Is this destiny or the punishment of the goddess?
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「いた……! いたよ、兄さん!!」
「あっ!?」
村の外れに差し掛かろうかという頃、アイオリアは漸く足を止めた。
彼が指差した先の袋小路を覗けば、小さな女の子が1人で蹲っている。
驚きと安堵で一息吐く兄たちをよそに、アイオリアは自分よりも幼いであろう少女に近付いていった。
「どうしたの? どこか痛いの?」
アイオリアが話し掛けると彼女は恐る恐る顔を上げた。既に随分泣いたのだろう。瞳はうるうると揺れているし、赤くなってしまっている。1人でさぞ心細かったに違いない。
まずは安心させるべく、もう大丈夫だよ、とアイオリアが少女の頭を撫でた。
するとどうしたことか、少女の瞳からボロボロと大粒の涙が溢れて止まらなくなった。終いには大きな泣き声まで聞こえてくる。
「えっ!? ……兄さん、どうしよう……?」
まさか却って泣かれるとは思わなかったのだろう。つられてオロオロと泣きそうな顔をするアイオリアを宥めていると、サガが優しく微笑んで進み出た。
間違っていないよ、とアイオリアの肩に手を置いて少し下がらせると、自分は少女の傍に膝をつく。
話しかけたのが今度は年上のサガだったからだろうか、少女はゆっくりと質問に答えている。
無論、時折しゃくり上げて辿々しい回答ではあるが、会話が出来ると言える状態にはなっていた。
どうやら先ほど大号泣した理由は、言葉が分からなかったかららしい。英語で話していたサガが少女の母国語らしい言語に切り替えると、分かりやすく表情と声色が変わった。
そこでやっと真っ直ぐ顔を上げた少女に、サガは困ったように笑う。そして涙に濡れたままの顔をハンカチで拭いてやると、花が綻ぶような笑みを見せた。
穏やかな表情が見られたことでアイオロスにも彼女を観察する余裕が生まれる。
肩の上で揃えられた金髪、エメラルドのような瞳。
裾にレースの付いた赤いタータンチェックのスカートと音楽記号のプリントされた淡い色のシャツを着ている。
顔立ちからするとアジア系のようだ。この村に滞在する者の大半は村の住人かその身内なのだが、どちらにも見えない出立ちだった。観光客なのだろうか。
怪我はないらしいのが何よりだ、と考えていると、隣から弟の呟きが聞こえてくる。
「……かわいい……。」
彼女の顔が真っ直ぐ見えたことで思わず本音が出たらしい。何と返すべきだろうかとアイオロスは一考したが、どうにも浮かれている、という表現がピッタリなこの顔には自分も心当たりがある。
兄弟だな、という感想を飲み込み、アイオロスは弟の言動には敢えて触れないことに決めた。
少女がすっかり落ち着いたのを確認して、アイオロスはサガに声をかける。
「ああ、家族とはぐれてしまったそうだ。」
やはりか、と納得していればアイオリアが上擦った声を上げる。
「じゃっ、じゃあ一緒に探してあげようよ!」
刹那、アイオロスとサガは目を丸くして顔を見合わせた。
そんな二人の姿に言ってはいけないことを言ったと思ったのだろう。兄たちの答えを待つアイオリアはまるで叱られるのを待つ子供のようで、自然と笑みが溢れた。
幸い直ぐに戻らねばならないという訳ではない。
放っておくことも出来ぬし、それで叱られるなら甘んじて受け入れよう。
そう脳内で結論付けたアイオロスの表情を見て、アイオリアはあからさまに胸を撫で下ろす。
それがまた微笑ましくて笑っていると、小さな騎士はたどたどしい英語で少女に話しかけた。
「大丈夫だよ。ぜったいに君の家族を見つけるから!」
その言葉に安心したのか、少女は満面の笑みを浮かべる。先程の涙と打って変わって、真正面から好意的な感情を向けられたアイオリアの顔はこれ以上ないほどに赤くなった。
照れているのか、僅かに口をモゴモゴさせつつアイオリアは自分の名を少女に告げる。
「ぼくはアイオリア! リアって呼んで。」
「リア?」
首を傾げながら聞き返されると、今度はアイオリアがパアッと笑顔になった。
「うん! 君は何て名前? 何才?」
「……雷鳴、麗子……3さい。」
「レイコ?」
聞き慣れぬ響きを反復すれば麗子はコクリと頷く。
「よろしく、麗子。俺はアイオロス。ロスでいい。歳は12だ。」
麗子は目をパチクリさせて何度か兄弟を交互に見た。そして導き出されたのであろう結論に表情が華やぐ。
「リアのお兄ちゃん?」
「そうだよ。」
