OW
※後天性女体化
すんごいイチャイチャする
不思議なこともあるもんで、世界に性転換ウイルスなんてものが流行り出した。
高熱が出た後、身体が別の性別に作り変わってしまうその病気は、なったら最後戻る方法はない……こともなく、数日で戻る症例もあれば何年もかかって戻ったり、或いは全く戻らなかったりとバラバラで、特効薬もないと来た。
なんでそんなウイルスの話をしたかって?そんなの、なってしまったからに決まっている。
ある日、なんの脈絡もなく熱が出たかと思えば、地獄みたいな苦しみの後、慣れ親しんだ息子は消えてしまった。後に残ったのは微かに膨れた胸と、まっさらな股間だけだった。
馬鹿げた話だ。診断の結果、身体の中身も変わってしまっているとかで、なんと子宮まであるらしい。
本当に終わってる。
少し高くなった声に、少し縮んでしまった背。筋肉量も落ちたように思う。まだマシなのは、胸がないからパッと見は変わらないところだろうか。そこはまぁ、良かったと言っていいだろう。
問題はもっと別のところにあった。
俺には付き合っている奴がいる。男同士でも付き合ってくれている物好きな男の名前はウーヤン。俺よりも年下のこの男は、ありがたいことに過去を何も語れない俺をそのまま受け入れてくれた。俺が病にかかった時からあれこれ世話を焼いてくれた彼は、俺の身体が女になっているとわかるや否や、やれ身体を冷やすなだのといつも以上に気にかけるようになった。
別に悪い気はしないんだ。でも、それと同時に手を出してこなくなった。
早い話が、欲求不満なのである。
「ミズキ、何か考えてる?」
「あ?いや、なんでもなかよ」
とある昼下がり。ブリギッテに教えて貰ったカフェで俺達は向かい合っていた。外は急な雨で、買い出しに出たは良いが雨宿りを余儀なくされたのだ。
カフェの店員が貸してくれたタオルで濡れた髪を拭きながら、マグに手をかけるとコーヒーを啜る。美味しいかとかはわからない。生憎、比べられる程コーヒーを飲んだことがない。それでも、雨で冷えた身体が少し温まったような気がする。
「災難だったな。雨予報なんて出てなかったのに」
彼はそう言うと、同じようにコーヒーを啜った。私服の彼は白いシャツを着ていて、それが雨に濡れて張り付いている。自分も多分同じ。この身体になってからボディラインが出る服をあまり着ないようにしているが、それでも張り付いているのがわかる。一先ず借りたタオルを首から下げて誤魔化しつつ、目の前に出されたチョコレートケーキにフォークを刺した。本当は夕飯前だからダメなのだろうけど、ウーヤンに「内緒な?」なんて微笑まれたら断れなかった。
「うまいなこれ」
「良かった、俺も食べよう」
……なんだろう。こんなの、お手本みたいなデートじゃん。彼の前じゃ経験豊富ぶっているけれど、本音は違う。何もかもが、彼が初めてなのだ。恋人を持つのだって初めてだし、手を繋ぐのも、キスも、それこそセックスだって初めてだった。彼は気付いていないだろうから、全部内緒だけれど。
「うーん……雨、止みそうに無いな」
「頼まれた物は買ってるから、走って帰るか?」
「時間に余裕はあるからさ、もうちょっと待とう。あー……でも服濡れてるし風邪引いたら大変だからな」
「良ければ傘、お貸ししましょうか?1本しかないですけど……それでも良ければどうぞ」
ありがたいことに、店員が傘を手に提案してきた。確かにこのまま待っていても風邪を引いてしまうかもしれない。でも、もう少しだけデートもどきを楽しみたい自分がいて。悩んでいるとウーヤンが傘を手に取って微笑んだ。
「ありがとう。もう少しゆっくりしたら出ようか」
「しょうがないな。少しだけだぞ?」
良かった。もう少しだけ……なんて思ったところで気付く。傘、1本しかないってことは相合傘するってことか?相合傘って、海外にもあるのかな。なんて思いながらコーヒーを啜る。苦い。けれど砂糖とミルクと、それからケーキの甘さで丁度良くなったそれに舌鼓を打つ。なるほど、ケーキと合わせて完成するんだ。
からんからんと鐘の音を立てながら扉を開けて外に出る。雨はまだ止みそうにない。傘を開いて、その狭苦しい空間に二人して入り込む。いくら体格が変わったとはいえ、俺の方がウーヤンよりも背が高い。傘を持とうか声をかけるが、彼は頑なに応じなかった。
