もう一人の生きる伝説~小話~

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夢主の下の名前
夢主のあだ名
夢主の女友達

 目が覚めて、いつもの白い天井をボーッと見つめる。まだ六時を回っていなかったが、照明がなくても動けるほどに明るかった。

「……っ、ん、ぅッ……」

 うめき声が聞こえて寝返りをうつ。涼しい朝だというのに、ワカは額に冷や汗を浮かべ、眉間に皺を寄せていた。

「はぁ、……シズッ……いくなッ……」

 寝言はところどころしか聴き取れないが、とにかくワカは私の名前を繰り返す。手はシーツの上をさまよっていた。

 ワカの手が収まるように私はその手を握る。その拍子に、ワカは重いまぶたをゆっくりと開けた。ワカのこめかみから目に伝いそうな汗を指で拭ってから、私は安心させるようにワカの頬にそっと手を乗せる。

「うなされてたぞ」

 息もせず固まっていたワカがはぁーっと一息ついてから、私をギュッと抱きしめた。

「……オマエが突然いなくなる夢を見た」

 私には到底想像つかないことだが、コイツがわざわざ言うほど、鮮明なものだったのだろう。黙って聞くことにした。

「気づいたらオレ、ヤクザになってて、オマエは殺し屋してた。なんとか繋ぎ止めたはずなのに、オマエはオレの知らないとこで殴り殺されてて……」

 ワカの手に力が入り、私の顔がワカの胸板に押し付けられる。けれど、その腕は声と同じように震えていた。私は腕からなんとか這い出て、触れるだけの唇を重ねた。

「私はここにいる。不安なら、いつでも触れ」

 お前がいたから、私の世界は色づいた。知らなかった感情もたくさん知った。今更、離れるわけがない。

 ワカは切なそうに目を細めて後頭部に手を回し、私の口内を余すとこなく貪る。私もワカの存在を確かめるようにその舌触りを堪能する。それから私たちは、涼しい朝がくることはお構いなしに、互いに熱を求めあった。
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