その他CPもの

眼前で起こっている光景に、仲間内から「老けている」と言われる少年は溜め息を吐いた。
この辺りはそんなに柄の悪い土地だったろうか、と思いを馳せるが、どんな場所にもそういう連中は居るだろうと考え直す。
「しつこいですよ!」
「なんだと!?」
一際大きな声が上がり、両手を広げて少女の防波堤となっていた少年の腕を男が掴んだ。
「……俺の連れに何のようだ」
殊更に低い声を意識して一番後ろにいた男の肩に手を置く。
「兄さん!」
「一輝!」
振り向いた男たちの口から汚い威嚇音が聞こえるが、一輝の顔を見た途端に全員が顔色を変えた。
二十歳過ぎ、いや、もう少し若いか。
いずれにせよ自分よりは歳上なのだろうと当たりを付ける。
だが、少し睨んだだけで怯むなら大した手合いではない。
「俺の弟から手を離せ」
「は……? ……弟!?」
驚いた拍子に力が抜けたらしい。捕まれていた腕を勢いよく振り払った瞬は後ろにいた少女の手を引いて、素早く一輝の背に隠れた。
「こいつらに用があるなら俺が聞くが?」
もう一段、視線を鋭くして言葉を吐き捨てる。
すると男たちは大きく肩を震わせて走り去っていった。
「……すまん。遅くなった」
下劣な者たちの姿が見えなくなると、同時に大きく息を吐く音が二つ聞こえた。
もっと急いで来るのだった、と後悔する。女と間違われるほど中性的で整った容姿の弟と、その弟と双子のようによく似た恋人。
碌でもない連中からすれば兎が二羽並んでいるように見えるだろう。もっとそこに思いを巡らせていれば、とらしくもない"たられば"を考える。
そんな一輝の心中は知らず、顔を綻ばせた二人は目を輝かせた。
「流石兄さん!」
「ありがとう、一輝!」
ニコニコと似たような表情で褒め称えられるとどうにも居た堪れない。
捻くれた自分には眩しすぎる、と一輝は思った。
「……待たせて嫌な思いをさせたからな。今日は気が済むまで付き合ってやる」
そっと視線を外しながら言えば、瞬とエスメラルダは華やいだ声を上げた。
「ほんと!? ありがとう兄さん!!」
「一輝、瞬、わたし甘いものが食べたいわ!」
「いいね! 行こう!」
心当たりのあるらしい瞬が一輝の手を取る。
殆ど同時に反対の手をエスメラルダが握った。
「でも一輝の行きたいところへも行きましょう?」
ね、と可愛らしく首を傾げてエスメラルダはそう言った。
花の咲いたような笑顔に自然と一輝の口角は上がる。
「……瞬」
「なぁに? 兄さん」
視線を感じ、弟に顔を向けた。
ニコニコとした表情は普段と変わらないが、なにやら効果音がいつもと違うようにも思える。
思案する兄を知ってか知らずか、どうしたの、と瞬は笑みを深めた。
「時間がなくなっちゃうよ。行こう」
「……ああ」
楽しげに会話をしながら、瞬とエスメラルダは一輝の手を離そうとしない。
擽ったい気持ちはありつつも、偶にはいいか、と思いながら一輝は時折相槌を打ち、ゆっくりと歩みを進めた。
恐らく今日の己は表情筋が緩んだままだろう、と予想がつく。よく知った同胞の顔を思い浮かべ、彼らには出会さないよう願わずにはいられなかった。
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