アイオロスとアイオリアはよく似ていた。
双子、というには歳が離れすぎているが、一目見れば血縁関係は疑いようがない。
兄のアイオロスは焦げ茶色の髪にターコイズブルーの瞳。
弟のアイオリアは少し金色がかった茶髪にボトルグリーンの瞳。
髪と眼の色は違うが、言動も似通った所がある為、兄弟というより親子だとよく揶揄われる。
正解をもらえてご機嫌な様子の麗子だったが、今度はサガを見て不思議そうに言った。
「サガはお兄ちゃん?」
……一瞬、場の空気が固まった。
質問の意味が分からないアイオリアはキョトンとしている。
しかしアイオロスは恐ろしくて、サガの顔をまともに見ることが出来ない。
「お姉さんではないよ。」
冷静にそう答えるサガの声色はアイオロスが想像していたより遥かに優しいものだった。
「流石に幼女相手に大人げない真似をするわけないか……。」
「言っておくが聞こえているぞ。」
ホッと一息吐いたも束の間、しっかり音に乗ってしまった言葉に返された声の冷たいこと。
口元は微笑んだまま、アイオロスに向けられる視線だけが氷の如くだ。
「あのな、サガ……?」
「麗子、サガが女の人に見えたの?」
弁解しようとしたアイオロスの言葉は弟によって遮られた。
兄の心情など知らぬアイオリアは、ようやっと理解できた麗子の問いに驚きを隠せない。
「すっごく、きれいだもん。てんしさまかと思っちゃった。」
答えながら麗子はキラキラと目を輝かせる。
自身が抱いたことのない考えを聞かされ、アイオリアは改めてサガに視線を向けた。邪気のない幼い二人にじっと見つめられてサガは僅かにたじろぐ。
そんな珍しい親友の姿に、アイオロスはうっかり気が緩んでしまった。
「そうだよな。サガって本当に美人だし天使や女神でも可笑しくないよな。」
腰の辺りまである長い、癖のある青銀の髪。空を思わせる碧い瞳。
アイオロスは常人離れした容姿の友人が実は天使か女神の化身だったとしてもおかしくない、と割と本気で思っている。ただサガ本人がそのような評価を厭っていると知っているので努めて口にしないようにしているだけなのだ。
……じっとりした視線を向けてくるサガに気付いた時には既に後の祭りである。
青褪めて言葉の出ないアイオロスを無視することに決めたらしいサガは、優しい笑みを浮かべて麗子とアイオリアに声をかけた。
「あっ!?」
村の外れに差し掛かろうかという頃、アイオリアは漸く足を止めた。
彼が指差した先の袋小路を覗けば、小さな女の子が1人で蹲っている。
驚きと安堵で一息吐く兄たちをよそに、アイオリアは自分よりも幼いであろう少女に近付いていった。
「どうしたの? どこか痛いの?」
アイオリアが話し掛けると彼女は恐る恐る顔を上げた。既に随分泣いたのだろう。瞳はうるうると揺れているし、赤くなってしまっている。1人でさぞ心細かったに違いない。
まずは安心させるべく、もう大丈夫だよ、とアイオリアが少女の頭を撫でた。
するとどうしたことか、少女の瞳からボロボロと大粒の涙が溢れて止まらなくなった。終いには大きな泣き声まで聞こえてくる。
「えっ!? ……兄さん、どうしよう……?」
まさか却って泣かれるとは思わなかったのだろう。つられてオロオロと泣きそうな顔をするアイオリアを宥めていると、サガが優しく微笑んで進み出た。
間違っていないよ、とアイオリアの肩に手を置いて少し下がらせると、自分は少女の傍に膝をつく。
話しかけたのが今度は年上のサガだったからだろうか、少女はゆっくりと質問に答えている。
無論、時折しゃくり上げて辿々しい回答ではあるが、会話が出来ると言える状態にはなっていた。
どうやら先ほど大号泣した理由は、言葉が分からなかったかららしい。英語で話していたサガが少女の母国語らしい言語に切り替えると、分かりやすく表情と声色が変わった。
そこでやっと真っ直ぐ顔を上げた少女に、サガは困ったように笑う。そして涙に濡れたままの顔をハンカチで拭いてやると、花が綻ぶような笑みを見せた。
穏やかな表情が見られたことでアイオロスにも彼女を観察する余裕が生まれる。
肩の上で揃えられた金髪、エメラルドのような瞳。
裾にレースの付いた赤いタータンチェックのスカートと音楽記号のプリントされた淡い色のシャツを着ている。
顔立ちからするとアジア系のようだ。この村に滞在する者の大半は村の住人かその身内なのだが、どちらにも見えない出立ちだった。観光客なのだろうか。
怪我はないらしいのが何よりだ、と考えていると、隣から弟の呟きが聞こえてくる。
