ロン夢
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【あらすじ】
豪華客船編終盤、船首にてロンとマイロの直接対決。追い詰められたマイロは、あらかじめ誘拐していた夢主を人質に、ロンの“犯人殺す病”に対抗する。視線がかち合うマイロとロンの間にいた夢主は「病のロン」と目が遭ってしまい、ナイフを自身の喉にゆったりと、躊躇なく向ける。「病」の中残っているわずかな理性と、後ろからの虎々丸の悲痛な叫びの中で「僕が声さえ出さなければ」「恋人を傷つけるくらいなら」と考え抜いた末、ロンは夢主からナイフを奪い、自身の声帯を掻き切った。
***
まただ。私はベッドに深く沈んで、ぼーっと天井を眺めることしかできなかった。
豪華客船で起きた事件について、詳しい話はトトから聞かされた。
ロンの入院しているところは、退院するまで家族以外の面会は許されなかった。意識が戻ったというのを電話越しに聞いただけ。
首から血を流して倒れるロン。長いまつげに伏せられ固く閉ざされたサファイアの瞳。生気を失っていくロンの顔、少しずつ冷えていったロンの身体。それらだけ、嫌でも鮮明に覚えていて、今でも夢に出てくる。そのたびに息ができない心地がして、ベッドで寝ていても一日の活力をすべて吸い取られるのだ。
だからこそ、退院祝いで病院を訪れ、庭で芽吹く大きな木を物憂げに眺めていたロンが見えたときは、人目もはばからずにロンの胸に突進したものだ。その後ロンがタブレット筆談で「情熱的だね」とわざわざハートマーク付きで返してきたときは、いつもの自分らしくないと我に返って恥ずかしくなったのだが。
ロンのお母さんの手紙からようやくエルマー君の正体を知ったり、血の実習事件の容疑が晴れてBLUEの卒業を認められたりとうれしいことが続いた。探偵免許取得試験も受けられるとシュピッツ経由で伝えられたときは、怠惰の床に倒れ、武者震いをしながら「さいこう」と口だけ動かしていたロン。声が出せていたらマンション中に響き渡るくらいに叫びたかったにちがいない。
それでも、私はなんだか心のつっかえが取れなかった。ロンの命が助かって探偵免許の取得も約束され、心から祝福しているはずなのに、私の口角はなんだか無理をして作り笑いを演じている気分になるのだ。
今日も拭いきれない違和感を抱えながら目覚めた……はずだった。
「おはよう」
気づけば後ろから抱きしめられていて、吐息が耳を掠めた。ああこれだ。2ヶ月ぶりに聞く、待ち焦がれていた、愛しい声。
「君はこうされるのが好きだからね。どう、驚いた?」
せき止めていた何かが、決壊した。腕を本気で振りほどいて寝返りをうち、あたたかい胸に飛び込んだ。きっと今から不細工な顔になるのは確定だろう。
「ばが!あほ!死ぬがどおもっだ!怖がっだんだがらぁ~!」
いくら命が助かっても、それだけでありがたいこととはいえ、もう恋人の声が聞けなくなるかもしれない、と。もし、喉が治らなかったら、と。こっちがどれだけ心配だったかも知らないで、いつものように飄々と私を惑わす恋人になけなしの罵詈雑言を投げつけた。ロンの服が汚れるのを気にする余裕もないほどに、こらえようとして喉の奥が痛くなろうと、涙はひとりでに溢れてくる。
わかってる。トトも腹を撃たれ、ロンが人を殺さないようにするには自身の喉を掻き切る以外に止める手段がなかったことを。マイロにされるがまま、ロンの「犯人殺す病」にかかるだけかかって、何もできなかった私。悔しくもあるんだ。自分の無力さに。トトは命がけでロンの相棒の努めを果たしているのに、私は……ロンの足枷にしかならなかった。それどころか、ロンが無理するのを止められないどころか、傷つけてしまった。
あのときも、ロンはこんな気持ちだったんだろうか。燃え盛るオーベルジュの館であの場にいた人たちを脱出させていたら、自分は逃げ遅れて。なんとかシュピッツのおかげもあって脱出できたけど、ロンだけでなくトトにも説教される始末だった。
ウィンターと直接対決した黙示録事件のあと、ロンに告白されてようやくお互いが大切な存在って認識できたわけだけど、それは大切な人を失う恐怖とも戦わなくてはいけない。けど。
私は、ロンの手を取ったのだから。これしきのことですぐ離れるような、そんな生ぬるい仲じゃない。ひとしきり泣いたおかげか、私が泣いている間ずっとロンが赤子をあやすように撫でてくれたおかげか、次第に落ち着きを取り戻すことができた。
「ねえ、リナ」
頭の上からロンの声が響いて胸から顔を出すと、ロンは両手で私の顔を包む。頬を親指で撫でながら、紺碧の双眸に目元が赤くなった私の顔を映した。
「そんなに僕の声聞きたかったのかい?」
「う、うるさいわよっ」
