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ゆっくりと息を吸う。あいつの部屋からこっそり拝借してきたタオルに顔を埋め、匂いを嗅げば当たり前だがあいつの匂いがした。気付けば安心するようになってしまったその香りに、なんだかおかしくなって笑いをこぼす。
こんな風になるつもりなんてなかったのに。いつの間にか、こっちのほうがずるずる深みへハマっていっている気がする。今までになかったことだから新鮮でおもしろい。まるで自分が自分でなくなってしまったような感覚がした。
最近はハシモト組への件やらなんやらで忙しい日々が続いたため、あいつと二人っきりになる時間が取れていない。早い話が欲求不満。性欲は薄い方だったはずなのにどうしても発散したくてしょうがなくって、助けを求めるように奴の部屋に不法侵入したはいいが、流石に居たたまれなくなってタオルだけを拝借した次第である。
いや、前の俺だったら普通に夜這いとか言って襲いに行っている。それが出来ないのは、自分が思いの外あいつにハマってしまっているからで。自分を隠すのだって得意だった筈なのにこのザマだ。本当にどうかしている。
明日も早いのだ。悩んでないでとっとと抜いてしまおう。息を吐いて、既に芯を持っている陰茎に触れる。目を閉じて、あいつの匂いを感じながらゆっくり陰茎を扱く。直接的な刺激に身体が震える。でも、受け入れることに慣れた身体はじくじくと熱を持つばかりで。どうしても上手くイくことが出来ない。焦って、ローションを取り出して先端を擦り上げる。
「ふっ、ぅ!」
目の前がチカチカ明滅して、口からあられもない声がこぼれ落ちそうになるのをタオルを噛み締めてなんとか耐えた。でも、イけそうなのにイけない。
嘘だろ。そちらで上手くイけなくなっていることに絶望しながら、溜め息を吐く。男としての尊厳なんてもうとっくにぐちゃぐちゃだけれど、これは流石に来るものがある。
というか今から後ろ、準備すんの?身体を起こして時計を見れば9時半。まあいけないこともないか。いけないこともないけど、あまりに浅ましい。
浅ましいけれど、だからと言って満足出来るわけもなく。ここまできたらもうヤケだ。再度溜め息を吐いて、立ち上がるとシャワールームの扉を開けたのだった。
それからきっかり一時間。しっかりナカを洗浄して、拡げて、そうして準備を整えると改めてベッドに腰掛ける。目の前にはあいつのと同じくらいの大きさのディルド。こいつに頼るのは久々だが仕方ない。今日は慰めて貰おう。バスタオルを敷いてその上に寝転ぶと、ディルドにローションを塗りたくる。ローションがコーティングされたそれをゆっくり後孔に押し当てると、くぷっと音を立てて飲み込んでいった。異物が挿入されている違和感。何度受け入れても慣れないその感覚を無視して、そこに黒いゴム製品がゆっくり飲み込まれていく。
「はぁ、あ゛、あぐっ」
カリ首が前立腺を押し潰して、目の前に火花が散る。待ち焦がれた快感に、頭がバカになりそうだった。今すぐ出し入れしたいけど、ちょっと我慢して半分まで挿入したところで慣らすために一旦手を止める。目の前のタオルにすり寄って、あいつの匂いを肺いっぱいに吸いこんだ。
「ふーっ、ふーっ」
自然と荒くなる息が部屋に響いている。それにまた興奮して、瞼の裏であいつが笑った気がした。
落ち着くまで待ってから、ゆっくりと奥に導いていく。ぞわぞわと鳥肌が立って、汗が流れ落ちる。声を出さないようにタオルを噛み締め、根元まで飲み込むと、そのまま一気に引き抜いた。
「ぐ、ーーーーっ!」
欲のままに肉を掻き分けて出し入れを繰り返す。足がぴーんと伸びて、気持ち良さに背がしなる。ローションでぐちゃぐちゃになったそこは、酷い水音を立てながらディルドを受け入れていた。
気持ち良くて思わず首を横に振る。咥えていたタオルが歯に引っ掛かって引きつれる音がしたが、構っていられない。ごりごりと前立腺を抉る度、目の前がチカチカ明滅する。
「う゛ぅ、っ!んんっ、~~~~っ!」
待ち望んだ刺激に身体が歓喜して、男であるというプライドも何もかもが崩れ去る。でも、あいつのじゃない。虚しくて、涙がポロポロ落ちていく。
