生えてたら、触りたくなるものだろ?
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何だこの状況は。佐野家に着き、騒がしい声を辿って庭へ行ったのだが。
ワカの頭には動物の耳、下半身には尻尾。
真一郎が猫じゃらしをワカの顔の前で揺らし、エマと万次郎がワカに付いている動物の耳を触っている。
「あっ! ネェ!」
「おー来た来た」
エマと真一郎がこちらに気づいた。
「はっ!? ……おい、なんでオマエがここにいる」
私の存在に気づいたワカが訝しげに問う。あ、尻尾がピンってなった。てことは、あれは付けてるんじゃなくて、生えてるってことか? てっきり真一郎たちに仮装か何かで付けさせられてるのかと思ってたのに。
「真一郎とエマに呼ばれた」
私が答えた瞬間、ワカは真一郎の鳩尾に一撃を食らわす。なんでオレだけ……と言い残して真一郎は気絶した。
「オレもっと触るー!」
「ダーメ! ウチらはもうさんざん触ったでしょ! 次はシズネェの番よ」
万次郎が駄々をこねるも、エマがピシャリと言って万次郎を引きずっていった。別に一緒にいてもいいのに。ああしてみるとエマのほうが万次郎のお姉ちゃんしてるな。妹だがな。
私はワカに近づき、改めて生えてる物を観察する。
これは……豹だ。しかも白い。白豹だ。狙ったのか?
ワカの顔は頬から耳まで真っ赤に染まっている。
……いや駄目だ。触ったりしたら止まらなくなる。私が。
私は邪心を打ち消そうと、全力で首を横に振る。
「……触りたきゃ触れよ」
「い、いや別にそんなこと」
「手がプルプル震えてんぞ」
言ったな? じゃあ遠慮なく。
まず耳を撫でてみる。ワカは目を細め、ん、と声を漏らした。
ワカのフサフサな白髪も相まって、本当に豹を撫でている気分になる。
尻尾はユラユラとゆっくり揺れていた。
ここで倒れている真一郎の手から猫じゃらしを抜き取る。ワカの前で振ってみた。ワカは顔をしかめて耐えるような表情になる。面白かったのでもう少し魅力的に見えるように振る。ワカの尻尾はくねくねと動いていた。
「くっ……おい、バカにしてんのか?」
「口のわりには嬉しそうだが」
「これが嬉しそうに見えるか?」
「尻尾でバレバレだ」
「なんで知ってんだよ」
「圭介に猫の尻尾の意味は一通り教わったからな」
アイツ余計なことを……とワカが恨めしそうにこぼす。
そして、尻尾にそっと指で触れる。ワカの身体は一瞬跳ねたが、尻尾の付け根を心地よく撫でれば、私の手首に尻尾を絡ませてきた。
「おいっ! それ以上、は……やめ、ろっ……」
普段は余裕な顔を崩さないワカが、顔を真っ赤にして焦っている。よほど気持ちいいのか、頭を私の肩に預けてきた。
それにしても、なんて素晴らしい毛並みだ。これとワカを同時に堪能できるのだ。もう一生触っていたい。
まあ大半はこの特殊な耳と尻尾に感謝すべきだが、結果としてワカのこんな姿を見ることができたのだ。
もっと構い倒してやろうと思った矢先――ワカに生えていた白豹の耳と尻尾は徐々に透ける。数十秒後にはきれいさっぱりなくなってしまった。
ワカは猫、いやネコ科特有の感覚から解放されたのか、こちらにもたれていた身体を起こし、私をじっと見据えた。その目を見て、私は身の危険を感じ、距離を取る。
「……テメエ」
「っ……こ、これから夕食の支度をしないとなんだ。私は帰るぞ、ワカ。帰り、気をつけてな」
私はそそくさと家に向かった。ワカの拘束に引っかかる前に気づけてよかった。一度捕まると、ねちっこく絡まれて抜け出すタイミングを見失うからな。
あの目は完全に怒っていた。からかいすぎたようだ。だが今日くらいは許せ。いつもワカがしていることを、同じように返してやっただけだ。
数日後、仕返しと言わんばかりの酷い目に逢うとは、このとき気づきもしなかった。
***
静紀は散々若狭のことをいじり倒した挙句、彼の怒りも受け取らずに逃げてしまった。
外は暗くなっていて、佐野家から規則正しい包丁の音を聴き始めた若狭は、これ以上居座るわけにもいかないと思い、家までバイクを飛ばす。
家に着いた彼は小腹が空き、テーブルに置いてある菓子の中から、適当に1つ取って口に入れた。これらは1週間前に帰ってきた、若狭の母の旅行土産である。昨日も、飢え死にしそうと思うほどにお腹が空いていたときにここの菓子置き場に寄ったものだ。
昨日ほどお腹が空いておらず、冷静になっていた若狭は、ふと、とある菓子のパッケージに目をやる。
『効果が出るのは1日後に2時間☆お菓子の形どおりの動物になれるよ♡』
ぼーっとその文言を眺め、意味を理解した若狭の手から、今食べようとしていた菓子が零れ落ちた。
……そういえばなんかそんな形のヤツだったか? てかこんな怪しい菓子持ち帰るとかおふくろ頭イカれてんのか?