ざあざあと音を立てて雨粒が傘にぶつかる。当たり前だけど、彼が近い。心臓の音さえ聞こえてしまいそうで、かあっと顔が熱くなる。
こんなの経験するなんて思っていなかったから……。なんならセックスよりも恥ずかしいかもしれない。
「……なんか喋れよ」
「え?」
「いや、なんでもない」
こんなの、意識しない方が無理だ。触れ合った肩から、彼の温もりがじんわり伝わってくる。ドキドキと胸が高鳴って、煩いくらいだった。
ふわりと彼の匂いが香ってきて、くらくら眩暈がする。もうすぐ家が見えてくる頃だろう。離れないと、誰かに見られでもしたら恥ずかしくて終わる。
傘から出ようとしたら不満そうな彼が更にくっついてきた
「なっ、離せよ」
「濡れちゃうだろ?」
「誰かに見られたらどうすんだ」
「そんなに恥ずかしいことか?」
「日本にはな、相合傘ってのがあんの!ヨーカイのやつらに見られたら絶対からかわれる」
「気にすることないのに」
「俺は気にするの!」
そんなこと言ってたら向こうから傘を持ったキリコがやってきて、俺達を見るなりにやりと笑ったのだった。
そんなこんなで仮拠点に戻ってきたわけだが。頼まれた物をテーブルに置いて、俺達はそれぞれ宛がわれた自室へ向かう。
今すぐにでも独りになりたかった。だって、久しぶりの彼の温もりはあまりに毒だったから。
「じゃ、また後で」
返事をする余裕もなく、ジェスチャーだけで済ますと部屋の扉を開ける。最近まで物置小屋だったらしいその部屋は、微かに湿った埃の香りが漂っていた。
濡れた服を脱いでバスタオルで雑に拭きながら、簡易的なベッドへ寝転ぶ。
こんなことでと自分でも情けなくなるが、生理現象だ。仕方がない。そう思って股間へ手を伸ばしたところで気付く。
どう触れば良いんだ?
正直な話、触るのが怖くて最低限しかそこに触れたことがないのだ。自慰しようにも、勝手がわからない。
ネットで調べたらいいと思うかもしれないが、考えても見てほしい。それを誰かに見られないと言う確証はないのだ。ほら、丁度ハッカーの顔見知りだっていることだし、見られたらと思うとあまりに居たたまれない。
なら、どうしよう。
一頻り考えた後、ひとつの答えに辿り着きゆっくりと身体を起こす。ハーフパンツに足を通して、上に適当に大きめのパーカーを羽織ってチャックを上まで上げると部屋を出た。
目指すはあいつの部屋だ。
道中、幸いにも誰ともすれ違うことなくウーヤンの部屋の前に辿り着くと、ノックをして扉を開ける。
「うぇ?ミズキ?」
「あー、その……さっきぶり」
着替え途中なのか半裸の彼がそこにいた。相変わらず良く引き締まった、若々しい身体つきだと思う。なんなら、輝いて見えるくらいには好ましい。
「って、なんて格好してるんだよ!」
「なんてって、別に普通だろ」
「男の部屋に来るのにそれは無防備すぎ」
「俺も男なんだけど」
「でも、今は身体は女の子だろ」
そんな言い合いをしながら、距離を詰めてすり寄る。何やら慌てている彼をそのままに、首筋に顔を埋めて息を吸い込めば彼の匂いがした。
「ミズキ」
「何」
「その、あんまり近付かれると……勃っちゃうから……」
彼は言いにくそうに口ごもる。なんだ、それなら丁度よか。ふっと微笑んで、どの口が言えたのか、無防備な唇にキスを落とすとベッドに押し倒す。
「いっ」
「なあ、まだ夕飯まで時間あるき……シよ?」
「なっ、ダメだって」
「何で」
「大事にしたい」
「大事にされすぎても、腐っちまう」
俺はあんたに抱かれたいの。いつものトーンで、いつもの丁度を崩さず言えば、彼は目を真ん丸にして暫し放心した後、覚悟を決めたように息を飲んだ。
「痛かったり、嫌だったら言って?」
「ん」
とさりとベッドに押し倒されて、そのまま彼が覆い被さってくる。与えられるキスの雨を受けながら、擽ったさに笑えば彼もへにゃっと笑った。
パーカーのチャックを下ろして、露出した肌に彼の温かい手が触れる。壊れ物にでも触れるみたいに脇腹やら腹を撫でられて、ふるりと身体を震わせる。
「んんっ」
「本当、格好が無防備すぎるだろ」
「手っ取り早かろ?」
「……俺以外にやったら怒るからな」
「あはは、あんただからやっちょるの」
ああ、でも下着はもうちょっと選んでくるべきだった。飾り気のないスポーツブラじゃ、あまりに味気ない。
「触ってい?」
「よかよ」
