CPなしの小説
赤銅色に輝く月を見て男は嗤う。
「まるで血の色ではないか」
清廉なる月が影に侵され濁る晩。奴が逝ったのもこんな夜だった、と喉を鳴らす闇の化身をサガは力なく見つめた。
紅黒い液体の入ったグラスを傾ける男は己とそっくりそのまま同じ姿形。違うとすれば、色相と人を見下し嘲笑うかのような表情。
このようなものが常に傍にあるなど虫唾が走る。されど決して離れえぬ存在は、愚かな願いを抱いた人の子への裁きであろうか。
一つ、また一つと重なる罪と、赤を通り越して黒く染まる両の手。
己の身体を掻き抱き、サガは静かに泣いた。
悼む事など許されない。
そのような侮辱を許さない。
英雄の翼を折る事を全く望んでいなかったかと言えば、そうではない。
憎らしかった。
羨ましかった。
憧れていた。
頼りにしていた。
信じたかった。
愛していた。
……傍にありたかった。彼の信じた、聖闘士に相応しき己のままで。
行いが遠き過去と成り果てても、サガは悔やみ続けるだろう。
或いは過去になどすまいと、自ら神の身許に飛び込むのか。
月を覆う影が抜けていく。
拭えぬものはないのだというように。
美しき輝きを取り戻す。
宵闇に君臨する満月と側に控える星々が聖域を照らした。
「まるで血の色ではないか」
清廉なる月が影に侵され濁る晩。奴が逝ったのもこんな夜だった、と喉を鳴らす闇の化身をサガは力なく見つめた。
紅黒い液体の入ったグラスを傾ける男は己とそっくりそのまま同じ姿形。違うとすれば、色相と人を見下し嘲笑うかのような表情。
このようなものが常に傍にあるなど虫唾が走る。されど決して離れえぬ存在は、愚かな願いを抱いた人の子への裁きであろうか。
一つ、また一つと重なる罪と、赤を通り越して黒く染まる両の手。
己の身体を掻き抱き、サガは静かに泣いた。
悼む事など許されない。
そのような侮辱を許さない。
英雄の翼を折る事を全く望んでいなかったかと言えば、そうではない。
憎らしかった。
羨ましかった。
憧れていた。
頼りにしていた。
信じたかった。
愛していた。
……傍にありたかった。彼の信じた、聖闘士に相応しき己のままで。
行いが遠き過去と成り果てても、サガは悔やみ続けるだろう。
或いは過去になどすまいと、自ら神の身許に飛び込むのか。
月を覆う影が抜けていく。
拭えぬものはないのだというように。
美しき輝きを取り戻す。
宵闇に君臨する満月と側に控える星々が聖域を照らした。
