OW
※現パロ
新スキンに脳を焼かれたから書いた
忘れられない人がいる。
ある時フラッと俺の前現れたその人は、俺の知らない世界を教えてくれた。何が気に入ったのかは分からないが、俺の家に転がり込んできたその人は、やめてくれと言っても部屋で煙草を吸うし、フラッとどこかへ行ったかと思ったら大金を抱えて帰ってきたりと、とにかくどうしようもなくて、更には怪しさ満点だった。歳は多分そう変わらない……ように思う。あやふやなのは、自分のことは一切答えなかったからだ。
なんでそんな明らかにやばそうな人を家に上げていたかって?まあ、断れなかったのだ。とてつもなく顔が好みだったから。
共に過ごした日々を思い返して見る。彼に会ったのは冬。雪が降りしきる中、頭から血を流しながら行き倒れていた。出会い頭からインパクト十分である。この時点で警察に任せていればこんなことにもならなかったろうに、と強く思うが、本人が誰にも言うなと繰り返したのだから仕方がない。
そうして何日か泊めたところ、ぺろっと食われてしまったのだ。……勿論、性的な意味で。
俺は女性が好きだし、男に掘られる趣味なんてない。本当に、彼に会うまではそんなこと遠い世界の話だと思っていた。自分には関係のない話だったはずだ。それがどうだろう。一度酷く抱かれて以来、すっかり癖になってしまったのだった。
思い返せば、はじめては半ば無理矢理だったようにも思う。彼は「自分は成人しているから」と酒を飲んでいて、そのまま顔が可愛いだとかなんだとか甘い声で囁かれて。そうして身体をまさぐられたかと思えば性器を扱かれて、あれよあれよと言う間に裸に剥かれて。拒否出来ればよかったのだろうけど、あの時大学生活でストレスの溜まっていた俺はあろうことかそれを受け入れてしまったのだ。そりゃあもう、真綿で首を絞めるがごとくしつこく下準備をされて、これでもかってくらいひんひん鳴かされた。
何が問題って、その行為が本当に気持ちよかったのだ。多分だけど、相性が良かったのかもしれない。後々ネットで調べれば初めはそんなことないと言うのだから、彼がよっぽど巧かったのだろう。
そうしてずるずる身体の関係が続いて、排泄に使うはずのそこは性器に変えられてしまった。彼に従う内、知らないことをたくさん仕込まれて、未だにそれを持て余している。
もう、何処にいるかもわからない男のことを想う。春、夏、秋、冬。慣れない日本の四季を一巡してもなお、俺はあの人を忘れることが出来ないでいた。
ある時いつもと同じように出掛けていったかと思えば、そのまま男は俺の元に帰ってくることはなかった。一緒に住んだのはほんの1ヶ月半程度なのに、まだこの部屋から引っ越せないでいる時点で未練タラタラ。こんなんじゃいけないと思って伸びてしまった黒い髪を切って吹っ切れようとしたのが秋頃の話だったか。
俺が唯一知っている彼のことと言えば、本名かもわからない名前だけだ。
「ミズキ」
散々呼ばされた名前を呟く。せめて何処かで生きていればそれでいいと初めは思っていたが、時が経つごとにそれは執着へと変わっていった。
どうしても、彼に会いたい。そうして、一発殴りでもしてやらないと、気が済まない。
今の世の中、ネットを使えば大体の情報は出てくる物だ。そうして毎日ネットの海を彷徨って、ふと思う。彼がたまに話す訛りは何処の言葉なんだろうか、と。
それで出身が絞れないかと探してみれば、どうやら九州の福岡辺りの訛りらしいことがわかった。なら行ってみようと、留学している大学の春休みに行ってみることにした。
街の何処かで出会えるような気がして。藁にも縋る思いで。
結果から言おう。何も成果は得られなかった。
3泊4日の旅行は文字通り旅行で終わってしまったのだ。
友人たちに配る土産を手に、別の路線に乗り換えるため駅を出る。遠くに黒塗りの車が止まっている。ふと目を向ければ、丁度中に乗り込もうとしている人間が見えた。
それは彼だった。忘れることの出来ない、その人。
手に持っていた荷物をその場に投げ捨てて、発進しようとしている車に駆け寄る。が、間に合わない。どうして、どうして?頭が真っ白になる。どうしようもなく、ただ道端で立ち尽くしながら彼を乗せた車を見送ることしか出来なかった。
