良亜美
放課後の教室。
唐突に掛けられた言葉に良は目を丸くし、耳を疑った。
「良くん、私のどこが好きなの?」
隣り合った机に座り、それぞれ課題を熟している所に聞こえてきた予想外の問い掛け。良は思わずシャーペンを床に落としてしまった。
「……亜美さん……?」
疑問と共に隣を見れば、きょとんと首を傾げる恋人。
揶揄われている風でもない。恐らくは純粋な疑問を投げ掛けただけなのだろう。分からない設問を教師に問う時と同じように。
無論聞かれるのが嫌だとか恥ずかしいという事ではないのだが、果たしてそういう話が亜美の口から出た事があっただろうか。
……少なくとも良の記憶には無かった。
確かに他に人は居らず、夕日で影が伸び始めている。そろそろ下校せねばならない時間である。
しかし、彼女はこの手の話題が苦手だったはず。学校は勉強する為の場所と思っている節のある亜美だ。先程まで問題集を解き、答えをノートに記す事に全力だっただけに、突然その問いに至った経緯が分からない。
良の頭の上をクエスチョンマークが飛び交っている事に気付いたのだろう。はたと素に戻った亜美は頬を赤くした。
「ご、ごめんなさい! 変な事聞いて……。」
最後の方は聞き取りにくくはあったが、良を苦笑いさせるに十分だった。
確かに驚いた。驚きはしたが。
笑みを浮かべ、良は静かに席を立つ。
机が影で暗くなったと亜美が気付く頃には、身体はすっぽり良の腕に収まっていた。
「良、くん……?」
「……そうやって、直ぐに照れて赤くなるところ……僕は好きですよ。」
囁きながら、自身の顔が熱を持った事を知覚する。
亜美は良の学生服に額を押し当てると、裾の近くを摘むように握った。
「優しくて、色んな事を知っていて……でも不器用なところもあって。」
きっかけは些細な事。しかし想いは日に日に募っていった。
彼女を見る度に、話し掛けられる度に。
「貴女の笑顔も、全て。……言い出したら、キリがないです。」
「……私は……そんな…………。」
回した腕に力を籠め、良は告げた。
「貴女が誰であろうと、貴女が貴女である限り……僕は貴女が好きです。」
亜美の唇が動こうとするのが分かる。しかし、それが言葉を形作る前に身体を離し、自分の机に戻った。
心臓の音がうるさい。
暴れすぎて破裂するのではないかと思う。
自分で格好つけたにも拘らず、急に恥ずかしくなってきた。鏡を見なくても分かる。きっと耳まで赤くなっているに違いない。幸い、亜美の方からは西日で表情は見えないだろう。……と信じたかった。
クスリと、笑った気配がした。
そして良の手に、手が重ねられる。
「ありがとう。」
驚いた良が振り向くと同時に、亜美は少しだけ背伸びをした。
――それから――
下校の際、仲良く手を繋いで歩く二人の姿が目撃される様になったとか……。
唐突に掛けられた言葉に良は目を丸くし、耳を疑った。
「良くん、私のどこが好きなの?」
隣り合った机に座り、それぞれ課題を熟している所に聞こえてきた予想外の問い掛け。良は思わずシャーペンを床に落としてしまった。
「……亜美さん……?」
疑問と共に隣を見れば、きょとんと首を傾げる恋人。
揶揄われている風でもない。恐らくは純粋な疑問を投げ掛けただけなのだろう。分からない設問を教師に問う時と同じように。
無論聞かれるのが嫌だとか恥ずかしいという事ではないのだが、果たしてそういう話が亜美の口から出た事があっただろうか。
……少なくとも良の記憶には無かった。
確かに他に人は居らず、夕日で影が伸び始めている。そろそろ下校せねばならない時間である。
しかし、彼女はこの手の話題が苦手だったはず。学校は勉強する為の場所と思っている節のある亜美だ。先程まで問題集を解き、答えをノートに記す事に全力だっただけに、突然その問いに至った経緯が分からない。
良の頭の上をクエスチョンマークが飛び交っている事に気付いたのだろう。はたと素に戻った亜美は頬を赤くした。
「ご、ごめんなさい! 変な事聞いて……。」
最後の方は聞き取りにくくはあったが、良を苦笑いさせるに十分だった。
確かに驚いた。驚きはしたが。
笑みを浮かべ、良は静かに席を立つ。
机が影で暗くなったと亜美が気付く頃には、身体はすっぽり良の腕に収まっていた。
「良、くん……?」
「……そうやって、直ぐに照れて赤くなるところ……僕は好きですよ。」
囁きながら、自身の顔が熱を持った事を知覚する。
亜美は良の学生服に額を押し当てると、裾の近くを摘むように握った。
「優しくて、色んな事を知っていて……でも不器用なところもあって。」
きっかけは些細な事。しかし想いは日に日に募っていった。
彼女を見る度に、話し掛けられる度に。
「貴女の笑顔も、全て。……言い出したら、キリがないです。」
「……私は……そんな…………。」
回した腕に力を籠め、良は告げた。
「貴女が誰であろうと、貴女が貴女である限り……僕は貴女が好きです。」
亜美の唇が動こうとするのが分かる。しかし、それが言葉を形作る前に身体を離し、自分の机に戻った。
心臓の音がうるさい。
暴れすぎて破裂するのではないかと思う。
自分で格好つけたにも拘らず、急に恥ずかしくなってきた。鏡を見なくても分かる。きっと耳まで赤くなっているに違いない。幸い、亜美の方からは西日で表情は見えないだろう。……と信じたかった。
クスリと、笑った気配がした。
そして良の手に、手が重ねられる。
「ありがとう。」
驚いた良が振り向くと同時に、亜美は少しだけ背伸びをした。
――それから――
下校の際、仲良く手を繋いで歩く二人の姿が目撃される様になったとか……。
