薬屋のひとりごと
「あつーい!」
まるで蒸し風呂に入っているような暑さに辟易する。
合成繊維の制服は汗をきちんと吸ってはくれず気持ちが悪い。歩かずとも立っているだけで汗が流れてくる。
だというのに子翠も小蘭も暑い暑いと喚いている。実に元気なことだと猫猫は思う。
元気なのは良いことだ。最初はこのテンションに圧倒されていたが、慣れてくれば屈託ない2人の態度は見ていて微笑ましい。
けれど、それとこれとはまた別の話。早くこのアスファルトの道を攻略したい。家に帰ってクーラーの効いた涼しい部屋で本が読みたい。先日大叔父が置いていった薬学の資料を思い浮かべ、猫猫は頬が緩んだ。
「ねぇ、今日、本当に暑すぎない?」
「本当そう。1回休憩したいー」
分かる。確かにこのまま15分ほど歩いて行くのはつらい。
しかし寄り道してしまうということはそれだけ帰りが遅くなるということだ。
つまりせっかくの楽しい趣味の時間が減ってしまう。大叔父の持ち込んだものは父がいない うちに総て把握してしまいたい。多忙な大叔父は空いた時間にふらっとやってくる。半ば無理に父が引っ張ってくることもあるが、その場合は団欒が優先されるし、何より猫猫が山のようにある質問に回答をもらっている時の父と言ったら酷いという以外にない。普段ですら親バカで鬱陶しい限りであるのに、その時だけは過剰に構ってくることこそないが、隣でずっとニヤニヤと話を聞いている。実に鬱陶しい。
「貴女と叔父様が楽しそうにしているだけで嬉しいのよ」とは母の談だ。どうせなら良い歳をして妻にベタ惚れのおっさんを寝室に引っ張り込むくらいしてほしいものだが、そういう時の母は静かにお茶を飲んでいるか、囲碁の棋譜を並べていることが多い。
ごく稀に2人で囲碁を打ったり将棋を指していることもあるので、ずっとそうしてくれれば良いのにと思ったりもする。
「あ、そうだ! 私、角のアイスクリーム屋さんのクーポン持ってるよ! グループで使えるから寄っていこうよ」
名案だとたばかりに子翠が声を上げた。小蘭は当然目を輝かせている。
「行きたい! ねえ、猫猫も行こうよ!」
キラキラと期待を込めた無邪気な笑顔。なんというか、猫猫は小蘭のこの顔に弱い。
そして子翠も断られる可能性があると理解しているのだろう。「だめ?」と少し眉を下げた上目遣いで猫猫を見る。
う、と言葉に詰まりながら数少ない友人である2人を見る。
可愛らしく首をかしげ、漫画に出てくるエフェクトらしきものが飛んで見える気がした。
「……いいよ」
暑すぎて1度涼みたいというのも事実だしな、と提案を受け入れる。
「やった!」と元気に飛び跳ねる2人に思わず目を細めた。
「じゃあ、早く行こ!」
子翠が猫猫と小蘭の手を取って駆け出す。咄嗟に「危ない」と声を上げようとしたが、視界に入った満面の笑顔に言葉が喉の奥へ落ちていった。
「……走ったら余計暑くなるじゃん」
「アイス食べて涼しくなるんだから平気平気! それより1秒でも早くクーラーの下に行きたいよ!」
「確かに!」と子翠と一緒になってコロコロ笑う小蘭。
そんな2人に釣られて、猫猫は珍しく声を上げて笑った。
まるで蒸し風呂に入っているような暑さに辟易する。
合成繊維の制服は汗をきちんと吸ってはくれず気持ちが悪い。歩かずとも立っているだけで汗が流れてくる。
だというのに子翠も小蘭も暑い暑いと喚いている。実に元気なことだと猫猫は思う。
元気なのは良いことだ。最初はこのテンションに圧倒されていたが、慣れてくれば屈託ない2人の態度は見ていて微笑ましい。
けれど、それとこれとはまた別の話。早くこのアスファルトの道を攻略したい。家に帰ってクーラーの効いた涼しい部屋で本が読みたい。先日大叔父が置いていった薬学の資料を思い浮かべ、猫猫は頬が緩んだ。
「ねぇ、今日、本当に暑すぎない?」
「本当そう。1回休憩したいー」
分かる。確かにこのまま15分ほど歩いて行くのはつらい。
しかし寄り道してしまうということはそれだけ帰りが遅くなるということだ。
つまりせっかくの楽しい趣味の時間が減ってしまう。大叔父の持ち込んだものは
「貴女と叔父様が楽しそうにしているだけで嬉しいのよ」とは母の談だ。どうせなら良い歳をして妻にベタ惚れのおっさんを寝室に引っ張り込むくらいしてほしいものだが、そういう時の母は静かにお茶を飲んでいるか、囲碁の棋譜を並べていることが多い。
ごく稀に2人で囲碁を打ったり将棋を指していることもあるので、ずっとそうしてくれれば良いのにと思ったりもする。
「あ、そうだ! 私、角のアイスクリーム屋さんのクーポン持ってるよ! グループで使えるから寄っていこうよ」
名案だとたばかりに子翠が声を上げた。小蘭は当然目を輝かせている。
「行きたい! ねえ、猫猫も行こうよ!」
キラキラと期待を込めた無邪気な笑顔。なんというか、猫猫は小蘭のこの顔に弱い。
そして子翠も断られる可能性があると理解しているのだろう。「だめ?」と少し眉を下げた上目遣いで猫猫を見る。
う、と言葉に詰まりながら数少ない友人である2人を見る。
可愛らしく首をかしげ、漫画に出てくるエフェクトらしきものが飛んで見える気がした。
「……いいよ」
暑すぎて1度涼みたいというのも事実だしな、と提案を受け入れる。
「やった!」と元気に飛び跳ねる2人に思わず目を細めた。
「じゃあ、早く行こ!」
子翠が猫猫と小蘭の手を取って駆け出す。咄嗟に「危ない」と声を上げようとしたが、視界に入った満面の笑顔に言葉が喉の奥へ落ちていった。
「……走ったら余計暑くなるじゃん」
「アイス食べて涼しくなるんだから平気平気! それより1秒でも早くクーラーの下に行きたいよ!」
「確かに!」と子翠と一緒になってコロコロ笑う小蘭。
そんな2人に釣られて、猫猫は珍しく声を上げて笑った。