けど、そんなの彼は気にしていないようだった。
彼の大きな手が、胸を包み込む。大きくもないそれを、感触を楽しむように優しくもみしだかれたかと思えばするする撫でられて、まるでマッサージでもしているようだった。
気持ちいい。いいけど、その、頂点が触ってほしくてむずむずする。
「あ、ぅ……」
足を擦り合わせながら、早く彼が触ってくれるのを待つが、中々欲しい刺激はもたらされない。焦らすように突起の回りをくるくる擽るのみだった。夕飯まで時間がないの、わかっているだろうに。文句を言おうと開いた口に舌が割り込んできて、そのまま絡め取られた。
比較対象がないからわからないけれど、彼とのキスは気持ちがいいから好きだ。舌先で上顎を擽られる度、ぞわぞわと背筋を電流が駆け抜けていく。
「ふっ、うぅ……!」
唾液が口の端を伝って落ちていく。息がしにくくて、まるで溺れているようですらあった。踠いて踠いて、やっと離されたと息を吸い込めば、放っておかれた胸の突起をいたずらに押し潰されて、目の前に星が散った。なんだか前よりも幾分か気持ちいいような気がする。それが女になったからなのか、はたまた気持ちの問題なのかはわからない。
「っ、あぅ!」
固くなった突起を苛めるように指先で擦られて、思わず身を捩る。そこはもういいから、下を触って欲しい。でもそんなの言えるわけなくて。逃げるように身動ぎをした。
「ミズキ、可愛い」
「あ、うるさかっ……時間ないっちゃろ?」
「それはそうなんだけどさ。でも、せっかくなら気持ち良くなって欲しいだろ?」
それとも欲しくなっちゃった?なんて、熱っぽく耳元で囁かれて、かあっと頬が熱くなる。恥ずかしくてしょうがないけれど、小さく頷けば彼は嬉しそうに目を細めた。
ハーフパンツを膝まで下ろされて、下着越しに指が走る。勃ち上がった陰核をなぞられて、びくびくと身体が勝手に跳ねた。鬼頭を触られているような感覚に近いだろうか。それでも、もっと気持ちいいような気がする。
「は、あぁっ!あぐっ、うぅ……、!」
「気持ち良さそう」
「良い、いいっ……!」
ここの壁は薄いわけではないけれど、外に声が漏れないか心配で思わず口を押さえる。そうでもしないと、声を我慢できそうになかったから。
「声、聞かせて欲しいんだけど」
「そと、聞こえたらやだ」
「もし聞こえても俺がAV見てたって誤魔化すから」
「そう言う問題じゃな、あぁっ!や、あっ……んっ、うぅ」
下着越しに彼の指が優しく陰核を押し潰す。文句を言おうと開いた口からは喘ぎ声がこぼれ落ちていって……。慌てて手を噛むが、彼は不満そうだった。
「噛んだら跡になっちゃうだろー?」
「う゛ぅ、んっ!」
「じゃあさ、俺が塞いでてあげる」
殆ど無理矢理噛んでいた手を捕まえられる。そのまま引き抜かれて、あっと思っていると彼の顔が近付いてきた。出そうになった声は彼の口内に消えていった。音ごと食べられてしまったんだ。
「んんっ、ふ、ぅ……」
彼の指が蜜に濡れた割れ目をなぞる。記憶の中の行為とはまた違った感覚に、ぴくりと身体が反応した。なんと言うか、より敏感になっている気がする。
男の方より女の方が敏感だって聞くけど、本当なんだ。
そのまま下着をずらされて、大事なところを指が這い回る。キスの音に加えて、くちくちといやらしい水音がして、かあっと顔が熱くなった。そんなに濡れる物なのかな。そうじゃないなら恥ずかしいな。逃れるように身を捩るが、体重をかけられたら逃れようなんてなくて。与えられる快感をただ剥き身で受け入れる。
そうしてしとどに濡れたそこにゆっくり指が割り込んできて、驚いて大袈裟なくらい身体を跳ねさせた。
「ん!」
「はぁっ、痛かった?」
「いたくな、いっ、けど……あうっ、変な感じっちゃね」
身体の中を拓かれている感覚。これは後孔に近いものがある。濡れているお陰か痛みはない。ただ気持ちいいだけの行為に、頭が茹だっていく。腰が勝手にかくんかくんと揺れて、まるでもっとしてって強請っているみたいだ。それにすら興奮する始末で。本当にどうしようもない。
「かわいっ」
それだけ呟くと、また口内に舌が侵入してきて、さりさりと舌先を夢中で擦り合わせた。飲みきれない唾液が口の端から落ちていく。
「んっ、ふぁっ……」
