ロン夢
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もう黒蜜は食べません
(ロンが元気に探偵として活躍してる世界線)
「お、おわったぁー」
終業と同時に私の身体は椅子からずり落ち、怠惰の床に受けとめられた。やわらかい。このクッション、ありがたすぎる。疲れた身体にしみる優しい弾力。時計を見るともう9時。仕事中は時間や疲れを忘れて作業できるものだが、いざ仕事が終わって集中が切れると、それまで忘れていた疲れがどっと押し寄せてくる。ホワイトハッカーの仕事に昼夜はないので今日はまだ健全な時間に終わった。
昼夜を問わない生活はいつものこととはいえ。ひと仕事終えれば、頭は無性に糖分がほしくなる。起き上がるのも面倒なので這いつくばって冷蔵庫まで行く。中を漁ると、チョコレートしゅーくりーむがあるではないか。パッケージの黒色が見えてから手にとるまで一秒もかからなかった。チョコホイップと生ホイップのツインシュー。いかにも不健康な甘さだった。それにしてもチョコってこんなに甘かったっけ。まあそんなことはどうでもいい。美味しければ、今は糖分を摂ればなんでもいい。お菓子を摂取して安心しきった身体は自然と私を眠りに誘うのだった。
***
なんだこの状況は。目覚めてすぐに恋人の視線に刺されるとか嫌すぎる。何でそんな人の寝てる様子を見るんだ。しかも不機嫌だし。疲れ果てて怠惰の床で寝てしまったはずの私だが、次に目覚めたときにはベッドの上にいた。寝返りをうって目に入ったのは、むすっとした顔でこちらを見つめてくるロン。重ね合わせた両手に顎をのせ、両肘をベッドにつけ、こちらを見下ろしていた。
「な、なんなのよさっきから」
「……食べただろう」
「は?」
「食べただろう! 僕の黒蜜シュークリームを!」
「くろみつしゅーくり、む……? ……あ」
あの変わった味は黒蜜だったのか。疲れすぎて、ただうまいうまいと糖分を摂取していたから、いつもロンから与えられてる黒蜜だってことを認識するヒマもなかった。この恋人はとんでもなく黒蜜厨なのだ。身体が黒蜜でできてるのかってくらいヒマさえあれば黒蜜を飲み、黒蜜を補充すれば推理が冴え渡り、黒蜜が不足すれば風邪をひくというなんとも不思議な体質。ただの好物ってレベルではないのだ。その男の、黒蜜を奪ってしまったのだ、私は。
「ごめんなさい許してもう一個買ってくるから!」
とりあえず速攻で謝った。黒蜜の対価を差し出さないと私が色々と死ぬのは身を持って知っている。
「無駄だよ、昨日までの限定商品がもう売ってるわけないだろう」
「なんでもするから許して!」
「なんでも?」
「あっ……」
しまった…そう思ったときには手遅れだった。今更己の発言は撤回できないしこの男は聞き入れないだろう。
あぁ…やはり私はこの男に――
「なんでも、と言ったね?…さて、何をしてもらおうか」
今日も勝てる気がしない。
(ロンが元気に探偵として活躍してる世界線)
「お、おわったぁー」
終業と同時に私の身体は椅子からずり落ち、怠惰の床に受けとめられた。やわらかい。このクッション、ありがたすぎる。疲れた身体にしみる優しい弾力。時計を見るともう9時。仕事中は時間や疲れを忘れて作業できるものだが、いざ仕事が終わって集中が切れると、それまで忘れていた疲れがどっと押し寄せてくる。ホワイトハッカーの仕事に昼夜はないので今日はまだ健全な時間に終わった。
昼夜を問わない生活はいつものこととはいえ。ひと仕事終えれば、頭は無性に糖分がほしくなる。起き上がるのも面倒なので這いつくばって冷蔵庫まで行く。中を漁ると、チョコレートしゅーくりーむがあるではないか。パッケージの黒色が見えてから手にとるまで一秒もかからなかった。チョコホイップと生ホイップのツインシュー。いかにも不健康な甘さだった。それにしてもチョコってこんなに甘かったっけ。まあそんなことはどうでもいい。美味しければ、今は糖分を摂ればなんでもいい。お菓子を摂取して安心しきった身体は自然と私を眠りに誘うのだった。
***
なんだこの状況は。目覚めてすぐに恋人の視線に刺されるとか嫌すぎる。何でそんな人の寝てる様子を見るんだ。しかも不機嫌だし。疲れ果てて怠惰の床で寝てしまったはずの私だが、次に目覚めたときにはベッドの上にいた。寝返りをうって目に入ったのは、むすっとした顔でこちらを見つめてくるロン。重ね合わせた両手に顎をのせ、両肘をベッドにつけ、こちらを見下ろしていた。
「な、なんなのよさっきから」
「……食べただろう」
「は?」
「食べただろう! 僕の黒蜜シュークリームを!」
「くろみつしゅーくり、む……? ……あ」
あの変わった味は黒蜜だったのか。疲れすぎて、ただうまいうまいと糖分を摂取していたから、いつもロンから与えられてる黒蜜だってことを認識するヒマもなかった。この恋人はとんでもなく黒蜜厨なのだ。身体が黒蜜でできてるのかってくらいヒマさえあれば黒蜜を飲み、黒蜜を補充すれば推理が冴え渡り、黒蜜が不足すれば風邪をひくというなんとも不思議な体質。ただの好物ってレベルではないのだ。その男の、黒蜜を奪ってしまったのだ、私は。
「ごめんなさい許してもう一個買ってくるから!」
とりあえず速攻で謝った。黒蜜の対価を差し出さないと私が色々と死ぬのは身を持って知っている。
「無駄だよ、昨日までの限定商品がもう売ってるわけないだろう」
「なんでもするから許して!」
「なんでも?」
「あっ……」
しまった…そう思ったときには手遅れだった。今更己の発言は撤回できないしこの男は聞き入れないだろう。
あぁ…やはり私はこの男に――
「なんでも、と言ったね?…さて、何をしてもらおうか」
今日も勝てる気がしない。