その後、俺は親にも内緒で大学を辞めた。引っ越すことの出来なかった部屋を出て、彼を見掛けた駅周辺を探る。一月も経つ頃には、多少ながら彼のことが分かってきた。
彼の名は河野瑞稀。この地域を仕切るハシモト組の幹部。
まぁ、正直そんな気はした。普通の人間ではないことは分かっていたけれどまさかヤクザの幹部とは思わなかった。
幹部なんて、普通に生きていれば会うことなんてないだろう。そんな人が、なんで俺を気にかけたのか。考えても答えなんて出るわけはなく、だからと言って直接問いただすわけにもいかない。彼はここにはいないのだから。
「会いに行ったって、無理だよなぁ……」
自分には肩書きがない。なんなら、学校を辞めた以上日本に滞在するビザだって危うい。彼に会うだけの理由がないのだ。門前払いなのが目に見えている。
だからって、もう引き返せないとこまで来ていた。
「もっと情報を集めよう」
一目会えればいいなんて甘いことはもう言わない。俺の人生をめちゃくちゃにした責任を取って貰わないといけない。
最近、どうも俺のことを嗅ぎ回っている奴がいるらしい。警察などではなく、何故か一般人らしいのだ。
最近は興味本位で近付いてくる馬鹿が増えたからその類いだとばかり思っていたが、部下から回ってきた写真を見て思わず口角が上がった。そこに写っていたのは一年ほど前に少しの間世話になった留学生だったからだ。
ちょっとの間身を隠さなければいけなくなった時に、丁度そのへんを通りかかっただけのただの一般人。本当は堅気に手を出すのは禁忌だが、顔が好みだったのだ。仕方がない。
あいつが、俺を探している。
正直、辿り着くとは思っていなかったので驚いた。そのまま普通の人生を送れば良かったのに、態々自分から堕ちてきてくれたのだ。
「で、こいつ、どうなった?」
「少々しつこかったので……下の階でお話を聞かせて貰っとります」
部下の一人が顔色を伺うように言う。情報を聞き出すのが得意な奴だ。よりによってあいつに捕まるなんて可哀想に。
「あー、後は俺がやるから」
「……しかし」
「聞こえなかったのか?後は俺がやる」
部下はそれを聞くと、すぐに姿勢を正して返事をした。
書類を置くと、立ち上がって部屋を出る。エレベーターで目的の階に着くと、無機質な扉を開けた。
「おい、生きてるか?」
「ミズキ!」
そこにいる彼は、初めて会った時とは姿が変わっていた。黒かった髪は金髪に染められており、ワックスで貼り付けられている。ケガは無さそうだ。流石に一般人に手を出したらどうケジメをつけさせようか悩んでいたところだから安心しつつ、近付く。
「ミズキ!やっと会えた!」
「おう、1年ぶりか?」
それでも、流石にそのままにはしておけなかったのか手足が縛られている。彼が身動きをする度ぎしぎし椅子が軋んだ。そんな暴れたら跡が残るぞ。そう思いながら縄をなぞる。
「勝手にいなくなったくせに」
「隠れる必要がなくなったからな」
「連れてってくれたらよかったのに」
顔を覗き込めば、彼は少し涙ぐんでいた。そんなに会いたかったのかよと、少し嬉しく思いながら縄を解く。
瞬間、拳が飛んできた。それを受け止めて、ぎちぎちと締め上げる。
「はっ、わかりやす」
「い゛っ、ギブギブ!」
「ヤクザ殴ろうとしたり、本当に面白い奴だなお前」
すぐには離してやらない。駄犬には罰をやらないと。
「俺のことぐちゃぐちゃにしといて逃げたんだ。一発殴らないと気が済まなくって」
「逃げたって、誰が」
「ミズキが!」
一頻り締め上げた後、解放してやる。痛そうに肩を擦る彼を手招きすれば、周りを気にした後おずおずと抱きついてきた。泣いたかと思ったら怒ったり、忙しい奴だ。
「ミズキ、俺ね。大学辞めてきた」
「はぁ!?」
「絶対逃がさないって思って、全部捨ててきたんだ」
「忘れて生きりゃ良かったのに」
「あんなの知って、独りで生きれる訳ない」
正直、そこまですると思っていなかったので驚いた。だって、本人にあまりやる気がないにしろエリートコースなことは間違いなかったから。
それを、全部捨ててきた?
