真ちゃん、なに大事なこと黙ってんの?
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若狭と静紀が付き合うことになって数日後。
「シズー休憩しようぜ……死ぬ……」
「……あと1問な」
静紀は佐野道場1階の和室で、真一郎と円卓を囲んで夏休みの宿題をこなしていた。
彼女は自分の家で今日も黙々と自主稽古しようと着替えていたところ、真一郎が留年の危機だから助けてくれと彼の祖父である万作に電話で泣きつかれた。真一郎にとって、この宿題が留年回避の救済措置となっていたのだ。彼女もさすがに中学で留年はまずいと思い、真一郎とともに勉強することにした。
ちなみに静紀は夏休み前に学校で半分以上終わらせており、残り分をゆっくりと片付けるのみである。
今いる部屋の扉は全て開け、扇風機を回してはいるものの、真夏の暑さを吹き飛ばすにはあまりにも心もとなかった。
きりのいいところで2人は手を止める。静紀は冷蔵庫へ行き、2人分のお茶をついで真一郎のもとに戻る。
彼女は休憩がてら携帯を開く。ついこの前、若狭とともに行った水族館内でのツーショットの写真を眺める。写真を撮ってくれた係員に、「ステキなカップルですね!」と言われて胸が高鳴ったことを思い出す。
真一郎は携帯の画面を見て口角を緩ませている静紀を見る。
「っ!……シズ、オマエまさか……」
彼女の顔が、黒龍の集まりで若狭の隣にいるときと同じものであることに真一郎は気づく。静紀は何も言わずにそっぽを向き、自身の携帯で口元を隠してフッと微笑んだ。
真一郎は静紀の見ている写真を見ようと彼女の携帯に手を延ばす。彼女はなんとなく恥ずかしくなってその手を避ける。
「つれねえなあオレにも見せろよー」
「し、真一郎、ちょっ、やめっ、っくすぐったい!」
静紀の手を捕まえられないと判断した真一郎は、彼女の脇腹にコチョコチョを仕掛ける。静紀は生来常人より感覚が鋭いので擽りにはめっぽう弱い。そのくせ、声を抑えようと必死に我慢するので彼女から出る声は笑い声ではなくもはや喘ぎである。
「真ちゃんいるー?」
「潮風が気持ちーぞー」
「海沿い走ろうぜーって……え?」
「あ」
若狭、武臣、慶三が庭から顔を出す。だがすぐに3人は固まる。
彼らの目に映るのは、キャミソールにショーパンという露出の多い服を着た静紀が、タンクトップ姿の真一郎に押し倒されている光景である。さらに彼らが顔を出すよりわずかに早く、静紀の喘ぎ声は彼らの耳に届いていた。
暴走族の幹部といえど、中身は思春期真っ只中の男子たちがそのような光景を見たらどうなるだろうか。
「……テメエ死にてえようだな表出ろやコラ」
「わ、ワカ!? なんか誤解してるみてーだけどオマエが考えてるようなことはねーからってイタイイタタタタタ!!」
当然いかがわしい事を想像する。若狭は真一郎の首根っこを掴み、庭に連行する。そして潰れるのではないかというくらいの力で腕を強く握る。
「……なんでワカはあんなに怒ってんだ?」
静紀は若狭に連れていかれた真一郎を見ながらポツリと呟く。
「てか家族に触って何が悪いんだよ!?」
「ん? 家族?」
真一郎の叫びの中に、武臣が聞き覚えのない情報を認識する。一方真一郎の首に回されている若狭の腕の力が弱まることはなかった。
「オマエら幼馴染って言ってたよな?」
慶三は静紀と初めて出会った日を思い出して確認する。静紀は真一郎の言葉足らずを疑った。
「真一郎、言ってないのか?」
「そういえば性別と本名しか……言って……なかっ……た……」
真一郎は若狭に絞め技をかけられ、ダウン寸前だった。
***
「はあああああ!? はとこおおおお!?」
「ってなんだ?」
「さあ?」
武臣は大声を出して驚く。慶三と若狭はよくわかってないようだった。
「師範、つまり私の祖父と真一郎のおじいさんが兄弟」
「意外と遠いな」
慶三は初めて知った用語に率直な感想を述べる。
「法律上はギリ親族らしい」
静紀は師範から聞いたことを喋る。確かにいとこに比べれば馴染みは薄く、血縁も遠いものの、彼女にとって真一郎はずっと一緒にいる兄弟のような存在である。
「……あー」
「なんでそんな冷静なんだワカ」
さっきまでの怒りはどこいった、と武臣がつけ足す。
「まあ……言われてみれば似てるし」
若狭には心当たりが沢山あった。混じりけのない黒髪黒目、切れ長の目元、優しい性格など。だが、快活でいつも笑ってる真一郎に対し、静紀はあまり表情豊かではないから、2人の纏う雰囲気は全然違うものだった。パッと見では似てると思う人はなかなかいないものである。
「小学校入る前にはもう真一郎と会ってお互いの家行き来してるし。たまに一緒に風呂入ってお泊まりしてたし」
「安心しろワカ! コイツは妹みてえなもんだ。コイツの裸を見たってなんとも思わねえ!」
若狭が真一郎のすねを蹴り、真一郎は唸り声を出して痛みに悶える。武臣と慶三は、コイツってやっぱ一言多いよな、と心の中で同じことを思った。