これでもかってくらい慎重に中を拡げられて、目の前が生理的な涙でぼやける。気持ちいいけれど、もっと凄い快感を知っている身体は先を求めて止まない。もっと、気持ち良くなりたい。何もかもわからなくなるくらい、彼を感じていたい。
迎え入れた舌を甘く食んで、彼を煽れば何か言いたそうに彼が睨んでくる。
「んっ、ちゅっ……はぁっ」
空いていた手を自然と陰核に伸ばして、自分で刺激してみる。触るのが怖かったけど、彼に優しく触れられてどうするのがイイのか何となくわかった。
こりこりと勃起したそこを、指先で押し潰せば目の前が白く明滅する。気持ちいい。気持ちよくて、自分を苛める手が止まらない。
「ははっ、えろ」
口を離した彼が呟く。誰のせいでこんなになっていると思っているのか。全部全部、あんたのせいなのに。
いつの間にか増やされた指が3本になる頃には、何度も絶頂してまともな思考なんてどっかに行ってしまっていた。もう、恥ずかしいかどうかもよくわからない。早く彼と繋がりたくって、媚びるように腰を揺らす。
「あ、あっ♡」
「ミズキ、すっごい可愛い」
「うーやぁ、もっ、いれてぇ……。おく、あぁっ!とどかないとこ切ないっ」
「名前も呼べなくなっちゃった?」
「あ、ぅ……ウーヤン、いじわるせんで」
「ごめんって、ミズキが可愛くてさ」
ばかばかばか。心の中で罵倒するけれど、早くトドメをさして欲しくて、涙ながらにすり寄れば彼はにんまり笑った。
そうして、バキバキに勃起した陰茎を取り出すと、サイドチェストからローションとゴムを取る。
「こっちの初めても貰っていいの?」
「ウーヤン以外におらんもん、好きにしてよかよ」
「何それ……嬉しいな。でも、夕飯前だからほどほどにしとこうな」
後で抱き潰してやるから、なんて耳元で囁かれて、きゅんと腹の奥が疼いた。
抱き潰してくれるんだ、嬉しい。頭が完全にピンク色になっているからか、最早何を言われても興奮の材料にしかならなかった。
「ウーヤン♡すきばい」
「俺だって、好きなんだからな」
蜜壺に剛直が押し当てられる感覚がする。勝手に腰がゆらゆら揺れて、上手く入らない。焦れて泣きそうになっていると、頬にキスを落とされて雄っぽく彼が笑った。その顔に、思わず見惚れる。
「ミズキ、好きだよ」
「~~~~っ♡」
頭が多幸感に塗り潰されていく。どうしようもないくらい、彼が好きだ。
ゆっくり先端が挿入されていく。息を吐いてそれを受け入れる。ちょっとの痛みと、それを塗り替えるくらいの快感に頭が焼き切れそうだった。
「ナカ、締め付けすごっ」
はくはくと口を開く。息を止めないように必死に酸素を吸い込むが、もはや訳もわからなくなっていた。
「あ、はっ♡はぁっ、ああっ♡」
気持ちいい。苦しくて、焼けてしまいそうで。彼の背中に腕を回すとかりかりと爪を立てる。
すき、すき、すき♡媚びるように腰を揺らして、奥へ奥へと誘いこむ。そうして奥に先端が当たった感覚がして、味わうように子宮口がちゅうちゅう吸い付く。ゴム越しなのが惜しいくらいだ。
「あー、可愛い。女とか男とか関係なく、君が好き」
「おぐっ♡う゛、ぅ……♡うーやん、うーやんっ♡」
ぱんっと腰を打ち付けられて、情けない声が漏れる。最早、外に聞こえるかもしれないなんて気にならなかった。もっと、俺で気持ち良くなって欲しい。きゅうきゅうと剛直を締め付けながら、何度も果てる。
じゅわっと漏らしたような感覚がして、それさえ気持ち良くって、それが潮なのか尿なのかすらわからなかった。
「あ゛ー、あんっ♡きもちよか?」
「うん、すごい良いよっ」
「あはっ♡よかった♡」
俺で気持ち良くなってくれてるのが嬉しくて、唇に触れるだけのキスをした。
やらかした。完全に、これでもかってくらい。結果として一回で済む訳もなく、夕飯を知らせにきたブリギッテにも気付かずに朝までまぐわい続けた。体力はお互いある方なのも災いして、何となく察した彼女らに合意の上だったのか問われた時はカネザカに帰ろうかと思ったくらいだ。
なんなら、お互いに理性なんて飛んでたからゴムをしたのかどうかすら危うい。本当に、どうしようもない。
俺から誘ったとはいえ、嫁に貰う前の身体に中出しとは何事かとウーヤンはアンランにこれでもかと言うくらいぼこぼこにされた。それはごもっともだが、あまりに居たたまれなくて仕方がない。もう、どんな顔で仲間に会えば良いのか。現在、戻らない身体に加えて新たな悩み事を抱えることになってしまった。