もう、あいつの体温を知った以上元には戻れないのだ。
殆ど無意識に腕があいつを探して踠く。あの温かい腕に抱き締められたなら、どんなに気持ち良いだろう。
「あ、ウーヤンっ」
「うん、なぁに?」
たまらず声に出して名前を呼べば、至近距離であいつの声がした。そんなわけない。だって、ここ自室だし。そう思って閉じていた瞳を恐る恐る開ければ、そこには満面の笑みでウーヤンが立っていて。その温かい手が頬に触れる。求めていた体温にかっと血が沸き立って、身体が限界まで反り返る。触れられただけなのに、気付けば果てていた。
「あ、う゛~~~~っ!」
びくんと大きく身体が跳ねる。快感にのたうちながらもあいつから視線が逸らせない。
「な、んで!」
息も絶え絶えに声を上げれば、あいつは悪びれもせず言う。
「ノックしても返事なかったからさ、悪いかなって思いながらも入ってみたらオナニーしてるんだもん。そんなの見るに決まってるよな」
見られた。しかもよりにもよって恋人に。イったばかりで敏感な身体を撫でられて、身動ぎをしながらなんとか距離を取ろうとするがあっという間に詰められて。まだナカに挿入されたままのディルドに彼の手が伸びる。
「しかもそれ、俺のタオル。そんなに寂しかった?」
嬉しそうな顔。腹が立って言い返そうと開けた口からは、意味のある言葉は出てこなかった。乱雑に引き抜かれたディルドを奥に突き立てられたからだ。
「お゛っ、……~~~~っ!」
「あは、可愛い。でもさ、自分だけ気持ち良くなるのは違うよな」
目の前に彼の勃起した陰茎が差し出される。おずおずと舌を突き出して、それに這わせれば彼は笑った。
ほとんど無意識に腰を浮かせながら、持てる技術を余すことなく発揮して奉仕する。喉奥に陰茎を迎え入れると、気道を塞がれている苦しさと、独特な臭みが口内に広がって噎せそうになる。しかし、それにさえ興奮する始末で……。どうしようもなくて、笑いがこぼれた。酷く扱われることに慣れた身体が喜んでしょうがない。その間も後孔はディルドで苛められて、容赦のない責め苦に目の前がチカチカ明滅する。
苦しい、気持ちいい、嬉しい。ありとあらゆる感情がグツグツ煮え立って、ない交ぜになる。
「ーーーーーっ!」
「ほんと、ミズキってマゾだよなっ」
言い返せるわけもなく、好き勝手に蹂躙される。それをよしとしているのは、他でもない自分だ。被虐的にならないと生きられなかったのに、今では自分から喜んで追い詰められている。
そのくらい、この年下の男に狂っているのだ。
この男だって最初はそんな趣味ないとか言っていたのに、今じゃ随分と楽しそうに苛め抜いて来るのだから余計タチが悪い。
「っ、おごっ!ぐぅ……お゛っ!」
「ミズキ、苦しい?」
そんなの聞かなくたってわかるくせに。喉奥にほとんど無理矢理剛直を叩きつけられて、目の前が涙で滲む。苦しくて苦しくて、気持ち良くて、ディルドを締め付けて何度目かもわからない絶頂を迎えた。
「ーーーーーっ!」
「うっ、ごめん、もう無理そう」
切羽詰まった声がする。そうして、熱い精を喉奥に吐きかけられる。気管に入りそうになりながらも、それをなんとか飲み下していく。ねばつくそれに溺れそうですらあった。さっきとは裏腹に、甘やかすように頭を撫でられて身体が震える。
「いいこ、いいこ」
年下に甘やかされて、普段だったら腹が立ってしょうがないだろうに。好き勝手に食い散らかされて、それでも誘うように腰が揺れる。
「はーっ、はーっ♡」
硬さを取り戻したそれに頬擦りをしながら熱い吐息を漏らす。もっと苛めて欲しい。何もかも、忘れさせて欲しい。媚びるように彼を見上げれば、目があった。視線が絡まる。思わずごくりと息を飲んだ。
「ミズキ」
甘い甘い、ある種の毒のような囁き。ずるりとディルドを引き抜かれて、蓋をなくしたそこがぱくぱくと口を開く。
自分の手でそこを拡げて、見せ付けるように腰を上げると、彼は雄臭く微笑んだのだった
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