「なんで」
「好きだから」
あまりに真っ直ぐな目。眩しいくらいのそれに、思わず瞬きをする。
堕ちてきてくれたなんて思っていたけれど、輝きはそのままだった。
「……」
「ねえ、褒めて」
「馬鹿だな」
ぎゅっと強く抱き締める。おかしい、こんなつもりじゃなかったのに。もっと恨んでいると思ったのに、この男は。
「どうするつもりだ?」
「責任取ってよ」
「それは、覚悟の上か?」
答えは分かりきっていた。
新スキンに脳を焼かれたから書いた
忘れられない人がいる。
ある時フラッと俺の前現れたその人は、俺の知らない世界を教えてくれた。何が気に入ったのかは分からないが、俺の家に転がり込んできたその人は、やめてくれと言っても部屋で煙草を吸うし、フラッとどこかへ行ったかと思ったら大金を抱えて帰ってきたりと、とにかくどうしようもなくて、更には怪しさ満点だった。歳は多分そう変わらない……ように思う。あやふやなのは、自分のことは一切答えなかったからだ。
なんでそんな明らかにやばそうな人を家に上げていたかって?まあ、断れなかったのだ。とてつもなく顔が好みだったから。
共に過ごした日々を思い返して見る。彼に会ったのは冬。雪が降りしきる中、頭から血を流しながら行き倒れていた。出会い頭からインパクト十分である。この時点で警察に任せていればこんなことにもならなかったろうに、と強く思うが、本人が誰にも言うなと繰り返したのだから仕方がない。
そうして何日か泊めたところ、ぺろっと食われてしまったのだ。……勿論、性的な意味で。
俺は女性が好きだし、男に掘られる趣味なんてない。本当に、彼に会うまではそんなこと遠い世界の話だと思っていた。自分には関係のない話だったはずだ。それがどうだろう。一度酷く抱かれて以来、すっかり癖になってしまったのだった。
思い返せば、はじめては半ば無理矢理だったようにも思う。彼は「自分は成人しているから」と酒を飲んでいて、そのまま顔が可愛いだとかなんだとか甘い声で囁かれて。そうして身体をまさぐられたかと思えば性器を扱かれて、あれよあれよと言う間に裸に剥かれて。拒否出来ればよかったのだろうけど、あの時大学生活でストレスの溜まっていた俺はあろうことかそれを受け入れてしまったのだ。そりゃあもう、真綿で首を絞めるがごとくしつこく下準備をされて、これでもかってくらいひんひん鳴かされた。
何が問題って、その行為が本当に気持ちよかったのだ。多分だけど、相性が良かったのかもしれない。後々ネットで調べれば初めはそんなことないと言うのだから、彼がよっぽど巧かったのだろう。
そうしてずるずる身体の関係が続いて、排泄に使うはずのそこは性器に変えられてしまった。彼に従う内、知らないことをたくさん仕込まれて、未だにそれを持て余している。
もう、何処にいるかもわからない男のことを想う。春、夏、秋、冬。慣れない日本の四季を一巡してもなお、俺はあの人を忘れることが出来ないでいた。
ある時いつもと同じように出掛けていったかと思えば、そのまま男は俺の元に帰ってくることはなかった。一緒に住んだのはほんの1ヶ月半程度なのに、まだこの部屋から引っ越せないでいる時点で未練タラタラ。こんなんじゃいけないと思って伸びてしまった黒い髪を切って吹っ切れようとしたのが秋頃の話だったか。
俺が唯一知っている彼のことと言えば、本名かもわからない名前だけだ。
「ミズキ」
散々呼ばされた名前を呟く。せめて何処かで生きていればそれでいいと初めは思っていたが、時が経つごとにそれは執着へと変わっていった。
どうしても、彼に会いたい。そうして、一発殴りでもしてやらないと、気が済まない。
今の世の中、ネットを使えば大体の情報は出てくる物だ。そうして毎日ネットの海を彷徨って、ふと思う。彼がたまに話す訛りは何処の言葉なんだろうか、と。
それで出身が絞れないかと探してみれば、どうやら九州の福岡辺りの訛りらしいことがわかった。なら行ってみようと、留学している大学の春休みに行ってみることにした。
街の何処かで出会えるような気がして。藁にも縋る思いで。
結果から言おう。何も成果は得られなかった。
3泊4日の旅行は文字通り旅行で終わってしまったのだ。
友人たちに配る土産を手に、別の路線に乗り換えるため駅を出る。遠くに黒塗りの車が止まっている。ふと目を向ければ、丁度中に乗り込もうとしている人間が見えた。
それは彼だった。忘れることの出来ない、その人。
手に持っていた荷物をその場に投げ捨てて、発進しようとしている車に駆け寄る。が、間に合わない。どうして、どうして?頭が真っ白になる。どうしようもなく、ただ道端で立ち尽くしながら彼を乗せた車を見送ることしか出来なかった。