本当に終わっている。
すんごいイチャイチャする
不思議なこともあるもんで、世界に性転換ウイルスなんてものが流行り出した。
高熱が出た後、身体が別の性別に作り変わってしまうその病気は、なったら最後戻る方法はない……こともなく、数日で戻る症例もあれば何年もかかって戻ったり、或いは全く戻らなかったりとバラバラで、特効薬もないと来た。
なんでそんなウイルスの話をしたかって?そんなの、なってしまったからに決まっている。
ある日、なんの脈絡もなく熱が出たかと思えば、地獄みたいな苦しみの後、慣れ親しんだ息子は消えてしまった。後に残ったのは微かに膨れた胸と、まっさらな股間だけだった。
馬鹿げた話だ。診断の結果、身体の中身も変わってしまっているとかで、なんと子宮まであるらしい。
本当に終わってる。
少し高くなった声に、少し縮んでしまった背。筋肉量も落ちたように思う。まだマシなのは、胸がないからパッと見は変わらないところだろうか。そこはまぁ、良かったと言っていいだろう。
問題はもっと別のところにあった。
俺には付き合っている奴がいる。男同士でも付き合ってくれている物好きな男の名前はウーヤン。俺よりも年下のこの男は、ありがたいことに過去を何も語れない俺をそのまま受け入れてくれた。俺が病にかかった時からあれこれ世話を焼いてくれた彼は、俺の身体が女になっているとわかるや否や、やれ身体を冷やすなだのといつも以上に気にかけるようになった。
別に悪い気はしないんだ。でも、それと同時に手を出してこなくなった。
早い話が、欲求不満なのである。
「ミズキ、何か考えてる?」
「あ?いや、なんでもなかよ」
とある昼下がり。ブリギッテに教えて貰ったカフェで俺達は向かい合っていた。外は急な雨で、買い出しに出たは良いが雨宿りを余儀なくされたのだ。
カフェの店員が貸してくれたタオルで濡れた髪を拭きながら、マグに手をかけるとコーヒーを啜る。美味しいかとかはわからない。生憎、比べられる程コーヒーを飲んだことがない。それでも、雨で冷えた身体が少し温まったような気がする。
「災難だったな。雨予報なんて出てなかったのに」
彼はそう言うと、同じようにコーヒーを啜った。私服の彼は白いシャツを着ていて、それが雨に濡れて張り付いている。自分も多分同じ。この身体になってからボディラインが出る服をあまり着ないようにしているが、それでも張り付いているのがわかる。一先ず借りたタオルを首から下げて誤魔化しつつ、目の前に出されたチョコレートケーキにフォークを刺した。本当は夕飯前だからダメなのだろうけど、ウーヤンに「内緒な?」なんて微笑まれたら断れなかった。
「うまいなこれ」
「良かった、俺も食べよう」
……なんだろう。こんなの、お手本みたいなデートじゃん。彼の前じゃ経験豊富ぶっているけれど、本音は違う。何もかもが、彼が初めてなのだ。恋人を持つのだって初めてだし、手を繋ぐのも、キスも、それこそセックスだって初めてだった。彼は気付いていないだろうから、全部内緒だけれど。
「うーん……雨、止みそうに無いな」
「頼まれた物は買ってるから、走って帰るか?」
「時間に余裕はあるからさ、もうちょっと待とう。あー……でも服濡れてるし風邪引いたら大変だからな」
「良ければ傘、お貸ししましょうか?1本しかないですけど……それでも良ければどうぞ」
ありがたいことに、店員が傘を手に提案してきた。確かにこのまま待っていても風邪を引いてしまうかもしれない。でも、もう少しだけデートもどきを楽しみたい自分がいて。悩んでいるとウーヤンが傘を手に取って微笑んだ。
「ありがとう。もう少しゆっくりしたら出ようか」
「しょうがないな。少しだけだぞ?」
良かった。もう少しだけ……なんて思ったところで気付く。傘、1本しかないってことは相合傘するってことか?相合傘って、海外にもあるのかな。なんて思いながらコーヒーを啜る。苦い。けれど砂糖とミルクと、それからケーキの甘さで丁度良くなったそれに舌鼓を打つ。なるほど、ケーキと合わせて完成するんだ。
からんからんと鐘の音を立てながら扉を開けて外に出る。雨はまだ止みそうにない。傘を開いて、その狭苦しい空間に二人して入り込む。いくら体格が変わったとはいえ、俺の方がウーヤンよりも背が高い。傘を持とうか声をかけるが、彼は頑なに応じなかった。