「シズー休憩しようぜ……死ぬ……」
「……あと1問な」
静紀は佐野道場1階の和室で、真一郎と円卓を囲んで夏休みの宿題をこなしていた。
彼女は自分の家で今日も黙々と自主稽古しようと着替えていたところ、真一郎が留年の危機だから助けてくれと彼の祖父である万作に電話で泣きつかれた。真一郎にとって、この宿題が留年回避の救済措置となっていたのだ。彼女もさすがに中学で留年はまずいと思い、真一郎とともに勉強することにした。
ちなみに静紀は夏休み前に学校で半分以上終わらせており、残り分をゆっくりと片付けるのみである。
今いる部屋の扉は全て開け、扇風機を回してはいるものの、真夏の暑さを吹き飛ばすにはあまりにも心もとなかった。
きりのいいところで2人は手を止める。静紀は冷蔵庫へ行き、2人分のお茶をついで真一郎のもとに戻る。
彼女は休憩がてら携帯を開く。ついこの前、若狭とともに行った水族館内でのツーショットの写真を眺める。写真を撮ってくれた係員に、「ステキなカップルですね!」と言われて胸が高鳴ったことを思い出す。
真一郎は携帯の画面を見て口角を緩ませている静紀を見る。
「っ!……シズ、オマエまさか……」
彼女の顔が、黒龍の集まりで若狭の隣にいるときと同じものであることに真一郎は気づく。静紀は何も言わずにそっぽを向き、自身の携帯で口元を隠してフッと微笑んだ。
真一郎は静紀の見ている写真を見ようと彼女の携帯に手を延ばす。彼女はなんとなく恥ずかしくなってその手を避ける。
「つれねえなあオレにも見せろよー」
「し、真一郎、ちょっ、やめっ、っくすぐったい!」
静紀の手を捕まえられないと判断した真一郎は、彼女の脇腹にコチョコチョを仕掛ける。静紀は生来常人より感覚が鋭いので擽りにはめっぽう弱い。そのくせ、声を抑えようと必死に我慢するので彼女から出る声は笑い声ではなくもはや喘ぎである。
「真ちゃんいるー?」
「潮風が気持ちーぞー」
「海沿い走ろうぜーって……え?」
「あ」
若狭、武臣、慶三が庭から顔を出す。だがすぐに3人は固まる。
彼らの目に映るのは、キャミソールにショーパンという露出の多い服を着た静紀が、タンクトップ姿の真一郎に押し倒されている光景である。さらに彼らが顔を出すよりわずかに早く、静紀の喘ぎ声は彼らの耳に届いていた。
暴走族の幹部といえど、中身は思春期真っ只中の男子たちがそのような光景を見たらどうなるだろうか。
「……テメエ死にてえようだな表出ろやコラ」
「わ、ワカ!? なんか誤解してるみてーだけどオマエが考えてるようなことはねーからってイタイイタタタタタ!!」
当然いかがわしい事を想像する。若狭は真一郎の首根っこを掴み、庭に連行する。そして潰れるのではないかというくらいの力で腕を強く握る。
「……なんでワカはあんなに怒ってんだ?」
静紀は若狭に連れていかれた真一郎を見ながらポツリと呟く。
「てか家族に触って何が悪いんだよ!?」
「ん? 家族?」
真一郎の叫びの中に、武臣が聞き覚えのない情報を認識する。一方真一郎の首に回されている若狭の腕の力が弱まることはなかった。
「オマエら幼馴染って言ってたよな?」
慶三は静紀と初めて出会った日を思い出して確認する。静紀は真一郎の言葉足らずを疑った。
「真一郎、言ってないのか?」
「そういえば性別と本名しか……言って……なかっ……た……」
真一郎は若狭に絞め技をかけられ、ダウン寸前だった。
***
「はあああああ!? はとこおおおお!?」
「ってなんだ?」
「さあ?」
武臣は大声を出して驚く。慶三と若狭はよくわかってないようだった。
「師範、つまり私の祖父と真一郎のおじいさんが兄弟」
「意外と遠いな」
慶三は初めて知った用語に率直な感想を述べる。
「法律上はギリ親族らしい」
静紀は師範から聞いたことを喋る。確かにいとこに比べれば馴染みは薄く、血縁も遠いものの、彼女にとって真一郎はずっと一緒にいる兄弟のような存在である。
「……あー」
「なんでそんな冷静なんだワカ」
さっきまでの怒りはどこいった、と武臣がつけ足す。
「まあ……言われてみれば似てるし」
若狭には心当たりが沢山あった。混じりけのない黒髪黒目、切れ長の目元、優しい性格など。だが、快活でいつも笑ってる真一郎に対し、静紀はあまり表情豊かではないから、2人の纏う雰囲気は全然違うものだった。パッと見では似てると思う人はなかなかいないものである。
「小学校入る前にはもう真一郎と会ってお互いの家行き来してるし。たまに一緒に風呂入ってお泊まりしてたし」
「安心しろワカ! コイツは妹みてえなもんだ。コイツの裸を見たってなんとも思わねえ!」
若狭が真一郎のすねを蹴り、真一郎は唸り声を出して痛みに悶える。武臣と慶三は、コイツってやっぱ一言多いよな、と心の中で同じことを思った。
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