その後、俺は親にも内緒で大学を辞めた。引っ越すことの出来なかった部屋を出て、彼を見掛けた駅周辺を探る。一月も経つ頃には、多少ながら彼のことが分かってきた。
彼の名は河野瑞稀。この地域を仕切るハシモト組の幹部。
まぁ、正直そんな気はした。普通の人間ではないことは分かっていたけれどまさかヤクザの幹部とは思わなかった。
幹部なんて、普通に生きていれば会うことなんてないだろう。そんな人が、なんで俺を気にかけたのか。考えても答えなんて出るわけはなく、だからと言って直接問いただすわけにもいかない。彼はここにはいないのだから。
「会いに行ったって、無理だよなぁ……」
自分には肩書きがない。なんなら、学校を辞めた以上日本に滞在するビザだって危うい。彼に会うだけの理由がないのだ。門前払いなのが目に見えている。
だからって、もう引き返せないとこまで来ていた。
「もっと情報を集めよう」
一目会えればいいなんて甘いことはもう言わない。俺の人生をめちゃくちゃにした責任を取って貰わないといけない。
最近、どうも俺のことを嗅ぎ回っている奴がいるらしい。警察などではなく、何故か一般人らしいのだ。
最近は興味本位で近付いてくる馬鹿が増えたからその類いだとばかり思っていたが、部下から回ってきた写真を見て思わず口角が上がった。そこに写っていたのは一年ほど前に少しの間世話になった留学生だったからだ。
ちょっとの間身を隠さなければいけなくなった時に、丁度そのへんを通りかかっただけのただの一般人。本当は堅気に手を出すのは禁忌だが、顔が好みだったのだ。仕方がない。
あいつが、俺を探している。
正直、辿り着くとは思っていなかったので驚いた。そのまま普通の人生を送れば良かったのに、態々自分から堕ちてきてくれたのだ。
「で、こいつ、どうなった?」
「少々しつこかったので……下の階でお話を聞かせて貰っとります」
部下の一人が顔色を伺うように言う。情報を聞き出すのが得意な奴だ。よりによってあいつに捕まるなんて可哀想に。
「あー、後は俺がやるから」
「……しかし」
「聞こえなかったのか?後は俺がやる」
部下はそれを聞くと、すぐに姿勢を正して返事をした。
書類を置くと、立ち上がって部屋を出る。エレベーターで目的の階に着くと、無機質な扉を開けた。
「おい、生きてるか?」
「ミズキ!」
そこにいる彼は、初めて会った時とは姿が変わっていた。黒かった髪は金髪に染められており、ワックスで貼り付けられている。ケガは無さそうだ。流石に一般人に手を出したらどうケジメをつけさせようか悩んでいたところだから安心しつつ、近付く。
「ミズキ!やっと会えた!」
「おう、1年ぶりか?」
それでも、流石にそのままにはしておけなかったのか手足が縛られている。彼が身動きをする度ぎしぎし椅子が軋んだ。そんな暴れたら跡が残るぞ。そう思いながら縄をなぞる。
「勝手にいなくなったくせに」
「隠れる必要がなくなったからな」
「連れてってくれたらよかったのに」
顔を覗き込めば、彼は少し涙ぐんでいた。そんなに会いたかったのかよと、少し嬉しく思いながら縄を解く。
瞬間、拳が飛んできた。それを受け止めて、ぎちぎちと締め上げる。
「はっ、わかりやす」
「い゛っ、ギブギブ!」
「ヤクザ殴ろうとしたり、本当に面白い奴だなお前」
すぐには離してやらない。駄犬には罰をやらないと。
「俺のことぐちゃぐちゃにしといて逃げたんだ。一発殴らないと気が済まなくって」
「逃げたって、誰が」
「ミズキが!」
一頻り締め上げた後、解放してやる。痛そうに肩を擦る彼を手招きすれば、周りを気にした後おずおずと抱きついてきた。泣いたかと思ったら怒ったり、忙しい奴だ。
「ミズキ、俺ね。大学辞めてきた」
「はぁ!?」
「絶対逃がさないって思って、全部捨ててきたんだ」
「忘れて生きりゃ良かったのに」
「あんなの知って、独りで生きれる訳ない」
正直、そこまですると思っていなかったので驚いた。だって、本人にあまりやる気がないにしろエリートコースなことは間違いなかったから。
それを、全部捨ててきた?
「なんで」
「好きだから」
あまりに真っ直ぐな目。眩しいくらいのそれに、思わず瞬きをする。
堕ちてきてくれたなんて思っていたけれど、輝きはそのままだった。
「……」
「ねえ、褒めて」
「馬鹿だな」
ぎゅっと強く抱き締める。おかしい、こんなつもりじゃなかったのに。もっと恨んでいると思ったのに、この男は。
「どうするつもりだ?」
「責任取ってよ」
「それは、覚悟の上か?」
答えは分かりきっていた。