ざあざあと音を立てて雨粒が傘にぶつかる。当たり前だけど、彼が近い。心臓の音さえ聞こえてしまいそうで、かあっと顔が熱くなる。
こんなの経験するなんて思っていなかったから……。なんならセックスよりも恥ずかしいかもしれない。
「……なんか喋れよ」
「え?」
「いや、なんでもない」
こんなの、意識しない方が無理だ。触れ合った肩から、彼の温もりがじんわり伝わってくる。ドキドキと胸が高鳴って、煩いくらいだった。
ふわりと彼の匂いが香ってきて、くらくら眩暈がする。もうすぐ家が見えてくる頃だろう。離れないと、誰かに見られでもしたら恥ずかしくて終わる。
傘から出ようとしたら不満そうな彼が更にくっついてきた
「なっ、離せよ」
「濡れちゃうだろ?」
「誰かに見られたらどうすんだ」
「そんなに恥ずかしいことか?」
「日本にはな、相合傘ってのがあんの!ヨーカイのやつらに見られたら絶対からかわれる」
「気にすることないのに」
「俺は気にするの!」
そんなこと言ってたら向こうから傘を持ったキリコがやってきて、俺達を見るなりにやりと笑ったのだった。
そんなこんなで仮拠点に戻ってきたわけだが。頼まれた物をテーブルに置いて、俺達はそれぞれ宛がわれた自室へ向かう。
今すぐにでも独りになりたかった。だって、久しぶりの彼の温もりはあまりに毒だったから。
「じゃ、また後で」
返事をする余裕もなく、ジェスチャーだけで済ますと部屋の扉を開ける。最近まで物置小屋だったらしいその部屋は、微かに湿った埃の香りが漂っていた。
濡れた服を脱いでバスタオルで雑に拭きながら、簡易的なベッドへ寝転ぶ。
こんなことでと自分でも情けなくなるが、生理現象だ。仕方がない。そう思って股間へ手を伸ばしたところで気付く。
どう触れば良いんだ?
正直な話、触るのが怖くて最低限しかそこに触れたことがないのだ。自慰しようにも、勝手がわからない。
ネットで調べたらいいと思うかもしれないが、考えても見てほしい。それを誰かに見られないと言う確証はないのだ。ほら、丁度ハッカーの顔見知りだっていることだし、見られたらと思うとあまりに居たたまれない。
なら、どうしよう。
一頻り考えた後、ひとつの答えに辿り着きゆっくりと身体を起こす。ハーフパンツに足を通して、上に適当に大きめのパーカーを羽織ってチャックを上まで上げると部屋を出た。
目指すはあいつの部屋だ。
道中、幸いにも誰ともすれ違うことなくウーヤンの部屋の前に辿り着くと、ノックをして扉を開ける。
「うぇ?ミズキ?」
「あー、その……さっきぶり」
着替え途中なのか半裸の彼がそこにいた。相変わらず良く引き締まった、若々しい身体つきだと思う。なんなら、輝いて見えるくらいには好ましい。
「って、なんて格好してるんだよ!」
「なんてって、別に普通だろ」
「男の部屋に来るのにそれは無防備すぎ」
「俺も男なんだけど」
「でも、今は身体は女の子だろ」
そんな言い合いをしながら、距離を詰めてすり寄る。何やら慌てている彼をそのままに、首筋に顔を埋めて息を吸い込めば彼の匂いがした。
「ミズキ」
「何」
「その、あんまり近付かれると……勃っちゃうから……」
彼は言いにくそうに口ごもる。なんだ、それなら丁度よか。ふっと微笑んで、どの口が言えたのか、無防備な唇にキスを落とすとベッドに押し倒す。
「いっ」
「なあ、まだ夕飯まで時間あるき……シよ?」
「なっ、ダメだって」
「何で」
「大事にしたい」
「大事にされすぎても、腐っちまう」
俺はあんたに抱かれたいの。いつものトーンで、いつもの丁度を崩さず言えば、彼は目を真ん丸にして暫し放心した後、覚悟を決めたように息を飲んだ。
「痛かったり、嫌だったら言って?」
「ん」
とさりとベッドに押し倒されて、そのまま彼が覆い被さってくる。与えられるキスの雨を受けながら、擽ったさに笑えば彼もへにゃっと笑った。
パーカーのチャックを下ろして、露出した肌に彼の温かい手が触れる。壊れ物にでも触れるみたいに脇腹やら腹を撫でられて、ふるりと身体を震わせる。
「んんっ」
「本当、格好が無防備すぎるだろ」
「手っ取り早かろ?」
「……俺以外にやったら怒るからな」
「あはは、あんただからやっちょるの」
ああ、でも下着はもうちょっと選んでくるべきだった。飾り気のないスポーツブラじゃ、あまりに味気ない。
「触ってい?」
「よかよ」
けど、そんなの彼は気にしていないようだった。
