エスパーと天使~小話~
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傘がひとつしかないんだから
ない。いつもあるはずの紺色の棒めがけてリュック脇のポケットを掴んだ手は空を切った。昨日違うバッグ使ってたから、そっちに入れっぱなしにしちゃったんだ。靴を履いたあとにようやく気づいた自分に呆れた。次は気をつけようと思っているのに毎回これだ。一歩外出ればシャワーを浴びたように水浸しになるのは確実。
図書室で時間を潰すか? 天気予報を確認すれば、明日の朝まで雨は止みそうにないとのこと。スマホを眺めながら頭をかかえていると、ピロン、という通知音とともにバナーが降りた。
『傘忘れただろ』
今日もどこをほっつき歩いているのか知らない、義弟からの短いメッセージ。
『なんでわかったの』
『お前の傘がぶっささったバッグが家にあった』
もはや何時かわかんない時間に家を出入りしているヤンキーなのによく見ている。
『走って帰る』
「目の前に傘あるぜ」
「うわっ!?」
トーク画面とにらめっこしていた私は、目の前の影にやっと気づいた。私の頭上はビニール傘半分で覆われていた。
「あれ、私の傘は」
「一個でいーだろ」
シンは得意気に笑った。不良ぶってそっけなかった昔のシンはいなかった。もうぎこちなかった義姉弟じゃなくて、彼氏彼女なんだ、と実感してドキッとした。
最初のころは「泣く子も黙るジャックナイフが学校一のマドンナに声をかけている!?」と毎回どよめきが起こっていたが、今ではみんなこの光景に慣れてくれたようで、他の生徒たちは幸せを眺めるような(時にはリア充爆発しろという僻みのこもった)目で見ては通り過ぎていく。
さて、私たちも行くか。ありがたく傘に入れてもらうと、シンが傘を傾けてきた。でもシンの学ランが濡れちゃうから、私はそれをもとに戻して、その分シンの肩にピッタリと寄り添った。
「ばっか、歩きづれえだろ!」
自分から相合い傘を仕掛けておいて照れる恋人もまたかわいい。べつに私は悪くない。ひとつしか傘を持ってこなかったシンが悪いんだから。
ない。いつもあるはずの紺色の棒めがけてリュック脇のポケットを掴んだ手は空を切った。昨日違うバッグ使ってたから、そっちに入れっぱなしにしちゃったんだ。靴を履いたあとにようやく気づいた自分に呆れた。次は気をつけようと思っているのに毎回これだ。一歩外出ればシャワーを浴びたように水浸しになるのは確実。
図書室で時間を潰すか? 天気予報を確認すれば、明日の朝まで雨は止みそうにないとのこと。スマホを眺めながら頭をかかえていると、ピロン、という通知音とともにバナーが降りた。
『傘忘れただろ』
今日もどこをほっつき歩いているのか知らない、義弟からの短いメッセージ。
『なんでわかったの』
『お前の傘がぶっささったバッグが家にあった』
もはや何時かわかんない時間に家を出入りしているヤンキーなのによく見ている。
『走って帰る』
「目の前に傘あるぜ」
「うわっ!?」
トーク画面とにらめっこしていた私は、目の前の影にやっと気づいた。私の頭上はビニール傘半分で覆われていた。
「あれ、私の傘は」
「一個でいーだろ」
シンは得意気に笑った。不良ぶってそっけなかった昔のシンはいなかった。もうぎこちなかった義姉弟じゃなくて、彼氏彼女なんだ、と実感してドキッとした。
最初のころは「泣く子も黙るジャックナイフが学校一のマドンナに声をかけている!?」と毎回どよめきが起こっていたが、今ではみんなこの光景に慣れてくれたようで、他の生徒たちは幸せを眺めるような(時にはリア充爆発しろという僻みのこもった)目で見ては通り過ぎていく。
さて、私たちも行くか。ありがたく傘に入れてもらうと、シンが傘を傾けてきた。でもシンの学ランが濡れちゃうから、私はそれをもとに戻して、その分シンの肩にピッタリと寄り添った。
「ばっか、歩きづれえだろ!」
自分から相合い傘を仕掛けておいて照れる恋人もまたかわいい。べつに私は悪くない。ひとつしか傘を持ってこなかったシンが悪いんだから。