『珍しいね。整くんみたいないい子は寝てる時間だと思ってたのだけど』
「そ、そういう千景さんだって、いつもとっくに寝てるはずなのに、どうして出てくれたの」
『レポートに手こずっちゃって。今日、というか昨日〆切だったからさ。さっきベッドに入って電気消したばっかりだったの』
いかにも眠そうな声だったけど、まさに眠りに入ろうとしてたのを、僕は邪魔してしまったのだ。僕はまた後悔に苛まれて、息のできない心地がした。
「なんで、かけちゃったんだろう。僕にもわかんないんだ」
『じゃあ、眠くなるまで適当に話そ?』
千景さんの声を聞く限り、苛立ちは全く感じられなかった。
「ご、ごめん……あの、怒ってたら、言って」
彼女はいつも優しすぎる。怒っているところを見たことがない。実は心の奥底で不満を溜めているんじゃないかっていつも思ってるから、僕はたまらず尋ねてしまった。
『怒ってないよ。まあ、びっくりはしたけど……でも、電話の主が整くんってわかったら、不思議とイライラしないんだよね。むしろ心待ちにしてる自分がいたかも』
孤独で冷たい布団が、電話越しの声だけであったかくなる。思わず涙が出そうになった。
『で、整くんは今週なに考えてたの?』
この人は、どこまでいい人なんだろう。いなくなってしまうのが怖いほどに、僕にとって居心地がよすぎる。でも、今この時間で安らぎを得られるなら。僕は電話越しに今日考えてたことを話すだけ話して、お互い眠りについた。
深夜零時にもかかわらず、眠れない。刑事の青砥さんにガロくんからの贈り物を届け出たはずなのに、あれを開けたときの光景が未だ胸につっかえて気持ち悪くまとわりついている。バスジャック事件に巻き込まれたときに、同性で初めて僕を友達っていってくれたガロくん。不起訴になったらうちに遊びにきてくれるって聞いて別れた矢先だった。彼は、一線を越えてしまった。どうして僕に犯人の断片を送りつけてきたのか。犯人とはいえ最近目にした人間の切断された腕なんて送りつけられたら、嫌でもグロテスクな光景として頭に残ってしまうものだ。静かすぎる一人暮らしの部屋では、ふとしたときにあの光景が蘇るたびに僕は布団をかぶってダンゴムシになることしかできなかった。ダメなのに。もう子供じゃないんだから。
あの人の声が聞きたくて、僕はとっさにスマホを持ち上げる。連絡先のホーム画面から、連絡先をワンタップで開いた。唯一お気に入りの連絡先に登録していたから、一瞬だった。すぐに受話器のマークを押した。今はただ、一人で無音の空間にいることを避けたかった。
『ん……もしもし』
ドキドキしながら待っていたら、千景さんは4コール目で出てくれた。いつもの鈴のような声に比べるとちょっとかすれた声で、覇気がなかった。なにしてるんだ僕は。こんな深夜に電話をかけるなんて。非常識にもほどがある。怒られるかも。見放されるかも。絶交されるかも。
『整くん?』
「あっ」
いっぱいいっぱいになっていたところに、千景さんが僕の名前を呼んで僕は我に返った。
『珍しいね。整くんみたいないい子は寝てる時間だと思ってたのだけど』
「そ、そういう千景さんだって、いつもとっくに寝てるはずなのに、どうして出てくれたの」
『レポートに手こずっちゃって。今日、というか昨日〆切だったからさ。さっきベッドに入って電気消したばっかりだったの』
いかにも眠そうな声だったけど、まさに眠りに入ろうとしてたのを、僕は邪魔してしまったのだ。僕はまた後悔に苛まれて、息のできない心地がした。
「なんで、かけちゃったんだろう。僕にもわかんないんだ」
『じゃあ、眠くなるまで適当に話そ?』
千景さんの声を聞く限り、苛立ちは全く感じられなかった。
「ご、ごめん……あの、怒ってたら、言って」
彼女はいつも優しすぎる。怒っているところを見たことがない。実は心の奥底で不満を溜めているんじゃないかっていつも思ってるから、僕はたまらず尋ねてしまった。
『怒ってないよ。まあ、びっくりはしたけど……でも、電話の主が整くんってわかったら、不思議とイライラしないんだよね。むしろ心待ちにしてる自分がいたかも』
孤独で冷たい布団が、電話越しの声だけであったかくなる。思わず涙が出そうになった。
『で、整くんは今週なに考えてたの?』
この人は、どこまでいい人なんだろう。いなくなってしまうのが怖いほどに、僕にとって居心地がよすぎる。でも、今この時間で安らぎを得られるなら。僕は電話越しに今日考えてたことを話すだけ話して、お互い眠りについた。