朝起きたらS.S.M.にいた
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「いやわかんねえよ」
「だーかーらー! シズは今オレでオレは今シズなの!」
起きたらシズがオレのシャツを着ていて、ムラっとしたからもう1ラウンドしようかというところだった。真ちゃんが玄関先で自分の名前を叫ぶという怪奇現象に遭遇し、シズが突然つっ走ってオレもあとを追いかけたらこの有様である。オレは何回も説明されて、2人が入れ替わったという事実をようやく理解した。
信じがたいが、このテンションとどこか人懐っこい喋り方は確かに真ちゃんだ。体はシズだが。そして隣にいる見た目真ちゃんのヤツも、サバサバした物言いとか、目がキリッとしてるとことか、雰囲気は完全にシズだった。
「で、どうする」
シズ――ただし身体は真ちゃん――が眉をひそめて問う。
「オレとシズはどっちも休みだから家でゆっくりしようと思ってたんだけど。真ちゃんは?」
「店は休みなんだが……明日までに見ねえといけねえバイクが何個か」
***
3人は真一郎の店、S・S MOTORSで過ごすことにした。
真一郎──ただし身体は静紀──は彼女の服を着たままバイクと向き合っている。最初ツナギに着替えようとしたがサイズが合わなすぎて結局そのまま作業した。そのそばで、静紀は大学の勉強を進めていた。若狭はそんな2人の見張り役である。
定休日の看板を掲げているので普通の客は入ってこない。普通の客は。
「おい真いるかー?」
「来てやったぞー……って、なんでシズがバイクいじってんだ?」
武臣と慶三が入ってきた。後ろには青宗もいる。定休日でも真一郎が普通に店内にいることを知る人たちが入ってきてしまった。見られてしまったうえ、長年の付き合いである彼らに対してごまかせるはずもないことをわかっている真一郎と静紀は、事の次第を話した。
***
オレはベンケイと共にツーリングをしていた。ついでに真の店に寄ろうということになり、途中で偶然青宗と出会って3人でS・S MOTORSに入った。
驚いたわ。シズがバイクを触っていたからな。
アイツは大学生のときにようやくバイクの免許を取って乗り始めたのでバイク歴は浅い。そんなヤツが真のように黙々とバイクの修理をしていたら、当然理解に苦しむ。話を聞けば真とシズの中身が入れ替わったとか。
話を聞いている間、オレらは笑いをこらえるのに必死だった。だって真が「私」って……。
「で、戻れねえのか?」
「それが分かったら私はここにいない」
ベンケイの問いにシズが困ったように答える。
「ありがちなのはぶつかったら入れ替わったとか」
オレはマンガでありそうな展開を提案してみる。
真とシズは頭をコツンとぶつけあった。だが戻らない。
「じゃあキスか?」
「了解」
「んん……」
中身シズの真が中身真のシズの口に触れるだけのキスをした。
「変な声出すな」
「しょーがねーだろ出るモンは出ちまうんだよ! オメーの体の感覚鋭すぎんのがわりぃ! オマエためらいとかねえの!?」
「戻るためだ。背に腹はかえられん」
いや武士かよ。後ろでワカ不機嫌オーラ丸出しだぞ。それにしても戻らない。
「真一郎君、昨日は何してたの?」
青宗が尋ねる。
「オレはずっとバイクいじってて風呂入ってそのまんま寝た」
「シズさんは?」
「昨日は……」
シズは顔を真っ赤にして頭を抱える。大人組は察した。
「青宗にはまだはえーな」
ベンケイがそう言ってなんとかごまかした。
***
結局私の家で3人一緒に過ごして明日の朝また様子を見ることになった。
「昨日と同じことするのはどうなの?」 と青宗は言ったのだが、私の知らないところで自分の身体を好き勝手されるなんてたまったものではない。
真一郎の本日分の仕事が終わり、今はワカと真一郎と私の3人で、家に向かっているところであったのだが。
「……真一郎?」