吐息混じりの囁きが、私の鼓膜を甘く震わす。ロンが入院している間感じられなかったお互いの熱を確かめあうように、私は腕にぎゅっと力をこめた。
***
【以下、読まなくてもいいあとがき】
たかが2000字の話に後書きってなにって感じですが熱烈な感想が来て謎に解釈深まったのでワイ的に頑張ったところを解説(?)していきます。
・クルーズ編終盤のシーンは回想ではなくリアルタイム描写にしたかったけどワイにはストーリー構築能力がなかったので回想に逃げました。でもこれはこれで夢主のしんどい感じが増したので良き。
・原作でロンが喉切って倒れたところ、不謹慎にも目閉じたロンのお顔があまりにも美しくてここはなんとしても入れたかった。結果しんどくなってハッピー。
・原作で退院祝いに来たトトに対してロンかなりふざけてたので、夢主にもあんなかんじなのかなって思いました。「情熱的だね♡」
・夢主がロンの気持ち推し量ってたり、ロンが夢主のされたいこと把握してたり、ところどころにお互いのマウント描写(?)を入れて髪一本入る隙間ないくらいの距離感にしました。二人共全身赤い糸ぐるぐる巻きです。結婚しろ。
・鴨乃橋ロン、存在がどすけべなので(風評被害)一挙手一投足がえっちくなるように性癖詰め込みました。指先まで細かく描写するとえっちに見えるのかな……どうだろ。てかロンに耳元で囁かれたら耳妊娠案件だよな???(強火厄介ロン夢女)
・冒頭のロンの冷たくなる身体と、ロンが声出るようになったときのあたたかい胸の対比が美しいと指摘されたものの書いてるとき一ミリも気付いてませんでした。これは偶然の産物。
・夢主、自分は人質としてロンの足枷になることしかできなかったって自責の念に駆られてますけど実はめちゃくちゃ優秀。シュピッツと同じく、推理力はそんなにないけどハッキング能力がすごいっていう初期設定がある。黙示録編で告白されたとか、オーベルジュ編のくだりは同じ夢主でちょっと長めの出会い~告白編としていつか書きたい。
・最後夢主が「お互いの熱」って言うのも偶然の産物。夢主がぎゅって手に力を入れたときに、ロンもぎゅって抱きしめ返したから、ミラーリング効果で(?)無意識に「お互い」ってモノローグしたんじゃないですかね。珍しくキャラがワイを無視して勝手に動いてんな。
・ロンも飄々としてる裏で「夢主を危険な目に遭わせた、心配かけさせて、寂しい思いさせて泣かせた」ってもやもやを抱えてたらいい。いつかロン視点のクルーズ編も書けたらいいな。
豪華客船編終盤、船首にてロンとマイロの直接対決。追い詰められたマイロは、あらかじめ誘拐していた夢主を人質に、ロンの“犯人殺す病”に対抗する。視線がかち合うマイロとロンの間にいた夢主は「病のロン」と目が遭ってしまい、ナイフを自身の喉にゆったりと、躊躇なく向ける。「病」の中残っているわずかな理性と、後ろからの虎々丸の悲痛な叫びの中で「僕が声さえ出さなければ」「恋人を傷つけるくらいなら」と考え抜いた末、ロンは夢主からナイフを奪い、自身の声帯を掻き切った。
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まただ。私はベッドに深く沈んで、ぼーっと天井を眺めることしかできなかった。
豪華客船で起きた事件について、詳しい話はトトから聞かされた。
ロンの入院しているところは、退院するまで家族以外の面会は許されなかった。意識が戻ったというのを電話越しに聞いただけ。
首から血を流して倒れるロン。長いまつげに伏せられ固く閉ざされたサファイアの瞳。生気を失っていくロンの顔、少しずつ冷えていったロンの身体。それらだけ、嫌でも鮮明に覚えていて、今でも夢に出てくる。そのたびに息ができない心地がして、ベッドで寝ていても一日の活力をすべて吸い取られるのだ。
だからこそ、退院祝いで病院を訪れ、庭で芽吹く大きな木を物憂げに眺めていたロンが見えたときは、人目もはばからずにロンの胸に突進したものだ。その後ロンがタブレット筆談で「情熱的だね」とわざわざハートマーク付きで返してきたときは、いつもの自分らしくないと我に返って恥ずかしくなったのだが。
ロンのお母さんの手紙からようやくエルマー君の正体を知ったり、血の実習事件の容疑が晴れてBLUEの卒業を認められたりとうれしいことが続いた。探偵免許取得試験も受けられるとシュピッツ経由で伝えられたときは、怠惰の床に倒れ、武者震いをしながら「さいこう」と口だけ動かしていたロン。声が出せていたらマンション中に響き渡るくらいに叫びたかったにちがいない。
それでも、私はなんだか心のつっかえが取れなかった。ロンの命が助かって探偵免許の取得も約束され、心から祝福しているはずなのに、私の口角はなんだか無理をして作り笑いを演じている気分になるのだ。
今日も拭いきれない違和感を抱えながら目覚めた……はずだった。
「おはよう」