若狭はさっきまで自分に生えていた豹のパーツと昨日食べた菓子の記憶を擦り合わせる。ついでに母の性格を案じた。
興味本位で、昨日食べた菓子を漁る。犬、猫、猿、ツバメ……生物の括りが広かった。
若狭はとある動物に目をつける。
「……ふーん」
彼の手には――ウサギの形をしたものが握られていた。
「アイツ、次の土日どっちも休みだったよな……」
若狭は壁に掛かったカレンダーを一瞥してから、手元のウサギに視線を戻す。このとき、彼の口元は妖艶な笑みを浮かべていた。
ワカの頭には動物の耳、下半身には尻尾。
真一郎が猫じゃらしをワカの顔の前で揺らし、エマと万次郎がワカに付いている動物の耳を触っている。
「あっ! ネェ!」
「おー来た来た」
エマと真一郎がこちらに気づいた。
「はっ!? ……おい、なんでオマエがここにいる」
私の存在に気づいたワカが訝しげに問う。あ、尻尾がピンってなった。てことは、あれは付けてるんじゃなくて、生えてるってことか? てっきり真一郎たちに仮装か何かで付けさせられてるのかと思ってたのに。
「真一郎とエマに呼ばれた」
私が答えた瞬間、ワカは真一郎の鳩尾に一撃を食らわす。なんでオレだけ……と言い残して真一郎は気絶した。
「オレもっと触るー!」
「ダーメ! ウチらはもうさんざん触ったでしょ! 次はシズネェの番よ」
万次郎が駄々をこねるも、エマがピシャリと言って万次郎を引きずっていった。別に一緒にいてもいいのに。ああしてみるとエマのほうが万次郎のお姉ちゃんしてるな。妹だがな。
私はワカに近づき、改めて生えてる物を観察する。
これは……豹だ。しかも白い。白豹だ。狙ったのか?
ワカの顔は頬から耳まで真っ赤に染まっている。
……いや駄目だ。触ったりしたら止まらなくなる。私が。
私は邪心を打ち消そうと、全力で首を横に振る。
「……触りたきゃ触れよ」
「い、いや別にそんなこと」
「手がプルプル震えてんぞ」
言ったな? じゃあ遠慮なく。
まず耳を撫でてみる。ワカは目を細め、ん、と声を漏らした。
ワカのフサフサな白髪も相まって、本当に豹を撫でている気分になる。
尻尾はユラユラとゆっくり揺れていた。
ここで倒れている真一郎の手から猫じゃらしを抜き取る。ワカの前で振ってみた。ワカは顔をしかめて耐えるような表情になる。面白かったのでもう少し魅力的に見えるように振る。ワカの尻尾はくねくねと動いていた。
「くっ……おい、バカにしてんのか?」
「口のわりには嬉しそうだが」
「これが嬉しそうに見えるか?」
「尻尾でバレバレだ」
「なんで知ってんだよ」
「圭介に猫の尻尾の意味は一通り教わったからな」
アイツ余計なことを……とワカが恨めしそうにこぼす。
そして、尻尾にそっと指で触れる。ワカの身体は一瞬跳ねたが、尻尾の付け根を心地よく撫でれば、私の手首に尻尾を絡ませてきた。
「おいっ! それ以上、は……やめ、ろっ……」
普段は余裕な顔を崩さないワカが、顔を真っ赤にして焦っている。よほど気持ちいいのか、頭を私の肩に預けてきた。
それにしても、なんて素晴らしい毛並みだ。これとワカを同時に堪能できるのだ。もう一生触っていたい。
まあ大半はこの特殊な耳と尻尾に感謝すべきだが、結果としてワカのこんな姿を見ることができたのだ。
もっと構い倒してやろうと思った矢先――ワカに生えていた白豹の耳と尻尾は徐々に透ける。数十秒後にはきれいさっぱりなくなってしまった。
ワカは猫、いやネコ科特有の感覚から解放されたのか、こちらにもたれていた身体を起こし、私をじっと見据えた。その目を見て、私は身の危険を感じ、距離を取る。
「……テメエ」
「っ……こ、これから夕食の支度をしないとなんだ。私は帰るぞ、ワカ。帰り、気をつけてな」
私はそそくさと家に向かった。ワカの拘束に引っかかる前に気づけてよかった。一度捕まると、ねちっこく絡まれて抜け出すタイミングを見失うからな。
あの目は完全に怒っていた。からかいすぎたようだ。だが今日くらいは許せ。いつもワカがしていることを、同じように返してやっただけだ。
数日後、仕返しと言わんばかりの酷い目に逢うとは、このとき気づきもしなかった。
***
静紀は散々若狭のことをいじり倒した挙句、彼の怒りも受け取らずに逃げてしまった。
外は暗くなっていて、佐野家から規則正しい包丁の音を聴き始めた若狭は、これ以上居座るわけにもいかないと思い、家までバイクを飛ばす。
家に着いた彼は小腹が空き、テーブルに置いてある菓子の中から、適当に1つ取って口に入れた。これらは1週間前に帰ってきた、若狭の母の旅行土産である。昨日も、飢え死にしそうと思うほどにお腹が空いていたときにここの菓子置き場に寄ったものだ。
昨日ほどお腹が空いておらず、冷静になっていた若狭は、ふと、とある菓子のパッケージに目をやる。
『効果が出るのは1日後に2時間☆お菓子の形どおりの動物になれるよ♡』
ぼーっとその文言を眺め、意味を理解した若狭の手から、今食べようとしていた菓子が零れ落ちた。
……そういえばなんかそんな形のヤツだったか? てかこんな怪しい菓子持ち帰るとかおふくろ頭イカれてんのか?
若狭はさっきまで自分に生えていた豹のパーツと昨日食べた菓子の記憶を擦り合わせる。ついでに母の性格を案じた。
興味本位で、昨日食べた菓子を漁る。犬、猫、猿、ツバメ……生物の括りが広かった。
若狭はとある動物に目をつける。
「……ふーん」
彼の手には――ウサギの形をしたものが握られていた。
「アイツ、次の土日どっちも休みだったよな……」
若狭は壁に掛かったカレンダーを一瞥してから、手元のウサギに視線を戻す。このとき、彼の口元は妖艶な笑みを浮かべていた。