「……かわいい……。」
彼女の顔が真っ直ぐ見えたことで思わず本音が出たらしい。何と返すべきだろうかとアイオロスは一考したが、どうにも浮かれている、という表現がピッタリなこの顔には自分も心当たりがある。
兄弟だな、という感想を飲み込み、アイオロスは弟の言動には敢えて触れないことに決めた。
少女がすっかり落ち着いたのを確認して、アイオロスはサガに声をかける。
「ああ、家族とはぐれてしまったそうだ。」
やはりか、と納得していればアイオリアが上擦った声を上げる。
「じゃっ、じゃあ一緒に探してあげようよ!」
刹那、アイオロスとサガは目を丸くして顔を見合わせた。
そんな二人の姿に言ってはいけないことを言ったと思ったのだろう。兄たちの答えを待つアイオリアはまるで叱られるのを待つ子供のようで、自然と笑みが溢れた。
幸い直ぐに戻らねばならないという訳ではない。
放っておくことも出来ぬし、それで叱られるなら甘んじて受け入れよう。
そう脳内で結論付けたアイオロスの表情を見て、アイオリアはあからさまに胸を撫で下ろす。
それがまた微笑ましくて笑っていると、小さな騎士はたどたどしい英語で少女に話しかけた。
「大丈夫だよ。ぜったいに君の家族を見つけるから!」
その言葉に安心したのか、少女は満面の笑みを浮かべる。先程の涙と打って変わって、真正面から好意的な感情を向けられたアイオリアの顔はこれ以上ないほどに赤くなった。
照れているのか、僅かに口をモゴモゴさせつつアイオリアは自分の名を少女に告げる。
「ぼくはアイオリア! リアって呼んで。」
「リア?」
首を傾げながら聞き返されると、今度はアイオリアがパアッと笑顔になった。
「うん! 君は何て名前? 何才?」
「……雷鳴、麗子……3さい。」
「レイコ?」
聞き慣れぬ響きを反復すれば麗子はコクリと頷く。
「よろしく、麗子。俺はアイオロス。ロスでいい。歳は12だ。」
麗子は目をパチクリさせて何度か兄弟を交互に見た。そして導き出されたのであろう結論に表情が華やぐ。
「リアのお兄ちゃん?」
「そうだよ。」
アイオロスとアイオリアはよく似ていた。
双子、というには歳が離れすぎているが、一目見れば血縁関係は疑いようがない。
兄のアイオロスは焦げ茶色の髪にターコイズブルーの瞳。
弟のアイオリアは少し金色がかった茶髪にボトルグリーンの瞳。
髪と眼の色は違うが、言動も似通った所がある為、兄弟というより親子だとよく揶揄われる。
正解をもらえてご機嫌な様子の麗子だったが、今度はサガを見て不思議そうに言った。
「サガはお兄ちゃん?」
……一瞬、場の空気が固まった。
質問の意味が分からないアイオリアはキョトンとしている。
しかしアイオロスは恐ろしくて、サガの顔をまともに見ることが出来ない。
「お姉さんではないよ。」
冷静にそう答えるサガの声色はアイオロスが想像していたより遥かに優しいものだった。
「流石に幼女相手に大人げない真似をするわけないか……。」
「言っておくが聞こえているぞ。」
ホッと一息吐いたも束の間、しっかり音に乗ってしまった言葉に返された声の冷たいこと。
口元は微笑んだまま、アイオロスに向けられる視線だけが氷の如くだ。
「あのな、サガ……?」
「麗子、サガが女の人に見えたの?」
弁解しようとしたアイオロスの言葉は弟によって遮られた。
兄の心情など知らぬアイオリアは、ようやっと理解できた麗子の問いに驚きを隠せない。
「すっごく、きれいだもん。てんしさまかと思っちゃった。」
答えながら麗子はキラキラと目を輝かせる。
自身が抱いたことのない考えを聞かされ、アイオリアは改めてサガに視線を向けた。邪気のない幼い二人にじっと見つめられてサガは僅かにたじろぐ。
そんな珍しい親友の姿に、アイオロスはうっかり気が緩んでしまった。
「そうだよな。サガって本当に美人だし天使や女神でも可笑しくないよな。」
腰の辺りまである長い、癖のある青銀の髪。空を思わせる碧い瞳。
アイオロスは常人離れした容姿の友人が実は天使か女神の化身だったとしてもおかしくない、と割と本気で思っている。ただサガ本人がそのような評価を厭っていると知っているので努めて口にしないようにしているだけなのだ。
……じっとりした視線を向けてくるサガに気付いた時には既に後の祭りである。
青褪めて言葉の出ないアイオロスを無視することに決めたらしいサガは、優しい笑みを浮かべて麗子とアイオリアに声をかけた。
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