フロイドが自室から出てくる前の事。
僕の自室にて……



「一旦落ち着いたところで、あなたにお話を聞かせてもらいましょうか？」

「騒いでいたのはアズール1人ですけれどね」
すかさずジェイドからツッコミが入る。
確かに騒いでいたのは僕1人で、ジェイドはいつもの彼と変わらず冷静だったし、
この女性についても、全裸だというにも関わらず堂々たる落ち着きっぷりだった。元は猫だから、そういう事なんでしょうけど……。

今冷静になってみて、あんなに大騒ぎした自分が正直恥ずかしい。
そんな恥ずかしさから、先ほど感じていた疑問についてジェイドを問い詰める。
「それは否定しませんが、逆にあなたは落ち着き過ぎなんですよ。この服のチョイスはいったいどう言ったお考えが？まるで彼シャツですよ。服なら他にもあったでしょう？あなたの咄嗟の判断が怖いですよ」

「何が言いたいんです？アズール。たまたま1番取りやすい位置にあったからですよ。あなたこそ彼シャツだなんて、この状況でもよく回るピンク色の脳みそですね」




2人が話している事がよくわからず、黙って聞いていた私だけど……
丁寧な言葉遣いの2人で、一見穏やかそうに見えるけど……これは口喧嘩が始まっている。そんな雰囲気を感じた。
ここには2人の他に私しかいないし、私が止めなくちゃ！
「お2人とも、ケンカは止めっ……うにゃあっ！」
足元に落ちていたクッションに気が付かず、盛大にズッコケる私。

「大丈夫ですか？！見えちゃいけないものが見えてて大丈夫じゃない！！！ブランケットで隠して隠して！」

「どこか擦りむいたりしてませんか？！……ケンカって、元はと言えばあなたが悪いんですよ！？無自覚とはいえあんな格好で隠す事もしないんですから！」

私が転んだ事で2人の口喧嘩は収まったけど、私が2人から怒られるハメに……
2人から息の合ったお説教を受け、ケンカするほど仲がいい2人なんだという事がわかったけど……それは言わずに黙っていた方がいいと判断した自分は、本来利口な猫であると本当は主張したいこの矛盾……。

「震えていますね？寒いのでしたらこのカーディガンをどうぞ」

「空調調節しますね」

違うんです。
ジレンマに耐えていたらプルプルと震えたようになってしまっただけで……
私の為にテキパキと動いてくれて、お2人とも優しい……