私とワカは後ろを振り向いた。いつの間にか真一郎はどこかへ消えていた。
「テメーら女相手に何してんだよ!」
遠くから私の声が聞こえてきた。その一言であらかたの状況は想像できた。それはワカも同じようで、私たちは一瞬アイコンタクトをする。
「真一郎め……」
声が聞こえたところまで走る。路地裏で高校生くらいの女の子がガラの悪い男4人に囲まれており、真一郎がその子を庇うようにして立っていた。
「あ? テメーもヤられてーのか?」
「オレはオマエらをぶっ飛ばしに来たんだよ!!」
「このチビ舐めた口ききやがって……」
男が私の体をした真一郎に殴り掛かる。
ワカがソイツに飛び蹴りを食らわし、私は他の男を空手を用いてノす。なんかいつもより技が楽に決まった。真一郎、体格はいいんだから真面目に練習すれば……と思ったがそれは心に留めておいた。
「真ちゃんその状態で行ったらダメだって。シズの体に傷がついたらどうすんの」
私の体をいたわるワカの発言にキュンとしながら、私は後ろで怯えていた女の子に近寄った。その子と目線の高さを合わせるために私はいつもより深く屈んで「もう大丈夫だよ」と声をかける。
「あの!……何かお礼を」
「お礼はいい。君が無事ってことが確認できたのが、私にとって1番のお礼だ」
私は外見が真一郎であることをすっかり忘れて、いつも通りに返していた。
彼女は頬を染めて、またお礼を言って去っていった。
「……ありゃ惚れたな」
「え」
「マジ!?」
どうしようそんなつもりはなかった。真一郎の姿で惚れられても、残念ながら今の中身は私だ。
「まあ名前も聞かずに行っちゃったからもう会うことはないと思うけどネ」
「クソーあんなかわいい子めったにいないのに! もうちょっと引き止めろよ!」
オレの出会いを1個奪いやがって、と私は真一郎にドヤされた。だが私にあたるのはお門違いだ。あとは自分で頑張れ。
翌日、私と真一郎は無事元に戻った。
数日後、真一郎はあの日助けた女の子に奇跡的に再会して告白したものの、なんかイメージと違うと言われてすぐに振られてしまったとか。
「だーかーらー! シズは今オレでオレは今シズなの!」
起きたらシズがオレのシャツを着ていて、ムラっとしたからもう1ラウンドしようかというところだった。真ちゃんが玄関先で自分の名前を叫ぶという怪奇現象に遭遇し、シズが突然つっ走ってオレもあとを追いかけたらこの有様である。オレは何回も説明されて、2人が入れ替わったという事実をようやく理解した。
信じがたいが、このテンションとどこか人懐っこい喋り方は確かに真ちゃんだ。体はシズだが。そして隣にいる見た目真ちゃんのヤツも、サバサバした物言いとか、目がキリッとしてるとことか、雰囲気は完全にシズだった。
「で、どうする」
シズ――ただし身体は真ちゃん――が眉をひそめて問う。
「オレとシズはどっちも休みだから家でゆっくりしようと思ってたんだけど。真ちゃんは?」
「店は休みなんだが……明日までに見ねえといけねえバイクが何個か」
***
3人は真一郎の店、S・S MOTORSで過ごすことにした。
真一郎──ただし身体は静紀──は彼女の服を着たままバイクと向き合っている。最初ツナギに着替えようとしたがサイズが合わなすぎて結局そのまま作業した。そのそばで、静紀は大学の勉強を進めていた。若狭はそんな2人の見張り役である。
定休日の看板を掲げているので普通の客は入ってこない。普通の客は。
「おい真いるかー?」
「来てやったぞー……って、なんでシズがバイクいじってんだ?」
武臣と慶三が入ってきた。後ろには青宗もいる。定休日でも真一郎が普通に店内にいることを知る人たちが入ってきてしまった。見られてしまったうえ、長年の付き合いである彼らに対してごまかせるはずもないことをわかっている真一郎と静紀は、事の次第を話した。
***
オレはベンケイと共にツーリングをしていた。ついでに真の店に寄ろうということになり、途中で偶然青宗と出会って3人でS・S MOTORSに入った。