彼の大きな手が、胸を包み込む。大きくもないそれを、感触を楽しむように優しくもみしだかれたかと思えばするする撫でられて、まるでマッサージでもしているようだった。
気持ちいい。いいけど、その、頂点が触ってほしくてむずむずする。
「あ、ぅ……」
足を擦り合わせながら、早く彼が触ってくれるのを待つが、中々欲しい刺激はもたらされない。焦らすように突起の回りをくるくる擽るのみだった。夕飯まで時間がないの、わかっているだろうに。文句を言おうと開いた口に舌が割り込んできて、そのまま絡め取られた。
比較対象がないからわからないけれど、彼とのキスは気持ちがいいから好きだ。舌先で上顎を擽られる度、ぞわぞわと背筋を電流が駆け抜けていく。
「ふっ、うぅ……!」
唾液が口の端を伝って落ちていく。息がしにくくて、まるで溺れているようですらあった。踠いて踠いて、やっと離されたと息を吸い込めば、放っておかれた胸の突起をいたずらに押し潰されて、目の前に星が散った。なんだか前よりも幾分か気持ちいいような気がする。それが女になったからなのか、はたまた気持ちの問題なのかはわからない。
「っ、あぅ!」
固くなった突起を苛めるように指先で擦られて、思わず身を捩る。そこはもういいから、下を触って欲しい。でもそんなの言えるわけなくて。逃げるように身動ぎをした。
「ミズキ、可愛い」
「あ、うるさかっ……時間ないっちゃろ?」
「それはそうなんだけどさ。でも、せっかくなら気持ち良くなって欲しいだろ?」
それとも欲しくなっちゃった?なんて、熱っぽく耳元で囁かれて、かあっと頬が熱くなる。恥ずかしくてしょうがないけれど、小さく頷けば彼は嬉しそうに目を細めた。
ハーフパンツを膝まで下ろされて、下着越しに指が走る。勃ち上がった陰核をなぞられて、びくびくと身体が勝手に跳ねた。鬼頭を触られているような感覚に近いだろうか。それでも、もっと気持ちいいような気がする。
「は、あぁっ!あぐっ、うぅ……、!」
「気持ち良さそう」
「良い、いいっ……!」
ここの壁は薄いわけではないけれど、外に声が漏れないか心配で思わず口を押さえる。そうでもしないと、声を我慢できそうになかったから。
「声、聞かせて欲しいんだけど」
「そと、聞こえたらやだ」
「もし聞こえても俺がAV見てたって誤魔化すから」
「そう言う問題じゃな、あぁっ!や、あっ……んっ、うぅ」
下着越しに彼の指が優しく陰核を押し潰す。文句を言おうと開いた口からは喘ぎ声がこぼれ落ちていって……。慌てて手を噛むが、彼は不満そうだった。
「噛んだら跡になっちゃうだろー?」
「う゛ぅ、んっ!」
「じゃあさ、俺が塞いでてあげる」
殆ど無理矢理噛んでいた手を捕まえられる。そのまま引き抜かれて、あっと思っていると彼の顔が近付いてきた。出そうになった声は彼の口内に消えていった。音ごと食べられてしまったんだ。
「んんっ、ふ、ぅ……」
彼の指が蜜に濡れた割れ目をなぞる。記憶の中の行為とはまた違った感覚に、ぴくりと身体が反応した。なんと言うか、より敏感になっている気がする。
男の方より女の方が敏感だって聞くけど、本当なんだ。
そのまま下着をずらされて、大事なところを指が這い回る。キスの音に加えて、くちくちといやらしい水音がして、かあっと顔が熱くなった。そんなに濡れる物なのかな。そうじゃないなら恥ずかしいな。逃れるように身を捩るが、体重をかけられたら逃れようなんてなくて。与えられる快感をただ剥き身で受け入れる。
そうしてしとどに濡れたそこにゆっくり指が割り込んできて、驚いて大袈裟なくらい身体を跳ねさせた。
「ん!」
「はぁっ、痛かった?」
「いたくな、いっ、けど……あうっ、変な感じっちゃね」
身体の中を拓かれている感覚。これは後孔に近いものがある。濡れているお陰か痛みはない。ただ気持ちいいだけの行為に、頭が茹だっていく。腰が勝手にかくんかくんと揺れて、まるでもっとしてって強請っているみたいだ。それにすら興奮する始末で。本当にどうしようもない。
「かわいっ」
それだけ呟くと、また口内に舌が侵入してきて、さりさりと舌先を夢中で擦り合わせた。飲みきれない唾液が口の端から落ちていく。
「んっ、ふぁっ……」
これでもかってくらい慎重に中を拡げられて、目の前が生理的な涙でぼやける。気持ちいいけれど、もっと凄い快感を知っている身体は先を求めて止まない。もっと、気持ち良くなりたい。何もかもわからなくなるくらい、彼を感じていたい。
