エスパーと天使~小話~
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どうしてナチュラルにそういうことするかな
両耳をイヤホンで埋め、スマホの液晶をポチッと押せば、透き通った歌声が耳に響いた。私たち以外誰もいない放課後の教室で、無機質な勉強の合間に聞く音楽は癒やしの成分として身体に染み渡る。
本当は一緒にいるシン君とお話したかったけれど、あいにくシン君は右隣で突っ伏して寝息を立てている。地元で一番のヤンキーになると張り切って、昨日も他校に一人で殴り込みに行ったらしい。顔と腕の間からガーゼや絆創膏が垣間見えた。
シン君の顔を眺めているうちに、曲はサビ手前に差し掛かっていた。前はこんな、おとぎ話のように浮いた恋の歌詞には微塵も興味が湧かなかったはずなのに。まあ、ここのシン君のせいでそれが現実になってしまったわけだけど。
目を閉じてしばらく曲に浸っていたら、右の半袖が2回、軽く引っ張られた。その方向に顔を向けると、シン君が顔だけこっちに向けて、甘く微笑んでいた。いつから起きてたんだろう。いつもみんなに向けている快活な笑顔とか、悪いヤンキー(ヤンキーに良い悪いは変な気もするが)に立ち向かっていくときの武者震いの笑いとはまた違う、私にしか見せない顔。嬉しいような恥ずかしいような。心臓がくすぐったくなる。
その顔でずっとこっちを見つめている。自分の顔になにかついているのかとも思ったけど、だったらシン君はとっくに私の顔に手を近づけているはずだ。私は右耳のイヤホンを外して、身体もちょっとシン君のほうへ向けた。
「何聴いてんの」
私が口を開く前に、シン君は即行で聞いてきた。曲名を言ったら、シン君は「意外だな」と笑いかけた。
「ここに出てくる男の人がね、シン君みたいだなぁって思ってたの」
ひたむきで太陽のように明るい人。そう付け足すと、シン君は目を丸くした。あれ、私、おかしなこと言っちゃったかな。
「えっ」
「へへっ」
イヤホンをシン君に分けようと、指を左イヤホンにかけたときだった。右にもっていたイヤホンを奪われ、シン君の顔が一気に近づいてきた。
いや、たしかに離れすぎると私のも道連れで外れちゃうから近づくのは当たり前なんだけど、これは……想像していたのと違う。2人の間にイヤホンが垂れてる感じなのは見たことあったけど、これじゃあ私とシン君を隔てるものは何もなくて、シン君の息遣いとかが頬に当たる。そこから熱が全身を駆け巡る。心臓もうるさくなる。
至近距離でシン君の太陽のような笑顔を目にするのはまだ慣れない。でも、間近でこの顔を見られるのは私だけ。そう思うと、目をそらすこともできなかった。
空調は完璧に効いていたはずなのに、内側からぶわっとこみ上げた熱が引くことはなかった。
両耳をイヤホンで埋め、スマホの液晶をポチッと押せば、透き通った歌声が耳に響いた。私たち以外誰もいない放課後の教室で、無機質な勉強の合間に聞く音楽は癒やしの成分として身体に染み渡る。
本当は一緒にいるシン君とお話したかったけれど、あいにくシン君は右隣で突っ伏して寝息を立てている。地元で一番のヤンキーになると張り切って、昨日も他校に一人で殴り込みに行ったらしい。顔と腕の間からガーゼや絆創膏が垣間見えた。
シン君の顔を眺めているうちに、曲はサビ手前に差し掛かっていた。前はこんな、おとぎ話のように浮いた恋の歌詞には微塵も興味が湧かなかったはずなのに。まあ、ここのシン君のせいでそれが現実になってしまったわけだけど。
目を閉じてしばらく曲に浸っていたら、右の半袖が2回、軽く引っ張られた。その方向に顔を向けると、シン君が顔だけこっちに向けて、甘く微笑んでいた。いつから起きてたんだろう。いつもみんなに向けている快活な笑顔とか、悪いヤンキー(ヤンキーに良い悪いは変な気もするが)に立ち向かっていくときの武者震いの笑いとはまた違う、私にしか見せない顔。嬉しいような恥ずかしいような。心臓がくすぐったくなる。
その顔でずっとこっちを見つめている。自分の顔になにかついているのかとも思ったけど、だったらシン君はとっくに私の顔に手を近づけているはずだ。私は右耳のイヤホンを外して、身体もちょっとシン君のほうへ向けた。
「何聴いてんの」
私が口を開く前に、シン君は即行で聞いてきた。曲名を言ったら、シン君は「意外だな」と笑いかけた。
「ここに出てくる男の人がね、シン君みたいだなぁって思ってたの」
ひたむきで太陽のように明るい人。そう付け足すと、シン君は目を丸くした。あれ、私、おかしなこと言っちゃったかな。
「えっ」
「へへっ」
イヤホンをシン君に分けようと、指を左イヤホンにかけたときだった。右にもっていたイヤホンを奪われ、シン君の顔が一気に近づいてきた。
いや、たしかに離れすぎると私のも道連れで外れちゃうから近づくのは当たり前なんだけど、これは……想像していたのと違う。2人の間にイヤホンが垂れてる感じなのは見たことあったけど、これじゃあ私とシン君を隔てるものは何もなくて、シン君の息遣いとかが頬に当たる。そこから熱が全身を駆け巡る。心臓もうるさくなる。
至近距離でシン君の太陽のような笑顔を目にするのはまだ慣れない。でも、間近でこの顔を見られるのは私だけ。そう思うと、目をそらすこともできなかった。
空調は完璧に効いていたはずなのに、内側からぶわっとこみ上げた熱が引くことはなかった。