エスパーと天使~小話~
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連絡先
大学に無事受かって春休みとはいえ、ゆっくりしている時間は意外となかった。2人暮らしの住居を内見することから始まり、引っ越しの荷造り、新しい家具の購入、住所変更の手続き……住居の契約書類はあらかた書き終わったところで、今度はリビングのローテーブルで入学書類を広げ、順番に必要事項を埋めていく。
「えーっと、緊急連絡先は、母で……あっ」
何回も書くうちに手が新しい住所を覚えたらしい。何も考えずに同じ住所を書きそうになった。気を取り直して、幼い頃から書き慣れた住所を埋めていく。来月からこの住み慣れた場所が実家というものになり、遠く離れた都会で二人暮らしするという実感はまだ湧かなかった。
「わっ」
連絡先を書き終えて、こういうのをあと枚数分書かなきゃか……とため息をついたところで背中にずっしり重さを感じた。
「ちょっと、危ないでしょ! ボールペン、消せないんだから」
「んー充電」
口では怒っちゃったけど、本音はうれしいからどこかむず痒い。両親の再婚で義姉弟として小学校の頃からずっと一緒にいたのに、こじれにこじれた末両想いとわかったのはつい最近。合格祝いと一緒に息をするようにプロポーズを受け、法律上でも正式に私の旦那様となった。そんな旦那様も、数十社受けた面接を経てようやく受け入れてもらえたナントカ商事ってとこの試用期間を控えているらしい。
シンの柔らかな金髪が首にかかってくすぐったいけど、私はそっと目の前で抱えられてる両腕に触れ、ありがたく幸せのぬくもりを享受する。
それにしても、シンは目を輝かせて書類を見つめてニヤニヤしているけど、たかが書類1枚になぜそのような目ができるのか甚だ疑問だ。作業はできるから続きをしようと、2個目の連絡先に「父」の一画目を書いたところで、シンに腕を掴まれた。
「な、なに」
「俺の名は」
「へっ!?」
まさかシンの名前を書けということか。
「こういうのって夫の名前書くもんじゃねーの」
「でも、シンだって忙しくなるでしょ。お父さんでいいんじゃ」
「俺もう社会人だぜ」
いやお父さんが忙しくないとは言わないけど、地元でバチバチに不良してたシンが大学を経ずにいきなりオフィスで働くなんて相当苦労するっていうイメージのほうが私には大きく映った。
「俺も入社した暁には連絡先にお前の名前書くぜ。『朝倉アヤ(妻)』ってな」
シンは私の大好きな太陽の笑顔を向けた。
私たち、もう成人してるんだ。まだ高校を卒業したばかりだけど、これからの生活は私たちで作り上げるんだ。その事実を噛みしめるように、私はゆっくり「朝倉シン(夫)」と書いた。
大学に無事受かって春休みとはいえ、ゆっくりしている時間は意外となかった。2人暮らしの住居を内見することから始まり、引っ越しの荷造り、新しい家具の購入、住所変更の手続き……住居の契約書類はあらかた書き終わったところで、今度はリビングのローテーブルで入学書類を広げ、順番に必要事項を埋めていく。
「えーっと、緊急連絡先は、母で……あっ」
何回も書くうちに手が新しい住所を覚えたらしい。何も考えずに同じ住所を書きそうになった。気を取り直して、幼い頃から書き慣れた住所を埋めていく。来月からこの住み慣れた場所が実家というものになり、遠く離れた都会で二人暮らしするという実感はまだ湧かなかった。
「わっ」
連絡先を書き終えて、こういうのをあと枚数分書かなきゃか……とため息をついたところで背中にずっしり重さを感じた。
「ちょっと、危ないでしょ! ボールペン、消せないんだから」
「んー充電」
口では怒っちゃったけど、本音はうれしいからどこかむず痒い。両親の再婚で義姉弟として小学校の頃からずっと一緒にいたのに、こじれにこじれた末両想いとわかったのはつい最近。合格祝いと一緒に息をするようにプロポーズを受け、法律上でも正式に私の旦那様となった。そんな旦那様も、数十社受けた面接を経てようやく受け入れてもらえたナントカ商事ってとこの試用期間を控えているらしい。
シンの柔らかな金髪が首にかかってくすぐったいけど、私はそっと目の前で抱えられてる両腕に触れ、ありがたく幸せのぬくもりを享受する。
それにしても、シンは目を輝かせて書類を見つめてニヤニヤしているけど、たかが書類1枚になぜそのような目ができるのか甚だ疑問だ。作業はできるから続きをしようと、2個目の連絡先に「父」の一画目を書いたところで、シンに腕を掴まれた。
「な、なに」
「俺の名は」
「へっ!?」
まさかシンの名前を書けということか。
「こういうのって夫の名前書くもんじゃねーの」
「でも、シンだって忙しくなるでしょ。お父さんでいいんじゃ」
「俺もう社会人だぜ」
いやお父さんが忙しくないとは言わないけど、地元でバチバチに不良してたシンが大学を経ずにいきなりオフィスで働くなんて相当苦労するっていうイメージのほうが私には大きく映った。
「俺も入社した暁には連絡先にお前の名前書くぜ。『朝倉アヤ(妻)』ってな」
シンは私の大好きな太陽の笑顔を向けた。
私たち、もう成人してるんだ。まだ高校を卒業したばかりだけど、これからの生活は私たちで作り上げるんだ。その事実を噛みしめるように、私はゆっくり「朝倉シン(夫)」と書いた。