迎え入れた舌を甘く食んで、彼を煽れば何か言いたそうに彼が睨んでくる。
「んっ、ちゅっ……はぁっ」
空いていた手を自然と陰核に伸ばして、自分で刺激してみる。触るのが怖かったけど、彼に優しく触れられてどうするのがイイのか何となくわかった。
こりこりと勃起したそこを、指先で押し潰せば目の前が白く明滅する。気持ちいい。気持ちよくて、自分を苛める手が止まらない。
「ははっ、えろ」
口を離した彼が呟く。誰のせいでこんなになっていると思っているのか。全部全部、あんたのせいなのに。
いつの間にか増やされた指が3本になる頃には、何度も絶頂してまともな思考なんてどっかに行ってしまっていた。もう、恥ずかしいかどうかもよくわからない。早く彼と繋がりたくって、媚びるように腰を揺らす。
「あ、あっ♡」
「ミズキ、すっごい可愛い」
「うーやぁ、もっ、いれてぇ……。おく、あぁっ!とどかないとこ切ないっ」
「名前も呼べなくなっちゃった?」
「あ、ぅ……ウーヤン、いじわるせんで」
「ごめんって、ミズキが可愛くてさ」
ばかばかばか。心の中で罵倒するけれど、早くトドメをさして欲しくて、涙ながらにすり寄れば彼はにんまり笑った。
そうして、バキバキに勃起した陰茎を取り出すと、サイドチェストからローションとゴムを取る。
「こっちの初めても貰っていいの?」
「ウーヤン以外におらんもん、好きにしてよかよ」
「何それ……嬉しいな。でも、夕飯前だからほどほどにしとこうな」
後で抱き潰してやるから、なんて耳元で囁かれて、きゅんと腹の奥が疼いた。
抱き潰してくれるんだ、嬉しい。頭が完全にピンク色になっているからか、最早何を言われても興奮の材料にしかならなかった。
「ウーヤン♡すきばい」
「俺だって、好きなんだからな」
蜜壺に剛直が押し当てられる感覚がする。勝手に腰がゆらゆら揺れて、上手く入らない。焦れて泣きそうになっていると、頬にキスを落とされて雄っぽく彼が笑った。その顔に、思わず見惚れる。
「ミズキ、好きだよ」
「~~~~っ♡」
頭が多幸感に塗り潰されていく。どうしようもないくらい、彼が好きだ。
ゆっくり先端が挿入されていく。息を吐いてそれを受け入れる。ちょっとの痛みと、それを塗り替えるくらいの快感に頭が焼き切れそうだった。
「ナカ、締め付けすごっ」
はくはくと口を開く。息を止めないように必死に酸素を吸い込むが、もはや訳もわからなくなっていた。
「あ、はっ♡はぁっ、ああっ♡」
気持ちいい。苦しくて、焼けてしまいそうで。彼の背中に腕を回すとかりかりと爪を立てる。
すき、すき、すき♡媚びるように腰を揺らして、奥へ奥へと誘いこむ。そうして奥に先端が当たった感覚がして、味わうように子宮口がちゅうちゅう吸い付く。ゴム越しなのが惜しいくらいだ。
「あー、可愛い。女とか男とか関係なく、君が好き」
「おぐっ♡う゛、ぅ……♡うーやん、うーやんっ♡」
ぱんっと腰を打ち付けられて、情けない声が漏れる。最早、外に聞こえるかもしれないなんて気にならなかった。もっと、俺で気持ち良くなって欲しい。きゅうきゅうと剛直を締め付けながら、何度も果てる。
じゅわっと漏らしたような感覚がして、それさえ気持ち良くって、それが潮なのか尿なのかすらわからなかった。
「あ゛ー、あんっ♡きもちよか?」
「うん、すごい良いよっ」
「あはっ♡よかった♡」
俺で気持ち良くなってくれてるのが嬉しくて、唇に触れるだけのキスをした。
やらかした。完全に、これでもかってくらい。結果として一回で済む訳もなく、夕飯を知らせにきたブリギッテにも気付かずに朝までまぐわい続けた。体力はお互いある方なのも災いして、何となく察した彼女らに合意の上だったのか問われた時はカネザカに帰ろうかと思ったくらいだ。
なんなら、お互いに理性なんて飛んでたからゴムをしたのかどうかすら危うい。本当に、どうしようもない。
俺から誘ったとはいえ、嫁に貰う前の身体に中出しとは何事かとウーヤンはアンランにこれでもかと言うくらいぼこぼこにされた。それはごもっともだが、あまりに居たたまれなくて仕方がない。もう、どんな顔で仲間に会えば良いのか。現在、戻らない身体に加えて新たな悩み事を抱えることになってしまった。
本当に終わっている。