静紀の手を借りつつ真一郎が目の前の課題に引き続き悪戦苦闘している中、後から来た3人は各々の方法で佐野家でくつろぐことにした。真一郎の家によく現れる男たちは、いつしか私物の一部を真一郎の部屋に置いていったりした。武臣と慶三は真一郎の部屋に行き、女子の前では話せないような話題に花を咲かせる。

「この条件で円の性質といったらだいたいこのぐらいに絞られるぞ」
「……あ！ これでいけるぜ！ サンキューな！」

　静紀は真一郎が詰まるところを的確に捉え、それに対し適切なヒントを送る。普段何かと鈍感な真一郎も理解できるほど、静紀の教え方には不思議な力があった。

「……ワカ、1回離れろ暑いぞ。あと髪がくすぐったい」

　若狭はずっと静紀にべったりだった。静紀の言葉に反するかのように、彼は静紀のうなじに髪を擦り付けたり、舌を這わせたりする。それにムズムズして静紀の顔は歪むも、彼女は変な声が出そうになるのをなんとか抑えながら、自分の作業も進めた。

　静紀が用を足しに和室から出たとき、真一郎は今まで我慢していたことをぶちまける。

「オマエ、オレがいる前でイチャついて楽しいか！？ 何かのあてつけ！？」
「んなわけねえじゃんシズはあてつけに利用されるほど安い女じゃねえよ」
「オレにはそうしか見えなかった！！ てかここまで我慢したオレを褒めろよ！」
「オレはただシズのすまし顔をくずしてえの。あと快感に慣れさせる」

　屈託のない笑みで卑猥に聞こえかねない発言をする若狭に真一郎は引いた。

「どうしよ……シズがいろいろとアブナイ……」
「安心して真ちゃん、成人までは手出さねえから……多分」
「そこは自信持って言えよ。てかホントに待てんの？」
「今の状態でアイツに手出したら止まんなくなる。傷つけて嫌われたくねえしな」

　ワカが人にどう思われるか気にしてるだと……！？

　女に声をかけられても興味なさげに振る舞うか、羽のように軽い言葉を並べてあしらうような若狭を定期で見ている真一郎は驚く。だがそれと同時に、静紀がワカにそれほど大切に思われていることも知る。

「ついでに胸も育てたいし♡」

　真一郎が若狭の顔目掛けて拳を振るう。だが回避された。
　白豹は好いた女が自分のものになってもなお、色んな方面から堕としにかかることを怠らない。