気づけば後ろから抱きしめられていて、吐息が耳を掠めた。ああこれだ。2ヶ月ぶりに聞く、待ち焦がれていた、愛しい声。
「君はこうされるのが好きだからね。どう、驚いた?」
せき止めていた何かが、決壊した。腕を本気で振りほどいて寝返りをうち、あたたかい胸に飛び込んだ。きっと今から不細工な顔になるのは確定だろう。
「ばが!あほ!死ぬがどおもっだ!怖がっだんだがらぁ~!」
いくら命が助かっても、それだけでありがたいこととはいえ、もう恋人の声が聞けなくなるかもしれない、と。もし、喉が治らなかったら、と。こっちがどれだけ心配だったかも知らないで、いつものように飄々と私を惑わす恋人になけなしの罵詈雑言を投げつけた。ロンの服が汚れるのを気にする余裕もないほどに、こらえようとして喉の奥が痛くなろうと、涙はひとりでに溢れてくる。
わかってる。トトも腹を撃たれ、ロンが人を殺さないようにするには自身の喉を掻き切る以外に止める手段がなかったことを。マイロにされるがまま、ロンの「犯人殺す病」にかかるだけかかって、何もできなかった私。悔しくもあるんだ。自分の無力さに。トトは命がけでロンの相棒の努めを果たしているのに、私は……ロンの足枷にしかならなかった。それどころか、ロンが無理するのを止められないどころか、傷つけてしまった。
あのときも、ロンはこんな気持ちだったんだろうか。燃え盛るオーベルジュの館であの場にいた人たちを脱出させていたら、自分は逃げ遅れて。なんとかシュピッツのおかげもあって脱出できたけど、ロンだけでなくトトにも説教される始末だった。
ウィンターと直接対決した黙示録事件のあと、ロンに告白されてようやくお互いが大切な存在って認識できたわけだけど、それは大切な人を失う恐怖とも戦わなくてはいけない。けど。
私は、ロンの手を取ったのだから。これしきのことですぐ離れるような、そんな生ぬるい仲じゃない。ひとしきり泣いたおかげか、私が泣いている間ずっとロンが赤子をあやすように撫でてくれたおかげか、次第に落ち着きを取り戻すことができた。
「ねえ、リナ」
頭の上からロンの声が響いて胸から顔を出すと、ロンは両手で私の顔を包む。頬を親指で撫でながら、紺碧の双眸に目元が赤くなった私の顔を映した。
「そんなに僕の声聞きたかったのかい?」
「う、うるさいわよっ」
吐息混じりの囁きが、私の鼓膜を甘く震わす。ロンが入院している間感じられなかったお互いの熱を確かめあうように、私は腕にぎゅっと力をこめた。
***
【以下、読まなくてもいいあとがき】
たかが2000字の話に後書きってなにって感じですが熱烈な感想が来て謎に解釈深まったのでワイ的に頑張ったところを解説(?)していきます。
・クルーズ編終盤のシーンは回想ではなくリアルタイム描写にしたかったけどワイにはストーリー構築能力がなかったので回想に逃げました。でもこれはこれで夢主のしんどい感じが増したので良き。
・原作でロンが喉切って倒れたところ、不謹慎にも目閉じたロンのお顔があまりにも美しくてここはなんとしても入れたかった。結果しんどくなってハッピー。
・原作で退院祝いに来たトトに対してロンかなりふざけてたので、夢主にもあんなかんじなのかなって思いました。「情熱的だね♡」
・夢主がロンの気持ち推し量ってたり、ロンが夢主のされたいこと把握してたり、ところどころにお互いのマウント描写(?)を入れて髪一本入る隙間ないくらいの距離感にしました。二人共全身赤い糸ぐるぐる巻きです。結婚しろ。
・鴨乃橋ロン、存在がどすけべなので(風評被害)一挙手一投足がえっちくなるように性癖詰め込みました。指先まで細かく描写するとえっちに見えるのかな……どうだろ。てかロンに耳元で囁かれたら耳妊娠案件だよな???(強火厄介ロン夢女)
・冒頭のロンの冷たくなる身体と、ロンが声出るようになったときのあたたかい胸の対比が美しいと指摘されたものの書いてるとき一ミリも気付いてませんでした。これは偶然の産物。
・夢主、自分は人質としてロンの足枷になることしかできなかったって自責の念に駆られてますけど実はめちゃくちゃ優秀。シュピッツと同じく、推理力はそんなにないけどハッキング能力がすごいっていう初期設定がある。黙示録編で告白されたとか、オーベルジュ編のくだりは同じ夢主でちょっと長めの出会い~告白編としていつか書きたい。
・最後夢主が「お互いの熱」って言うのも偶然の産物。夢主がぎゅって手に力を入れたときに、ロンもぎゅって抱きしめ返したから、ミラーリング効果で(?)無意識に「お互い」ってモノローグしたんじゃないですかね。珍しくキャラがワイを無視して勝手に動いてんな。
・ロンも飄々としてる裏で「夢主を危険な目に遭わせた、心配かけさせて、寂しい思いさせて泣かせた」ってもやもやを抱えてたらいい。いつかロン視点のクルーズ編も書けたらいいな。