驚いたわ。シズがバイクを触っていたからな。
アイツは大学生のときにようやくバイクの免許を取って乗り始めたのでバイク歴は浅い。そんなヤツが真のように黙々とバイクの修理をしていたら、当然理解に苦しむ。話を聞けば真とシズの中身が入れ替わったとか。
話を聞いている間、オレらは笑いをこらえるのに必死だった。だって真が「私」って……。
「で、戻れねえのか?」
「それが分かったら私はここにいない」
ベンケイの問いにシズが困ったように答える。
「ありがちなのはぶつかったら入れ替わったとか」
オレはマンガでありそうな展開を提案してみる。
真とシズは頭をコツンとぶつけあった。だが戻らない。
「じゃあキスか?」
「了解」
「んん……」
中身シズの真が中身真のシズの口に触れるだけのキスをした。
「変な声出すな」
「しょーがねーだろ出るモンは出ちまうんだよ! オメーの体の感覚鋭すぎんのがわりぃ! オマエためらいとかねえの!?」
「戻るためだ。背に腹はかえられん」
いや武士かよ。後ろでワカ不機嫌オーラ丸出しだぞ。それにしても戻らない。
「真一郎君、昨日は何してたの?」
青宗が尋ねる。
「オレはずっとバイクいじってて風呂入ってそのまんま寝た」
「シズさんは?」
「昨日は……」
シズは顔を真っ赤にして頭を抱える。大人組は察した。
「青宗にはまだはえーな」
ベンケイがそう言ってなんとかごまかした。
***
結局私の家で3人一緒に過ごして明日の朝また様子を見ることになった。
「昨日と同じことするのはどうなの?」 と青宗は言ったのだが、私の知らないところで自分の身体を好き勝手されるなんてたまったものではない。
真一郎の本日分の仕事が終わり、今はワカと真一郎と私の3人で、家に向かっているところであったのだが。
「……真一郎?」
私とワカは後ろを振り向いた。いつの間にか真一郎はどこかへ消えていた。
「テメーら女相手に何してんだよ!」
遠くから私の声が聞こえてきた。その一言であらかたの状況は想像できた。それはワカも同じようで、私たちは一瞬アイコンタクトをする。
「真一郎め……」
声が聞こえたところまで走る。路地裏で高校生くらいの女の子がガラの悪い男4人に囲まれており、真一郎がその子を庇うようにして立っていた。
「あ? テメーもヤられてーのか?」
「オレはオマエらをぶっ飛ばしに来たんだよ!!」
「このチビ舐めた口ききやがって……」
男が私の体をした真一郎に殴り掛かる。
ワカがソイツに飛び蹴りを食らわし、私は他の男を空手を用いてノす。なんかいつもより技が楽に決まった。真一郎、体格はいいんだから真面目に練習すれば……と思ったがそれは心に留めておいた。
「真ちゃんその状態で行ったらダメだって。シズの体に傷がついたらどうすんの」
私の体をいたわるワカの発言にキュンとしながら、私は後ろで怯えていた女の子に近寄った。その子と目線の高さを合わせるために私はいつもより深く屈んで「もう大丈夫だよ」と声をかける。
「あの!……何かお礼を」
「お礼はいい。君が無事ってことが確認できたのが、私にとって1番のお礼だ」
私は外見が真一郎であることをすっかり忘れて、いつも通りに返していた。
彼女は頬を染めて、またお礼を言って去っていった。
「……ありゃ惚れたな」
「え」
「マジ!?」
どうしようそんなつもりはなかった。真一郎の姿で惚れられても、残念ながら今の中身は私だ。
「まあ名前も聞かずに行っちゃったからもう会うことはないと思うけどネ」
「クソーあんなかわいい子めったにいないのに! もうちょっと引き止めろよ!」
オレの出会いを1個奪いやがって、と私は真一郎にドヤされた。だが私にあたるのはお門違いだ。あとは自分で頑張れ。
翌日、私と真一郎は無事元に戻った。
数日後、真一郎はあの日助けた女の子に奇跡的に再会して告白したものの、なんかイメージと違うと言われてすぐに振られてしまったとか。